モバイルマネーはバングラデシュの金融包摂を促進しているのか?

モバイルマネーはバングラデシュの金融包摂を促進しているのか?
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**このブログは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とGSMAが制作する、世界のOTC(店頭取引)に関する連載の第3回です。最初の概要記事は こちら から、GSMAのウェブサイトに掲載された本ブログは こちらからお読みいただけます。

ほんの数年の間に、 bKash はバングラデシュの金融情勢に大きな影響を与えてきました。Intermediaの金融包摂インサイト(FII)の 需要側データ によると、バングラデシュの成人[1]の20%以上が少なくとも一度はbKashを利用し、成人の5%がbKashのモバイルマネー口座を登録しています。しかし、登録口座を持つ顧客の割合は増加しているように見える一方で、データは、全利用者の大半が依然として店頭(OTC)取引を通じてサービスを利用していることを示しています。

バングラデシュにおける非公式なOTC利用は広く論じられている問題ですが、定量化は容易ではありません。特に、利用状況を示す3つの主要指標、すなわち総利用者数、登録利用者数、OTC取引の活動について、異なるデータソースの数値を照合するのは難しい場合があります。たとえば、2014年8月末時点で、bKash独自の(供給側)数値によると、同社のシステムには1,340万件の登録口座がありました。[2]一方、同じ期間のFII(需要側)調査では、成人の5%が登録口座を持つという結果であり、これを換算すると、登録済みのユニーク利用者は約510万人にすぎません。供給側と需要側のデータを比べたとき、なぜ800万人の差が生じるのでしょうか。バングラデシュのモバイルマネー市場で何が起きているのかを正しく理解するには、こうした差が、登録やOTC利用などの重要な市場動向にとって何を意味するのかを理解する必要があります。

需要側データ(この場合、全国を代表する標本を構成する個人を対象に実施した定量調査によるデータ)と供給側データ(この場合、モバイルマネー事業者の記録システムによるデータ)を比較する際に、おそらく最も重要な留意点は、需要側のFII数値が個人のユニーク利用者数の合計に基づく一方、bKashの供給側数値は登録口座数の合計に基づいていることです。最も基本的なところでは、需要側と供給側のデータが大きく異なって見えながら、どちらも技術的には「誤り」ではないのはこのためです。

数値を見てみましょう。以下は、2014年FIIデータと、2014年8月末時点のbKashの数値を並べて比較したものです。

FII調査の数値 (需要側) bKashの数値 (供給側) bKashの登録:ユニーク利用者510万人/口座1,340万件 90日以内に利用したbKashユーザー:ユニーク利用者410万人/口座520万件 30日以内に利用したbKashユーザー:ユニーク利用者350万人/口座440万件 推定bKash OTC利用者[*]:ユニーク利用者1,970万人/確認できず

[*] 推定bKash OTC利用者:bKashを一度でも利用したと回答したユニーク個人の総数から、bKash登録利用者であると回答した個人の数を差し引いたもの。

FII調査に伴う誤差幅は1.27%です。90日以内および30日以内のアクティブ利用者については、需要側と供給側の数値は、次の2つの要因で説明できる可能性のある差を考慮すれば、概ね一致しているようです。

  1. 代理店は、顧客に代わってOTC取引を行うために、複数の口座を開設することがあります。事業者がこうした行為を検知し、最小限に抑えるのは困難です。

  2. 私たちの多くが銀行口座を複数持っているのと同じように、モバイルマネー口座を複数持ち、それぞれを実際に利用している人もいます。

では、登録利用者の総数に大きな差があることをどう説明できるでしょうか。最も可能性の高い答えは、bKashが登録利用者の総数として計上している中に、休眠口座がかなりの数含まれているということです。休眠口座の多くは、次のような理由によると考えられます。

  1. 代理店への登録奨励策を通じて、利用者が登録されたものの、口座を定期的に利用することはなく、その結果、需要側調査で登録口座を持っていると回答しなかった可能性があります。

  2. 複数の口座を登録したものの、すべての口座を積極的に利用しているわけではない人々です。1つの口座しか利用していない登録利用者であっても、SIMカードの頻繁な入れ替えなどの要因により、複数の口座を登録している場合があります。バングラデシュのある携帯電話事業者は、2か月間でSIMカードの入れ替え率が25%に達したと報告しています。これは、平均すると各顧客が8か月ごとにSIMカードを交換していることになります。そのため、8か月ごとに新しいbKash口座を開設することがあっても不思議ではありません。 また、 実際にはアクティブな利用者であっても、bKashからはアクティブ利用者とみなされない可能性があります。

ある程度の休眠口座につながると考えられる同じ登録の仕組みによって、bKashは、自社システム内の口座数に紐づくユニーク個人が正確に何人いるのかを算出することも困難になっています。モバイルマネーの本人確認(KYC)には身分証明書が必要ですが、事業者は現在、政府の国民IDデータベースにアクセスできません。さらに、SIMカードは有効な本人確認なしに販売されることも少なくありません。そのため、事業者側で重複口座を正確に特定するのは非常に困難です。bKash自身が主要顧客基盤とみなす数は、現在のシステムに登録されている口座の総数ではなく、90日以内のアクティブ利用者数に近いものであることは間違いないでしょう。

供給側と需要側の数値の不一致を解消することは、市場の実態をより正確に把握するうえで重要です。こうした明確化は、中央銀行による監督、消費者保護策、そして顧客離れやARPUへの対応に関するモバイルマネー事業者の戦略に役立ちます。他の市場でも、需要側と供給側のデータに同様の不一致がある可能性は高いでしょう。しかし、IntermediaのFII調査と、主要事業者であるbKashから得られたデータを組み合わせたことで、バングラデシュではこの現象をより詳しく観察できました。

こうしたデータの不一致があるとしても、bKashが所得層を問わず何百万人ものバングラデシュ人に金融サービスを届け、大きな成功を収めてきたことに疑いの余地はありません。bKashブランドが至るところで見られること、そして顧客がサービスの利用から得られる価値を語っていることは、その影響を明確に示しています。このデータ分析は、モバイルマネー市場の規模と構成をよりよく理解するためのものであり、OTC利用者のより多くを、アクティブな登録口座の利用へ移行させる方法を示唆する可能性があります。

[1] バングラデシュの成人人口は1億1,300万人です。その21.9%に当たる成人2,470万人が、少なくとも一度はbKashを利用しています。

[2] これらの数値により、同じ期間の数値を並べて比較できます。現在、bKashは1,700万件を超える口座を登録しています。

[3] 推定bKash OTC利用者:bKashを一度でも利用したと回答したユニーク個人の総数から、bKash登録利用者であると回答した個人の数を差し引いたもの。

本記事は、 ビル&メリンダ・ゲイツ財団 との協力のもとで公開されています。本記事の公開は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Lynn Eisenhartは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の貧困層向け金融サービスチームの上級プログラムオフィサーです。Nat Kretchunは、InterMediaの金融包摂インサイト・プログラムにおけるアジア調査責任者のアソシエイト・ディレクターです。

画像:聖なる断食月ラマダンに需要が高まる礼拝用帽子を、ダッカ旧市街の工場で縫製する労働者。ロイター/Andrew Biraj。

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