新たな遺伝子編集技術がもたらす倫理的課題

新たな遺伝子編集技術がもたらす倫理的課題
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今月初め、著名な生物学者らのグループが、 停止 を求め、人間に対する強力な新たな遺伝子編集技術の使用に反対を表明した。CRISPRの略称で知られるこの方法では、特定の形質を狙って遺伝子を精密に編集でき、その変化は将来の世代に受け継がれる可能性がある。

この記事では、この技術がどこから生まれたのか、その可能性、そして提起される課題について見ていく。

外科手術のような精密さ

CRISPRは「クラスター化され、規則的に間隔を置いて配置された短い回文反復配列」を意味する。これは、細菌が有害な感染から身を守るために用いる自然の防御システムの名称である。

細菌は、 バクテリオファージ、すなわちファージと呼ばれる他の微生物に感染される。この仕組みの複雑な詳細は、2010年頃、カリフォルニア大学バークレー校のDoudna博士と、スウェーデンのウメオ大学のCharpentier博士が率いる2つの研究グループによって解明された。

CRISPRシステムは、外来の侵入者に由来する特定のDNAパターンを認識し、侵入者のDNAを切断して断片化することで、その機能を失わせる。細菌が特定のDNAを標的にして切断する仕組みから、科学者たちは他の用途への可能性に気づいた。

2013年、2つの研究グループがこの基本的な仕組みを改変し、任意の位置でヒトのゲノムDNAを切断できる強力なツールにした。一方のグループはマサチューセッツ工科大学のZhang博士が、もう一方はハーバード大学のChurch博士が率いていた。

特定の位置でDNA、あるいは遺伝子を切断する能力は、ゲノム構造を改変するための基本要件である。切断部位の周囲のDNAに変化を加えることで、得られる細胞や生物の生物学的特徴を変えられる。これは、外科医が欠陥のある身体部位を正確に切除し、新しいものや修復したものに置き換えるための外科用レーザーメスに相当する。

遺伝子発見のためのツール

科学者たちは長年、生きた細胞のゲノムを編集するためのこの種のツールを求めてきた。同じ結果を得る技術として、 ジンクフィンガーヌクレアーゼ や TALEN (転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)がある。しかし、CRISPR技術ははるかに簡単に作製、操作できる。そのため、ほとんどの生物学研究室でCRISPR実験を実施できる。

その結果、CRISPR技術は世界中の科学者に急速に採用され、さまざまな試験に用いられてきた。昆虫、植物、魚類、マウス、サル、ヒト由来の細胞など、実験対象となるほとんどの生物のゲノム編集に有効であることが実証されている。

短期間でこれほど幅広い成功を収めたことは、ゲノム編集の新時代が到来したことを示している。生物医学研究の急速な発展が期待され、さまざまな人間の病気に対する新たな治療法につながるだろう。

CRISPR技術は、これまで答えるのが困難、あるいは不可能だった、最も根本的な問いのいくつかに科学者が取り組むための新たなツールとなる。

たとえば、ヒトゲノム全体のDNA配列は何年も前に解読されたが、DNA断片に含まれる情報の大半は、ほとんど分かっていない。現在、CRISPR技術によって、科学者はそうした遺伝子の機能を研究できるようになっている。特定のDNA断片を取り除いたり置き換えたりし、その結果生じる細胞を観察することで、特定のDNA断片とその生物学的機能を結び付けられるようになった。

近年、CRISPR技術を用いて、望ましいゲノム変化を持つ細胞、さらには動物個体全体の作製に成功している。これは、特定のDNA変化と人間の病気との因果関係を理解するなど、さまざまな生物医学研究で非常に価値があることが実証されている。この方法でDNAを研究することは、病気がどのように進行するかを支える仕組みを明らかにし、特定の病気の症状を取り除く新薬の開発に向けた知見ももたらす。

医学へのこれほど大きな影響を踏まえ、多くのバイオテクノロジー企業や製薬会社が、商業製品の開発を目的にCRISPR技術のライセンスを取得している。

たとえば、バイオテクノロジー企業のEditas Medicineは、CRISPR技術を用いて遺伝性疾患の治療法を開発することを明確な目標として、2013年に設立された。

しかし、CRISPR技術の使用から生まれた製品は、FDAの承認を得て市場に投入されるには至っていない。

倫理指針を求める声

CRISPR技術により、科学者は生殖細胞や受精卵、胚を操作して、人間を含む生物全体のゲノム構成を変えられるようになった。こうした遺伝的形質は世代を超えて受け継がれる。これは、嚢胞性線維症、血友病、鎌状赤血球貧血、ダウン症など、さまざまな遺伝性疾患を引き起こす遺伝的欠陥を治療できるという希望をもたらす。

欠陥のある細胞や臓器に修正済みまたは機能する遺伝子を導入して一時的に修復する現在の遺伝子治療とは異なり、CRISPR技術は生殖細胞の欠陥そのものを修正し、欠陥遺伝子を持たない子孫を生み出す可能性を約束する。言い換えれば、遺伝性疾患の根本原因を取り除くことができる。

理論上は、知能の高さ、より望ましい身体的外見、長寿など、人々が有利だと考える遺伝的特徴も、CRISPRを介した生殖細胞の改変によって個人のゲノムに導入できる。

しかし、ヒトゲノム編集がもたらし得るあらゆる副作用について、科学者たちはまだ十分に理解していない。また、こうした試みを規制する明確な法律も存在しない。

そのため、この分野の著名な科学者グループは、 最近、呼びかけを始めた 。生殖細胞の改変を行うための倫理指針を求めているのだ。制御されない実践が、長期的に予測不能で壊滅的な結果をもたらしかねないと懸念されている。

この指針は、社会的、環境的、倫理的影響について科学機関や政府機関の間で幅広く議論されるまで、人間への臨床応用を目的とする生殖細胞のゲノム改変を強く抑制するよう求めている。

慎重に策定され、広く受け入れられた規則のもとで運用されるなら、革新的で刺激的なCRISPR技術が人類の幸福に大いに役立つことは間違いない。

この記事は The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Shouguang Jinは、フロリダ大学の分子遺伝学・微生物学教授。

画像:ミュンヘンの研究所で保管されるヒトの遺伝物質。REUTERS/Michael Dalder。

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