NASAは小惑星に探査機を衝突させ、その軌道を変える計画だ。
これは、二重小惑星方向転換試験(DART)と名付けられた、世界初の本格的な惑星防衛ミッションとなる。
小惑星が地球に衝突すれば、都市全体を破壊し、甚大な被害や大量絶滅を引き起こす可能性がある。
DARTミッションのような実験は、人類がそのような事態に備える助けとなるかもしれない。
2022年9月26日、NASAは小惑星の軌道を変える計画だ。
大型の連星小惑星ディディモスとその小衛星ディモルフォスは、現在、地球に脅威を及ぼしていない。しかし、重さ1,340ポンド(610キログラム)の探査機を約14,000 mph(22,500 kph)の速度でディディモスの衛星に衝突させることで、NASAは概念実証として世界初の本格的な惑星防衛ミッションを実施する。このミッションは二重小惑星方向転換試験、略してDARTと呼ばれる。
私は、宇宙と国際安全保障を研究する研究者であり、天体が地球に衝突する可能性は実際どれほどなのか、また、各国政府はそのような事態を防ぐために十分な資金を投じているのかを問うことが仕事だ。
こうした疑問への答えを見つけるには、地球近傍天体がどこにあるかを把握する必要がある。これまでにNASAが追跡したのは、大型のものの推定40%にすぎない。過去にも予期せぬ小惑星が地球に接近しており、今後も間違いなくそうしたことが起こるだろう。DARTミッションのような実験は、人類がそのような事態に備える助けとなるかもしれない。
小惑星と彗星がもたらす脅威
小惑星や彗星など、何百万もの宇宙天体が太陽を周回し、しばしば地球に衝突する。その大半は脅威となるには小さすぎるが、中には懸念すべきものもある。地球近傍天体には、その軌道によって太陽から1億2,000万マイル以内(1億9,300万キロメートル以内)に接近する小惑星や彗星が含まれる。
天文学者は、地球近傍天体が地球から460万マイル以内(740万キロメートル以内)に接近し、直径が少なくとも460フィート(140メートル)ある場合、脅威とみなす。この大きさの天体が地球に衝突すれば、都市全体を破壊し、地域に甚大な被害をもたらす可能性がある。さらに大きく、直径0.6マイル(1キロメートル)以上の天体は、地球規模の影響を及ぼし、大量絶滅を引き起こすことさえあり得る。
最も有名で破壊的な天体衝突は6,500万年前に起きた。直径6マイル(10キロメートル)の小惑星が現在のユカタン半島に衝突した。それは地球上の動植物の大半を絶滅させた。恐竜もその中に含まれる。
小さな天体も大きな被害をもたらすことがある。1908年、直径約164フィート(50メートル)の天体が、シベリアのポドカメンナヤ・ツングースカ川上空で爆発した。それはなぎ倒した範囲が830平方マイル(2,100平方キロメートル)に及び、8,000万本を超える木々が倒れた。2013年には、直径わずか65フィート(20メートル)の小惑星が、ロシアのチェリャビンスク上空20マイル(32キロメートル)で大気圏内爆発した。広島型原爆30発分に相当するエネルギーを放出し、1,100人以上が負傷し、3,300万米ドルの損害をもたらした。
次に地球に衝突する可能性のある、かなり大きな小惑星は2005 ED224だと考えられている。直径164フィート(50メートル)のこの小惑星が2023年3月11日に地球のそばを通過する際、衝突する確率はおよそ50万分の1だ。
宇宙を監視する
より大きな宇宙天体が地球に衝突する可能性は低いものの、被害は甚大なものとなる。
米議会はこの脅威を認識し、1998年のスペースガード調査で、直径0.6マイル(1キロメートル)以上の地球近傍天体について、推定総数の90%を10年以内に発見して追跡するようNASAに指示した。NASAは2011年に90%の目標を達成した。
2005年には、米議会が別の法案を可決し、2020年末までに直径460フィート(140メートル)以上の地球近傍天体をすべて調査し、その少なくとも90%を追跡するようNASAに求めた。その期限は過ぎたが、主な原因である資金不足により、マッピングが済んだ天体はそのうち40%にすぎない。
