一般に、消費者向け技術は、社会を大きく変えるほどのものであっても、エネルギー技術やインフラ技術よりはるかに速いペースで開発・実用化されるようだ。
なぜだろうか。優れた革新的なアイデアが不足しているからではない。インフラ分野もエネルギー分野も、新たな技術やイノベーションが次々と生まれ、実用化に向けて適切な機会を求めている。また、意欲が足りないからでもない。政府、政策立案者、公益団体、投資家、そして一般の人々は皆、費用対効果が高く、持続可能な新しいインフラ技術やエネルギー技術を求めている。
多くの場合、問題は資金や融資の不足にある。消費者向け技術分野では、消費者が製品を直接購入するため、実用化への道筋が明確であり、市場には次の大きなヒットを探す投資家があふれている。
しかし、インフラ技術分野はそうではない。こうした市場に投資する投資家は少ない。さらに、多くのインフラ運営者が今も公営であるため、新たなアイデアやイノベーションを育てる際のリスクやコストを負担できるだけの十分な資本を持つ企業投資家はごくわずかだ。
では、その責任は誰にあるのだろうか。
私たちの白書「持続可能なエネルギー・イノベーションの加速」では、世界経済フォーラムとの協力のもと、特に開発初期段階において、新たなアイデアやイノベーションを促進・支援し、民間資金とのマッチングを行ううえで、公共部門がより積極的な役割を果たすべきだと論じている。
同じことは、あらゆるインフラにも当てはまる。今日のインフラが直面する問題への対処を、イーロン・マスクのような篤志家の起業家一人か二人に任せ、ただ待つわけにはいかない。インフラ全体にわたって新たなアプローチと技術が必要だ。それによって最終的に国連の持続可能な開発目標をすべて達成し、地球上のすべての人々の生活の質を向上させる必要がある。しかし、それを実現するために必要な技術に投資する投資家や著名な起業家はほとんどいない。
明るい兆しとして、多くの国はすでに、新技術への投資を促すため、インフラ政策やエネルギー政策を適応させている。たとえばカナダのオンタリオ州では、運輸省が地域の大学やカレッジとともに、高速道路インフラ・イノベーション資金助成プログラムを創設した。英国や欧州各地のさまざまな固定価格買取制度は、再生可能エネルギーや分散型技術のイノベーションへの継続的な投資を促すことも目的としている。複数の政府が官民連携を活用し、民間資本と協力するとともに、共同投資の仕組みを通じてイノベーションを促進している。
しかし、政府にはインフラ技術への投資を促進するため、さらにできることがあると私たちは考える。その第一歩は、大胆な行動、共通のロードマップ、そして他国の政府や民間部門と協力する意志だ。それにより、イノベーション開発における相乗効果を生み、イノベーションのプロセスを加速できる。
世界経済フォーラムの白書では、官民双方の資金源を組み合わせてエネルギー技術プロジェクトに資金を提供する国際基金の設立など、実施可能なさまざまな施策を提案している。公的な研究開発資金とベンチャーキャピタル基金が自動的に共同投資する金融商品を開発することも提案している。また、官民連携を通じたエネルギー技術ロードマップに関する国際協力を提唱する。同様の手段の多くは、より広範なインフラ技術分野への投資促進にも活用できると考える。
ただし、私たちの提言が共通して認識しているのは、新たなインフラ・イノベーションを実用化まで導く責任は、一つの政府、一つの国、あるいは一社だけで担うには重すぎることが多いという点だ。
もちろん、各国政府による支援的な政策や法律、資金調達の仕組みが必要だ。また、民間部門の参加も欠かせない。初期段階のアイデアや企業に投資する人々に加え、市場でコンセプトを試し、実用化する意欲のある戦略的パートナーも必要となる。
何よりも必要なのは、共同の行動だ。テクノロジー系スタートアップ、金融投資家、業界関係者のつながりを築くため、私たちは一層努力しなければならない。影響力のある実施機関を通じて、国際協力をさらに促す必要がある。大胆な精神と革新的なアプローチを持たなければならない。
次の大きなインフラ技術が実用化されるまで、さらに40年も待つことはできない。未来への投資を今始める必要がある。


