新居を探しているあなたは、家を見学しています。上下を見回し、家の隅々まで調べて寸法を確認し、手持ちのキャビネットが隅に収まるかどうかを見極めます。家はカリフォルニアにありますが、あなたは今ニューヨークにいて……スマートフォンを見ています。
かつてなら、現地を確かめるために大陸を横断して出かける前に、オンラインで家の静止した2次元写真を見ていたでしょう。これに対し、仮想現実では、実在する場所も芸術的に創作された場所も、立体視の3Dで眺められる可能性があります。仮想現実なら、インターネットに接続できる場所ならどこからでも、その家の実際の映像を3Dで見ることができます。
仮想現実(VR)について詳しく知らない方は、 Joerg Kaufmannのブログ記事 を読めば、より詳しい説明が得られます。簡単に言えば、何らかの眼鏡やゴーグルを装着し、周囲の「現実」世界を視覚的に遮って、3D映像や画像に置き換える仕組みです。頭を動かせるので、実際に上を向けば仮想空間の天井が見え、下を向けば仮想空間の床が見えます。音声を加えることもでき、モーショントラッキングや何らかのコントローラーを使えば、歩き回ったり物を拾って操作したりするなど、仮想環境とやり取りすることも可能です。
Googleは先日開催されたI/Oカンファレンスで、 Jumpと名付けた新しいカメラリグを発表しました。これは、住宅探しのシナリオを現実のものにする助けとなるかもしれません。Jumpリグは円形に配置された16台のカメラで構成され、仮想現実の制作に使える立体視3Dの動画や画像を撮影できます。カメラは重なり合う映像を撮影し、それらをつなぎ合わせて3D動画にするためにGoogleの計算能力が使われます。この動画はまもなくYouTubeで再生できるようになります。
VRは、ビデオゲームや、それに類する芸術的に創作された環境と結び付けて考えられることが多いものの、Jumpのような仕組みを使えば、現実世界の実際の画像や動画でVRを構成できます。そこから、VRの興味深い活用法がいくつも思い浮かびます。
カンファレンスでGoogleは、教室向けのVR校外学習「Expeditions」を紹介する動画を披露しました。これはGoogleの安価なVR端末、 Google Cardboardを利用します。Cardboard端末は文字どおり、レンズを2枚ほど備えた段ボール箱で、スマートフォンを差し込むと3DのVR映像を見られます。Expeditionsは、費用などの理由で通常なら訪問できない遠隔地へ生徒を連れて行くことを目指しています。理科の授業でサンゴ礁を学んでいるなら、Jumpで撮影できる実際のサンゴ礁を、Expeditionsを使って臨場感のある3D映像で見せることができます。
同様に、こうした概念や技術は、マーケティング、組織内の教育・研修、エンターテインメント、旅行など、ほかの分野にも応用できます。
不動産の例と同じように、VRで車に乗り込み、実際に運転することを想像してみてください。州外の大学を訪れたり、実在するテーマパークを見学して乗り物をいくつか試したり、店の通路を歩いて購入前に実際の商品を3Dで見たりできます。購入前に商品を仮想空間で立体的かつ写真のようにリアルな形で操作できるなら、単純な2D写真やテキストの商品説明は時代遅れに思えるかもしれません。SAPの SAPPHIRE NOWのような対面式のカンファレンスや見本市に参加したいと思いながら、日程の都合で出張できなかったことはありませんか?将来、Jumpのようなカメラリグを会場に設置し、技術がリアルタイム(あるいは少なくともほぼリアルタイム)で映像を配信できるようになれば、VRによって人々が臨場感のある形でライブカンファレンスに仮想参加できるかもしれません。参加者は、会場に実際にいるほかの参加者とともに、遠く離れたコンベンションセンターを歩き回っているように感じ、出展者のブースを訪れて3Dで見たり、ビデオチャットでブース担当者やほかの参加者とやり取りしたりできるでしょう。会議やイベントのあり方は、大きく変わるかもしれません。
仕事の一環としてeラーニングを受講したことはありますか?研修や教育のレッスンを録画し、世界中の従業員や「受講者」が好きなときに視聴できるよう公開するのは、費用対効果の高い方法です。では、Jumpのカメラアレイのようなものを使って、実地作業を撮影したと想像してみてください。学習者に臨場感のある体験を提供し、その作業を行う環境を実感できるシミュレーションになります。学習者は仮想世界を歩き回り、さまざまな角度から何が起きているかを確かめられます。これにより作業をより正確かつ明瞭に実演でき、研修内容の理解を深められる可能性があります(単に楽しい体験になるかもしれないことは言うまでもありません)。特に身体を使う作業では、教育効果と費用対効果の高い研修につながる可能性があります。
VRの概念は、ビデオゲーム業界で数十年にわたって存在してきました。これまでの試みは当時の技術的制約から失敗しましたが、それ以降、現代の技術は大きく進歩しました。現在、VRは、 Oculusや Sonyなどの企業による、より新しい取り組みのおかげで、ビデオゲーム業界で注目を集めています。VRを使えば、想像力豊かな完全にコンピューター生成の環境を移動し、そこに働きかけながら、ゲーム世界の登場人物になったように感じられます。しかし、Jumpのようなカメラシステムが、ほかのエンターテインメントメディアに何をもたらすか想像してみてください。近い将来、VRを通じて一人称視点で映画を体験できるかもしれません。主人公の後を追いながら、振り返ったり周囲を見回したりして、周辺の様子を3Dで眺め、映画の中にいるように感じられます。最新作を大画面で見るために映画館へ行く必要はなくなるかもしれません。スマートフォンほどの大きさの画面が、3D映画を最も没入感のある形で見る手段になる日も近いかもしれません。
VRは、身体の動きが制限されている人々にとっても意義深いものになり得ます。これまで訪れることが難しかった場所を、実在する場所の実際の映像を見ながら巡れるからです。一方で、遠く離れた場所の現実感ある光景や音をVRで体験できることは、誰にとっても魅力的かもしれません。海辺の香り、そよ風、日差しを再現する熱など、ほかの感覚刺激と組み合わせれば、お気に入りの浜辺に座っているような、かなり没入感のある多感覚シミュレーションを作れるでしょう。本物の代わりにはなりませんが、次善の体験にはなるかもしれません。
VRは、マーケティングや販売、教育、エンターテインメント、旅行(シミュレーション)において、より没入感のある体験を実現するさまざまな機会をもたらします。カメラリグ、映像を組み立てる計算能力、完成したVR動画を公開するプラットフォームを組み合わせたGoogle Jumpのようなシステムは、VRコンテンツの制作と共有をより容易にし、一般に広く普及させる可能性があります。VRはユーザーとのやり取りを変え、多くの企業に影響を及ぼす可能性を秘めています。VRが近い将来、そしてさらに先の未来に、こうした用途やほかの用途にどのように応用されていくのか、実に興味深いところです。
本記事は、 The SAP Community Networkとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが本記事の見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Brendan Gowerは、The SAP Community Networkのライターです。
画像:3Dゴーグルを着用する男性。REUTERS/Morris Mac Matzen。

