MIT CSAILとハーバード大学ワイス研究所の研究者は、折り紙の技法をソフトロボティクスに取り入れ、構造体に強度と柔軟性を備えた骨格を与えた。この発明の詳細は最近、『米国科学アカデミー紀要』に掲載され、この分野における新たな節目となった。
ソフトロボットとは
安全性、柔軟性、適応性がこれらのロボットの特徴であり、医療や産業分野で幅広く応用されている。ソフトロボットは、静水圧の差を利用して動作する構造体だ。高い圧縮性を持つ柔軟な袋やケースにたとえられる。植物細胞には細胞質と呼ばれる物質があり、この液体と周囲の液体との圧力差を調節することで、植物細胞は形を変えることができる。
同様に、ソフトロボティクスでは、電気モーターで静水圧を生み出し、袋の内部の液体圧力を変えて剛性を調整する。構造体は単独で使うことも、他の構造体と組み合わせて適切に動作する機構を作ることもできる。これまで、ロボットに柔軟性と適応性を持たせることには成功していたが、強度の不足が課題となっていた。

科学に生かす芸術
構造体の骨格に折り紙を取り入れることで、この課題は解決された。17世紀に生まれた折り紙は、収納しやすさと強度を実現するために、特定のパターンで構造体を折りたたむ技法であり、科学界でも広く採用されてきた。望遠鏡や、宇宙船の太陽光パネル展開機構に使われ、大きな成果を上げている。ソフトロボティクスでは、折り紙に着想を得た骨格が必要な強度をもたらし、構造体の動きを制御する。
超能力
各ユニットの外側の覆いは、伸縮の状態を再現する点で筋肉に似ている。それぞれの「筋肉」は元の大きさの10パーセントまで縮み、人間の筋肉の最大6倍の圧力を生み出せる。重さはわずか2.6グラムで、最大3キログラムを持ち上げられる。素材はポリビニルアルコール(PVA)で、1ドル未満、10分で3Dプリントできる。また、この素材は生分解性で、環境にも優しい。
チームの上級メンバーでCSAIL所長のダニエラ・ラス氏は、次のように述べた。「筋肉がこれほど強いことには、とても驚きました。通常のロボットよりも最大動作重量が大きくなるとは予想していましたが、1,000倍に増えるとは思っていませんでした。まるで、ロボットに超能力を与えるようなものです」
活用の広がり
この構造体は骨格の向きによって動作が制限されるため、動作モードは1つだけで、動きのパターンも固定される。それでも、複数のユニットを組み合わせて使うことができる。チームは実用性を確かめるためにさまざまな試験を行い、このロボットで小さな花から重いタイヤまで扱うことに成功した。
これまで、形の異なるさまざまな物体を扱うには人工知能が用いられてきた。ソフトロボットの柔軟な構造はこの問題を解決し、柔らかな表面で人間の手のように動作する。また、システムはロボットの関節を動かすための制御装置を不要にする。オン・オフ機能を持つスイッチのように働き、油圧が駆動力となる。このロボットは、侵襲手術や、肉体労働を支援する外骨格として幅広く活用できる。
人間の姿を映して
人間は常に、ロボットに人間らしさを与えようとしてきた。人間の代わりとなる存在を再現するためか、冷たく感情のない創造物とのつながりを深めるためかもしれない。人工知能は飛躍的に進歩し、人型ロボットのソフィアにはサウジアラビアの市民権が付与された。しかし、その身体的な能力は情報処理能力ほど進歩していない。ソフトロボットはこの点で一歩前進し、人間と機械の隔たりを縮めた。


