チューリッヒ工科大学の研究者が、デジタル量子システムのエラーを迅速かつ継続的に訂正することに初めて成功した。
これまでの誤り訂正法では越えられなかった、実用的な量子コンピューティングへの道のりにおける重要な難関を克服した。
世界中の大学や企業が、量子コンピューティングの研究開発に取り組んでいる。
量子コンピューターは、将来の情報処理に希望をもたらす存在と見なされている。しかし、従来型コンピューターに取って代わる日が来るのかどうかは不透明だ。量子コンピューターには、エラーが非常に起きやすく、その訂正も極めて難しいという課題がある。
チューリッヒ工科大学の研究者が、重要な難関の克服に成功した。量子システムのエラーを初めて自動的に訂正し、量子演算の結果を実用に活用できる水準にまで高めたのだ。「量子ビット(キュービット)を使う量子コンピューターで、エラーを迅速かつ繰り返し訂正できることを実証したのは、実用的な量子コンピューターの実現に向けた大きな突破口です」と、チューリッヒ工科大学物理学部教授で量子センター所長のアンドレアス・ヴァルラフ氏は述べる。研究者らはこの成果をプレプリントとしてArXiv.orgで公開し、学術誌への掲載に向けて投稿した。
キュービットの高度な配置
従来の誤り訂正法では、量子システムで生じる基本的な2種類のエラーを同時に検出し、訂正することはできなかった。ヴァルラフ氏のチームは今回、両方のエラーを繰り返し検出して訂正できる初のシステムを発表した。この重要な成果は、チューリッヒ工科大学のクリーンルーム研究施設で特別に製造されたチップを用いて実現した。チップには、超伝導キュービットが計17個搭載されている。研究チームは「表面符号」と呼ばれる方法で誤り訂正を行った。これは、キュービットの量子情報を複数の物理キュービットに分散させる手法だ。
チップ上の17個のキュービットのうち9個は、3×3の正方格子状に配置され、論理キュービットと呼ばれる量子コンピューターの計算単位を構成する。残る8個はそれらからずらして配置され、システム内のエラー検出を担う。
論理キュービットに生じた外乱によって情報が歪むと、システムはその外乱をエラーとして認識する。制御電子回路は、それに応じて測定信号を補正する。「現時点では、キュービット内のエラーを直接訂正しているわけではありません」と、ヴァルラフ氏の研究グループの研究者で、ネイサン・ラクロワ氏とともに論文の筆頭著者を務めるセバスティアン・クリンナー氏は認める。「しかし、ほとんどの算術演算では、それさえ必要ありません。」
チップ上のキュービットを制御するために使われる高度に専門化された電子回路は、チューリッヒ工科大学発のスピンオフ企業、Zurich Instrumentsが製造した。チップ自体は大型クライオスタット(特殊な冷却装置)の最下段に置かれ、絶対零度をわずかに上回る0.01ケルビンで動作する。
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競争の激しい研究分野
誤り訂正は現在、量子研究で競争が激しい分野だ。チューリッヒ工科大学やデルフト工科大学などの工科系大学に加え、GoogleやIBMのような大企業も競争相手となっている。「ドイツとカナダの同僚たちとともに、キュービットを使った実用的な誤り訂正を実施した最初の研究チームになりました。誇りに思う成果です」とヴァルラフ氏は語る。「チューリッヒ工科大学が量子研究の最前線にいることを示すものです。」
次の段階として、チューリッヒ工科大学の研究者らは5×5のキュービット格子を備えたチップの製造を目指している。その実現には、より複雑な技術が必要となり、誤り訂正用のキュービットもさらに多く搭載される。


