神経科学者たちは新たな技術やツールを用いてキンカチョウの脳回路を観察し、練習とパフォーマンスへの理解を深めています。
この研究は、練習によって脳が指令の出し方や身体の動かし方をさまざまに試せるようになることを示唆しています。
この研究は、パーキンソン病などの人間の運動障害に影響を与える可能性があります。
プロのアスリートやコンサートピアニストが、ここぞという場面で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、身体の動きを磨き、洗練させるために毎日練習するのと同じように、オスのキンカチョウは起きている時間の大半、さえずりながら求愛の鳴き声に少しずつ変化をつけて試しています。
しかし勝負どころ、具体的には魅力的なメスのキンカチョウが近くに降り立ったときには、本番です。オスは練習で身につけた正確さと速さで歌を披露します。
一度に100個のニューロンを観察できる技術や強力な機械学習分析など、いくつかの新しいツールのおかげで、デューク大学の神経科学者たちは、鳥の練習とパフォーマンスを制御する脳回路を明らかにしました。
要点はこうです。本番のとき、全脊椎動物の複雑な動きを司る前脳の領域である大脳基底核に、神経伝達物質ノルアドレナリンが放出されると、歌のばらつきが抑えられ、理想にできる限り近づきます。この研究結果は10月20日付の『Nature』に掲載されます。
鳥が自分のために歌っているとき、大脳基底核のニューロンは歌にある程度のばらつきを許します。研究者らによると、これは回路の「地図」を作り、歌を生み出す最適な方法を見つけるために不可欠です。
「どう動けばよいかを知るには、まずさまざまな動きを試し、身体を動かすという目標を達成する方法をいろいろ試す必要があります」と、デューク大学で博士論文の研究としてこのプロジェクトを率いたジョナ・シン・アルバラードは話します。「『こう考えたら、自分はどう動こうとしているのか。その動きで身体はどう動くのか』を学ばなければなりません。それをさまざまな形で試す必要があります。」
この課題を何度も行うと、「脳と動きを結びつける一種の辞書ができあがります。指令を出して身体を動かすさまざまな方法を探り尽くしたのです」と、現在ハーバード大学の博士研究員であるアルバラードは話します。「そうすれば、作り上げた対応関係を活用できます。『試し尽くして辞書もできた。そこから適切な言葉を取り出し、メスが聞きたがっているものを踏まえて、自分にできると分かっていることを正確に披露しよう』というわけです。」
歌を良い状態に保つには、たくさん練習することが欠かせないとアルバラードは言います。「絶えず活動させて回路を磨き続けなければ、回路は徐々にずれ、劣化していきます。練習を続け、発声の領域を探り続け、辞書を更新し続けることが、最高のパフォーマンスを保つうえでとても重要です。」
練習の歌と求愛のパフォーマンスの違いは、人間には非常にわずかで、ほとんど見分けられないと、デューク大学医学部の神経生物学ジョージ・バース・ゲラー教授で、アルバラードの論文指導教員でもあるリチャード・ムーニーは話します。しかし、メスのキンカチョウには違いが分かり、速いパフォーマンスを好みます。スピーカーから流れる練習の歌には興味を示しませんが、本番の素早く正確な歌には、甘い音色の出どころを確かめに行きます。
「鳴禽類のおかげで、この問題はより単純になりました」とアルバラードは話します。鳥の大脳基底核にある、歌に特化した専用回路では、ニューロンはそれぞれ一つの役割だけを担っています。
しかし、比較的単純なこの脳でさえ、研究チームにとっては非常に大きな計算上の課題でした。
「ほかの動物で本当に難しかったことの一つは、自分が生み出しているばらつきと、生み出したいばらつきとのつながりを突き止めることでした」と、ニューロンの統計解析を率いたデューク大学の生物統計学・バイオインフォマティクス助教、ジョン・ピアソンは話します。「これほど大規模な細胞集団を実際に得られたのは初めてで、発声パフォーマンスのばらつきと神経活動のばらつきを結びつける研究に着手できます。」
ギタリストのジミ・ヘンドリックスの大ファンだというムーニーは、ヘンドリックスが自宅の居間で録音した気取らない4トラックのテープに、こうしたリハーサルが収められているのを聞いたことがあると言います。「あちこちに展開していくんです。ひとつの曲の核はあるけれど、そこから形を変えていく。フリージャズか何かのようです。ひとりでいるとき、彼は探求するのが本当に、本当にうまかったのだと思います。」
この種の運動リハーサルは、練習しているあらゆる技能に当てはまるとアルバラードは話します。「ただ、危機的状況で実行しなければならない瞬間があります。捕食者から逃げたり獲物を捕らえたりすることもあれば、求愛の場合もあります。披露する時が来たら、相手が聞いていると分かっている方法で、非常に具体的にやらなければなりません。」
何十年も鳥の歌を研究してきたムーニーは、この研究にはUCバークレー校やオレゴン大学の同僚を含め、さまざまな科学分野の専門知識が生かされたと話します。「すべての部分を解き明かすには、多くの人の力が必要でした。大きく、とても複雑な研究です。」
しかし、この研究は重要です。鳥の大脳基底核について得られた知見は、パーキンソン病やハンチントン病、トゥレット症候群など、人間の運動障害に直接関係するからだとムーニーは話します。
「パーキンソン病では、運動のばらつきが正常に機能せず、完全に調節を失います。これは、同じ大脳基底核回路が変性するためです」とアルバラードは話します。「大脳基底核のニューロンが正常にどう機能し、その活動がどのように変化し、別の動きのパターンを生むように再配線されるのかを理解することは、将来こうした問題をどう解決するかを知るうえで極めて重要です」と彼は述べています。
この研究は、米国国立衛生研究所(R01NS118424およびR01NS099288)の支援を受けました。
引用:「鳥の歌の練習とパフォーマンスを支える神経ダイナミクス」、Jonnathan Singh Alvarado、Jack Goffinet、Valerie Michael、William Liberti III、Jordan Hatfield、Timothy Gardner、John Pearson、Richard Mooney。『Nature』、2021年10月20日。DOI:10.1038/s41586-021-04004-1


