技術者と科学者が、温度変化を検知できる人工皮膚を開発した。これは、クサリヘビ科のヘビが獲物を感知する器官に似た仕組みを利用している。
この素材を義肢に移植すれば、切断者の温度感覚を回復できる可能性がある。また、応急処置用の包帯に応用すれば、傷口の温度上昇、つまり感染の兆候を医療従事者に知らせることもできる。
この新素材に関する論文は、学術誌Science Roboticsに掲載された。
ペトリ皿の中で人工木材を作製していた際、カリフォルニア工科大学のキアラ・ダライオ氏率いるチームは、実験室で温度変化に電気的応答を示す素材を作り出した。温度感知を担う成分は、植物の細胞壁に存在する長鎖分子のペクチンだと判明した。
「ペクチンは食品業界でゲル化剤として広く使われています。ジャムを作るときに使うものです。入手しやすく、とても安価です」と、工学・応用科学部門の機械工学・応用物理学教授であるダライオ氏は言う。
興味を持ったチームはペクチンに注目し、最終的にペクチンと水からなる薄く透明で柔軟なフィルムを作製した。厚さは最小で20マイクロメートル(人間の髪の毛の直径に相当)にできる。フィルム内のペクチン分子は、カルシウムイオンを含む、弱い結合でつながった二重鎖構造を持つ。温度が上がると結合が崩れ、二重鎖が「ほどけて」、正に帯電したカルシウムイオンが放出される。
研究者らは、遊離カルシウムイオンの濃度上昇、またはイオンの移動度上昇(おそらく両方だと推測している)によって、素材全体の電気抵抗が低下すると考えている。この変化は、フィルムに埋め込まれた電極に接続したマルチメーターで検出できる。

このフィルムは、クサリヘビのピット器官に似た(ただし同一ではない)仕組みで温度を感知する。この器官により、ヘビは放射熱を検知し、暗闇でも温かい獲物を感知できる。ピット器官では、温度が上昇すると感覚神経線維の細胞膜にあるイオンチャネルが広がる。この拡張によってカルシウムイオンが流れ、電気インパルスが生じる。
既存の電子皮膚は、5℃の温度範囲で、10分の1℃未満の温度変化を感知できる。新しい皮膚は、その10分の1の規模の変化を感知でき、45℃の温度範囲にわたって、他の電子皮膚より応答性が2桁高い。
現時点でこの皮膚は、およそ5~50℃(約41~158℉)の温度範囲で、こうした微小な変化を検知できる。これはロボット工学や生物医学分野での応用に役立つ。
次にダライオ氏のチームは、検知可能な温度の上限を90℃(194℉)まで引き上げたいと考えている。これが実現すれば、ペクチンセンサーを、家電製品の温度センサーや、人間とロボットの相互作用を強化するロボット用皮膚など、産業用途に活用できる。そのためには、現在の素材の製造工程を変更する必要がある。現行の工程では水が含まれ、高温で気泡が生じたり蒸発したりしやすいためだ。
共同研究者は、ETHチューリッヒとサレルノ大学の研究者ら。研究資金はスイス国立科学財団が提供した。


