欧州におけるロボットと男女間賃金格差

A robot engineered by Kuka adjusts a windscreen in a fully automated process on a model of the A-class production line of German car manufacturer Mercedes Benz at the Daimler factory in Rastatt, Germany, February 4, 2019. Picture taken on February 4, 2019. REUTERS/Kai Pfaffenbach - RC18ED249E90
Robotics and automation.Image: REUTERS/Kai Pfaffenbach
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  • ロボット化は多くの産業や職種に恩恵をもたらし得る一方で、男女間の賃金格差を悪化させる可能性もある。

  • 他の層と比べると、中・高技能職の男性はロボット化による恩恵を不均衡に受けている。

  • 3人の経済学者は、将来の雇用に最も関連するスキルを女性と男性が等しく身につけられるよう、政府が取り組みを強化することが極めて重要だと論じている。

自動化の最近の進展と、それが経済や社会に及ぼす影響は、世界の政策論争および学術論争の中心的な課題となっている(Baldwin 2019、Klenert et al. 2020を参照)。自動化が雇用全体および労働力参加に与える影響については包括的な検証が行われてきた一方(例:Grigoli et al. 2020を参照)、自動化がジェンダー平等にどのような影響を及ぼし得るかについての実証研究はほとんど存在しない。

自動化の影響は男性と女性で異なる可能性が高い

Brussevich et al.(2019)は、職務で行われるタスクのコード化可能性を定量化する、ジェンダー別の定型タスク強度(RTI)指数を構築している。著者らは、30か国のサンプル全体で、RTI指数は平均して女性労働者の方が13%高いことを明らかにしている。このジェンダー別RTI格差は、女性労働者が分析的スキルや対人スキル、肉体労働を要するタスクを担う割合が低く、職務の柔軟性の欠如、職場での学習機会の少なさ、反復性の高さを特徴とするタスクを担う割合が高いことによるものである。これは、平均的に見て女性労働者は男性労働者よりも自動化のリスクにさらされやすいことを示唆している。本稿では、特定の種類の自動化、すなわち産業用ロボットの導入(すなわちロボット化)に焦点を当てる。ロボット化は労働市場にジェンダー特有の影響を及ぼす。多くの他形態の自動化とは異なり、ロボットは『力仕事』のスキルを持つ労働者に取って代わるが、こうしたスキルを持つ労働者は男性である可能性が高い(Rendall 2017、Ngai and Petrongolo 2017)。

背景

図1.Aは、産業用ロボットが主に自動車・運輸産業に配備されていることを示している(2014年には労働者1万人あたり約390台)。ただし、プラスチック、化学、金属、さらに食品・飲料の生産においても、より広く利用され始めている。図1.Aからは、産業用ロボットの大多数が製造業の一部である産業で雇用されていることがうかがえる。

分析対象期間中に労働力の男女構成に変化があったかどうかを把握するため、図1.Bでは産業および年別の女性労働者の割合を示している。分析対象の産業のうち、欧州で女性の雇用が最も多い分野は、教育・研究・開発(2014年には当該分野の全職種の68%を女性が占めた)、繊維(63%)、食品・飲料(47%)である。女性は、自動車・運輸、金属、建設、鉱業・採石業において男性よりも就業している割合が低い傾向にもある。全体として、産業内での男女構成の変化は2006年から2014年の間で最小限にとどまった。

図1ロボットと女性の産業別比較

ロボットと女性の産業別比較。Image: Aksoy、Özcan and Philipp(2020)。

図2は、本稿のサンプルに含まれる20か国について、2010年の月間所得中央値における男女間格差を示している。男女間賃金格差の大きさは経済によって異なり、ルーマニアとブルガリアの4%から、ドイツの18%、エストニアの19%までの幅がある。

図22010年の国別月間所得中央値における男女間格差

2010年の国別月間所得中央値における男女間格差。Image: Aksoy、Özcan and Philipp(2020)。

新たな証拠

Aksoy、Özcan and Philipp(2020)において、我々は20の欧州諸国を対象に、2006年から2014年にかけてのロボット導入が男女間賃金格差に与えた影響について、大規模な実証的証拠を初めて提示している。具体的には、調査年間における労働者1人あたりのロボット数の変化(以下「ロボット化」)が、製造業およびロボットを導入しているその他いくつかの産業の労働者の月間所得における男女間格差にどのように影響するかを検証している。

