究極のテクノロジー時代―書籍からの抜粋

Artificial intelligence (AI) is changing the world.
The share of jobs requiring AI skills has grown 4.5 times since 2013.Image: Pexels
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これは、2020年7月の世界経済フォーラム・ブッククラブの推薦書『Tech for Life: Putting Trust Back in Technology』(ラース・シングガード氏、ジム・ハーゲマン・スナーベ氏著)からの抜粋です。ぜひご参加ください。ブッククラブで一緒に議論しましょう。

今から200年前、第1次産業革命のさなか、イングランド北部には、不満を抱え、声高に訴え、ときに暴力に訴える織物労働者の集団がいました。彼らはラッダイトと呼ばれました。

ラッダイトたちは、自分たちの生計を脅かす機械を攻撃しました。普通選挙権を持たなかった彼らにとって、それは、企業や政府の権力者の注意を引くために有効だと考えた唯一の抗議手段でした。彼らの考えは正しかったのです。ある時点では、ナポレオン戦争でイベリア半島に実際に投入されていた兵士よりも、ラッダイトへの対処にあたるイギリス軍兵士のほうが多くいました。抗議者たちは厳しく処罰されました。銃殺された者、処刑された者、投獄や国外追放となった者もいました。運動は一時的に盛り上がりましたが、すぐに消えていきました。

ラッダイトたちは技術の進歩に盲目的に反対していたわけではありません――現在ではこの言葉はおおむねそういう意味に理解されていますが――ただ、進歩を前に無力だと感じていたのです。機械の破壊は、彼らにとって唯一現実的な行動手段でした。彼らは交渉の場で一定の発言力を得たいと考えていました。歴史家エリック・ホブズボームはこれを「暴動による団体交渉」と表現しました。

イングランド北部のラッダイトたちは特異な存在ではありませんでした。その後まもなく、フランスの仕立て職人たちは、ミシンの発明者バーソロミュー・ティモニエに対して暴力的な抗議を起こしました。

技術の進歩の歴史には、同様の抗議が脚注のように点在しています。近年では、新ラッダイト運動があり、自らを「消費主義と、コンピューター時代のますます奇妙で恐ろしいテクノロジーに対する、指導者のいない受動的抵抗運動」と称しています。

こうした運動の根底にあるのは恐怖です。参加者にとって、その恐怖は現実の経験に根差したものです。しかし、恐怖にまつわる脚注に気を取られ、普遍的な物語を見失ってはなりません。テクノロジーは、人間の生活と営みのあらゆる側面における進歩を動かす原動力です。いったん瓶から出た魔神は戻せません。一度発見されたものを、未発見の状態に戻すことはできないのです。

私たちは、幅広く急速な技術進歩を特徴とする時代に生きています。その中心にあるテクノロジーがソフトウェアです。今や、ほぼすべての企業の背後にはソフトウェアコードがあります。それはテクノロジー成長エンジンの潤滑油です。そして、なんと強力なエンジンでしょう。世界では毎日、2.5クインティリオン(250京)バイトのデータが生成されています。世界のデータの90%は、過去2年間に作られました。データは増え続け、その生成速度もかつてないほど速くなっています。媒体や技術が5,000万人に届くまでの時間も短縮しています。ラジオは38年、テレビは13年、インターネットは4年、Facebookは3.5年、Instagramは6か月、Angry Birdsは35日です。

周囲を見渡してみてください。

人工知能(AI)が世界を変えています。音声認識や顔認識、問題解決、機械学習、自律型ロボットなどを可能にする知能機械の創出によって、私たちにできることは急速に広がっています。とりわけ機械学習では、増大し続ける計算能力を用いて膨大なデータを処理し、人間には見分けられないパターンを見つけることで、可能性の境界を押し広げています。

「人工知能」という言葉は、1955年にダートマス大学のジョン・マッカーシーが研究提案書で初めて用い、「知能機械の研究と設計」を意味するものとして提示しました。機械が環境から学び、自らの知識を蓄え、独自の方法で問題を解決できるようにする構想です。この分野の正式な始まりは、研究提案書のプロジェクトが動き出した1956年とするのが一般的です。

1950年代に人工知能が登場して以来、イノベーターや研究者はAI関連発明を約34万件出願し、科学論文を160万件以上発表してきました。AI関連の特許出願は急速に増えており、特定された発明の半数以上が2013年以降に公表されています。

スタンフォード大学のAIインデックスは、AIの発展の一部を記録しています。その数は驚くほど多く、多岐にわたります。近年、次のような節目がありました。

• 2016年、ImageNetの自動ラベリングの誤り率は、2010年の28%から3%未満に低下しました。

人間の正解率は約5%です。

• 2016年3月、Google DeepMindチームが開発したAlphaGoは、世界最高峰の囲碁棋士の一人である李世乭氏を4勝1敗で破りました。その後、DeepMindはAlphaGo Masterを公開し、ランキング首位の柯潔氏に勝利しました。さらにAlphaGo Zeroは、自ら生成したデータを使い、3日分のデータで旧エンジン(AlphaGo Lee)に100対0で勝ちました。

• 2017年の『Nature』誌の記事では、2,032種類の疾患を含む臨床画像129,450枚のデータセットで学習させたAIシステムについて、専門医資格を持つ皮膚科医と診断性能を比較した結果が紹介されました。研究者らは、このAIシステムが皮膚がんを分類する能力において、皮膚科医に匹敵する水準に達したと報告しました。

• 2017年、MicrosoftとIBMはともに、限定されたSwitchboard領域で「人間と同等」の音声認識に近い性能を達成しました。

• Microsoftの機械翻訳システムは、中国語から英語へのニュース記事翻訳で、人間レベルの品質と正確さを達成しました。このテストには、機械翻訳コンテストで一般に使われるデータセットnewstest2017が用いられました。

• 2018年、Googleは前立腺全摘除術の標本における前立腺がんの判定で、総合正解率70%を達成できる深層学習システムを開発しました。この研究における米国の専門医資格を持つ一般病理医の平均正解率は61%でした。さらに、検証用データセットの全標本を判定した、成績上位の一般病理医10人のうち8人を、深層学習システムは上回る正確さを示しました。

AIをめぐる動きは絶えず進展しています。私たちが執筆していた当時、Microsoftは、アルゴリズムの透明性を研究するイーロン・マスク氏創設の取り組みOpenAIに10億ドルを投資しました。AIスキルを必要とする求人の割合は2013年以降4.5倍に増加し、求人サイトMonster.comでは、機械学習、深層学習、自然言語処理のスキルが、現在最も需要の高い3つとなっています。

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