高い家賃。長い通勤時間。人混み、汚染、交通渋滞。都市で暮らす中で、こうした経験をしていませんか?
電動自転車から渋滞課金、仮設小便器から屋外ジムまで、専門家たちは何十年にもわたり、都市の生活の質を高めようと取り組んできた。

Googleを傘下に持つ企業は今、トロントのウォーターフロント地区を選んだ。北米最大級の未開発都市空間の一つであるこの地区で、一からやり直し、ゼロから「スマートシティ」を建設する。
Sidewalk LabsはGoogleの親会社Alphabetの傘下にあり、新たな都市の創設に5,000万ドルを投資する。まず来月、地域の集会所を建設する。
同社は、さまざまなスマート技術を試す実験場となることを目指している。また、言葉だけでなく行動でも示すべく、Googleのカナダ本社を再開発地区に移転することをすでに決めている。
そしてスマートシティに期待されるとおり、デジタルインフラは、同社の表現を借りれば「すべての人に、あらゆる場所でつながる環境」を提供する。

一から始められる機会と技術の進歩が相まって、従来の都市問題に革新的な解決策を見いだせる。
手頃な価格の住宅: 新しいプレハブ工法や建材に柔軟な建物設計を組み合わせれば、住宅や小売店舗スペースのコストを抑えられると期待される。
交通: 自動運転車専用レーン、リアルタイムの駐車場情報やナビゲーション、そして渋滞箇所を避けるようルートを変更するバスの導入が考えられる。
汚染: エネルギー効率の高い建物、工夫を凝らしたリサイクル、環境に優しい車両に適したインフラによって、気候にプラスの影響をもたらす地区を実現できる可能性がある。
しかし、こうした利点があれば都市が自動的に成功するわけではない。ロンドン、パリ、東京など世界で最も人気の高い都市には多くの弱点があるかもしれないが、個性や多様性、無数の風変わりな特徴もあり、それらが街の特色や地域社会の一体感を生み出している。

街の個性を育む
実際、これまで一から建設された都市が、必ずしも期待どおりに大成功を収めたわけではない。
韓国で現在も開発が続くスマートシティ、松島は、十分な数の企業を誘致できていない。住民も同様だ。
かつて技術の先駆けと見なされていたポルトガルのスマートシティ計画は、資金調達の難航に直面している。
また、ブラジルの首都ブラジリア、オーストラリアのアデレード、英国のミルトン・キーンズのように、計画的に建設された町や都市は人口が多い一方で、無機質で活気や個性がないと批判されている。
都市の個性や「魂」は自然に育まれるもので、計画に盛り込むことはできない。Sidewalk Labsはこの課題をよく認識しており、自社の立ち上げ資料でも、優れた地区は上意下達で計画されるものではないと認めている。
「同社は、白人の男性ミレニアル世代に限らない都市サービスを提供できることを示す必要があると思います」と、ニューヨーク大学ラディン交通センターのテクノロジー・プログラム担当副所長、サラ・カウフマン氏は『Wired』誌に語った。
「つまり、高齢者や障害のある人、貧困層など、都市がサービスを提供している一方で、民間企業が対象としていないすべての人々に対応するということです。」
Sidewalkによると、今後数年間、人々や企業、スタートアップ、地域団体に改善案を提案してもらいながら、地域社会の形成に積極的に取り組むという。
それでも、既存の住まいや定着した地域社会より、スマートシティの利便性や革新性、新しさに魅力を感じる人々が集まる可能性が高い。
その結果、多様性や個性を実現することはより難しくなるだろう。