我々の分析では、ロボット化が男女間賃金格差を拡大させることが明らかになった。ロボット化が10%増加すると、(条件付き)男女間賃金格差は1.8%拡大する。1 多くの国や産業でロボット化が10%を超えて進んでいることを踏まえると、この効果は相当大きいといえる。これを比較の観点から見ると、全国最低賃金の導入により、粗の男女間賃金格差は約2%縮小した(英国についてはRobinson 2002、ドイツについてはBoll et al. 2015を参照)。さらに、我々が特定した効果は、欧州諸国における多くの家族支援政策の効果を上回っている。これらの政策が賃金格差の縮小に効果があるかどうかについての証拠は一貫していない(Olivetti and Petrongolo 2017の概説を参照)。

なぜロボット化は男女間賃金格差に影響するのか

我々は、その根底にあるメカニズムを検証し、結果は主に男性の所得の増加が女性の所得の増加を上回ることによって説明される可能性が高いことを明らかにした。特に中・高技能職において(生産性効果を通じて)その傾向が強い。言い換えれば、特定の産業において中・高技能職に女性が過少に配置されている状況が、ロボット化を伴うことで男女間賃金格差を拡大させており、その傾向は特にジェンダー不平等がすでに深刻だった国々で顕著である。反対に、当初のジェンダー不平等が小さかった国々では、ロボット化は男女間賃金格差に統計的に有意な影響を及ぼさず、全労働者の所得を増加させた。また、我々の結果は、労働力の男女構成の変化や、製造業からの流入・流出によっては説明できないことも示しており、これはFreeman et al.(2020)の知見とも一致する。

示唆

政策立案者が労働市場における男女間格差の解消に一層力を注いでいる今、我々の証拠は重要である。我々の結果は、政府が教育および職業訓練制度において将来必要とされる適切なスキルを人々に提供するよう確保するだけでなく、分配上の問題にも注意を払い、女性と男性が将来の雇用可能性に最も関連するスキルを等しく身につけられるよう、取り組みを強化する必要があることを示唆している。

参考文献

Aksoy, C G, B Özcan and J Philipp(2020)、「Robots and the Gender Pay Gap in Europe」、EBRD Working Paper No. 246。

Baldwin, R(2019)、「Sense and Nonsense in the Public Discussion of the Future of Work」、VoxEU.org、11月1日。

Boll, C, H Hüning, J Leppin and J Puckelwald(2015)、「Potential Effects of a Statutory Minimum Wage on the Gender Pay Gap–A Simulation-Based Study for Germany」、Working Paper。

Brussevich, M, M E Dabla-Norris and S Khalid(2019)、「Is Technology Widening the Gender Gap? Automation and the Future of Female Employment」、IMF Working Paper No. 19/91。

Freeman, R B, I Ganguli and M J Handel(2020)、「Within-Occupation Changes Dominate Changes in What Workers Do: A Shift-Share Decomposition, 2005–2015」、AEA Papers and Proceedings、110: 394-99。

Grigoli, F, Z Koczan and P Topalova(2020)、「Automation and Labor Force Participation in Advanced Economies: Macro and Micro Evidence」、European Economic Review、103443。

Klenert, D, E Fernández-Macías and J Antón(2020)、「Don’t Blame It on the Machines: Robots and Employment in Europe」、VoxEU.org、2月24日。

Ngai, L R and B Petrongolo(2017)、「Gender gaps and the rise of the service economy」、American Economic Journal: Macroeconomics、9(4): 1-44。

Olivetti, C and B Petrongolo(2017)、「The economic consequences of family policies: lessons from a century of legislation in high-income countries」、Journal of Economic Perspectives、31(1): 205-30。

Rendall, M(2017)、「Brain versus brawn: the realization of women’s comparative advantage」、University of Zurich, Institute for Empirical Research in Economics, Working Paper 491。

Robinson, H(2002)、「Wrong side of the track? The impact of the minimum wage on gender pay gaps in Britain」、Oxford Bulletin of Economics and Statistics、64(5): 417-448。

注釈

1 本稿では、条件付き男女間賃金格差(GPG)を、同じ職業区分・産業に属し、年齢層が近く、同じ国に居住し、同年に測定され、規模の近い企業で勤務する男性と女性の所得の差として定義している。言い換えれば、条件付き賃金格差とは、男女の所得差を説明しうる一連の構成要因を調整した後の賃金格差である。条件付きGPGは、欧州の『同一賃金』法制に関連しているため、政策の観点からは無条件(全体)の賃金格差よりも重要である。

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