2022年9月18日時点で、天文学者は29,724個の地球近傍小惑星を発見している。そのうち、直径460フィート(140メートル)以上は10,189個、幅が少なくとも0.6マイル(1キロメートル)のものは855個だ。毎週およそ30個の新たな天体が加わっている。
新たなミッションが2018年に米議会の資金提供を受け、2026年に赤外線宇宙望遠鏡「NEOサーベイヤー」を打ち上げる予定だ。この望遠鏡は、潜在的に危険な小惑星の探索に特化している。
宇宙からの不意打ち
災害を防ぐには、起こると事前に把握することが欠かせない。小惑星はこれまでも、気づかぬうちに地球に接近してきた。
「都市を破壊する」とも呼ばれる、サッカー場ほどの大きさの小惑星が、2019年に地球から45,000マイル未満(72,420キロメートル)の距離を通過した。ボーイング747型機ほどの大きさの小惑星も、2021年に地球に接近した。2012年には、幅0.6マイル(1キロメートル)の小惑星も接近した。いずれも地球通過のわずか1日ほど前に発見された。
研究によると、地球の自転によって観測の死角が生じ、一部の小惑星が検出されなかったり、静止しているように見えたりする。これは問題となり得る。予期せぬ小惑星の中には、地球をかすめて通り過ぎないものもあるからだ。2008年、天文学者は小惑星を1つ発見したが、それはスーダンの地方部に衝突するわずか19時間前だった。
最近発見された直径1.2マイル(2キロメートル)の小惑星は、まだ大きな天体が潜んでいることを示唆している。
何ができるのか?
宇宙の危険から地球を守るには、早期発見が鍵となる。2021年の惑星防衛会議で、科学者たちは危険な小惑星から防衛を成功させるため、少なくとも5~10年の準備期間が必要だと提言した。
天文学者が危険な天体を発見した場合、災害を軽減する方法は4つある。第一は、地域ごとの応急対応と避難措置だ。第二の方法では、小型または中型の小惑星の近くを宇宙機に飛行させる。宇宙機の重力によって、天体の軌道をゆっくりと変える。より大きな小惑星の進路を変えるには、物体を高速で衝突させるか、近くで核弾頭を爆発させる方法がある。
DARTミッションは、大型小惑星の軌道をそらす初の試みとなる。しかし、人類が小惑星に何かを送り込むのは初めてではない。NASAのディープ・スペース・インパクト計画では、彗星の科学的測定を行うため、2005年に探査機を9P/テンペル彗星に衝突させた。また2018年には、日本のはやぶさ2ミッションが小惑星リュウグウから試料を採取し、地球に持ち帰ったが、いずれも惑星防衛の実験として設計されたものではなかった。
DARTミッションからは、多くの有用な情報が得られるはずだ。データの一部は、DART宇宙機に搭載されたカメラから得られる。このカメラは、衝突の瞬間まで画像を地球に送信する。さらに、DARTから2022年9月11日に分離された、LICIACubeという小型衛星が衝突の写真を撮影する。欧州宇宙機関の後続ミッション「ヘラ」は、2024年に打ち上げられ、ディディモスに到着する2026年にデータ収集を開始する予定だ。
惑星防衛への支出
2021年、NASAの惑星防衛予算は1億5,800万ドルで、NASAの0.7%にあたる総予算のわずかな割合であり、約7,000億ドルの米国防衛予算の0.02%にすぎなかった。
潜在的に危険な小惑星のうち、60%が未発見のままであることを踏まえると、空の監視への投資額として適切なのだろうか。起こり得る結果を考えれば、これは問うべき重要な問題だ。
惑星防衛への投資は、住宅保険に入ることに似ている。家を破壊するような事態に遭う可能性は低いが、それでも人々は保険に加入する。
直径460フィート(140メートル)を超える天体が1つでも地球に衝突すれば、被害は甚大となり、多くの命が失われる。さらに大きな衝突なら、文字どおり地球上のほとんどの種を絶滅させる可能性がある。今後100年間にそのような天体が地球に衝突すると予想されていなくても、その可能性はゼロではない。発生確率は低くても結果が深刻なこのシナリオでは、危険な宇宙天体から地球を守るための投資が、人類に安心をもたらし、大惨事を防ぐことにつながるかもしれない。




