XPrizeは、リチャード・ブランソンの宇宙事業でのキャリアを切り開いたことで有名だが、実際には、最も健康な人々のゲノムの秘密を解き明かすことのほうが難しかった。賞金1,000万ドルのArchon Genomics XPrizeは、遺伝学者たちが100歳以上の人々100人のゲノム配列を解析する競争となるはずだった。目標は、初の「医療グレードのゲノム」を作り出すことだった。賞の支援者たちは、欠陥や疾患、長寿に関して、自分自身の染色体の健康状態を測る際のゴールドスタンダードになることを期待していた。この賞は、個人に合わせた遺伝子治療のため、あるいは治療後に、定期的にDNA配列を解析する世界を予告していた。ちょうど健康診断で医師を訪ねるように。
2013年、XPrizeは中止された。時代遅れになっていたのだ。「私たちが気づいたのは、ゲノム配列解析技術のコストが急落し、速度が向上しているのは、私たちの競争とは無関係に進んでいるということです」と、XPrize会長のピーター・ディアマンディスは認めた。ゲノム配列解析の費用は現在1,000ドルにまで下がり、新たな研究を可能にしている。
たとえば今年初め、バイオテクノロジー企業のGenentechは23andMeと提携し、パーキンソン病の新たな治療法を見つけるため、パーキンソン病患者とその親族3,000人の全ゲノムを調べた。2012年には、この2社は、患者のゲノムがGenetechのがん治療薬Avastinへの反応にどのような役割を果たすかを探るために提携していた。
炎症性腸疾患のようなほかの病気では、答えは私たち自身のゲノムの外、そして私たちの体内に生息する微生物のゲノムの中にあるかもしれない。カリフォルニア電気通信・情報技術研究所所長のラリー・スマーが掲げる作業仮説はこれだ。彼は自身のDNAの一部の配列解析を受けただけでなく、腸内細菌が自身のゲノムとどのように相互作用するかをより深く理解するため、便のサンプルを氷上で保管している。こうして医師より先にクローン病を診断したスマーは、欠陥部品のある車種を自動車メーカーがリコールするのとほぼ同じように、いつか一般市民の大規模な層を遺伝子検査のために呼び戻すことになると考えている。
「新たなDNA配列が何らかの病気と関連づけられると、そのDNAの特徴を持つ人々が『予防保守』のために呼び出されることがある、と想像できます」と、スマーは The Atlantic紙に語った。
そのとき、私たちは彼らをどのように治療するのだろうか。ヒトゲノム計画が15年前に成功して以来、個別化遺伝子治療は医療の次なるフロンティアとして喧伝されてきた。しかし、効果的な一対一の医薬品は、いまだ実現していない。「合成生物学者」のアンドリュー・ヘッセルは、乳がん患者の資金で運営されるバイオテクノロジーのスタートアップ、Pink Army Cooperativeを通じて、その流れを変えようとしている。同組織は薬ではなく、特別に設計したウイルスを使い、患者一人ひとりのゲノムに合わせた治療を届けることを目指す。ヘッセルの思いどおりになれば、診断から治療までの隔たりはほとんどなくなり、患者が待つ間に医師がウイルス治療を準備することになる。
この記事は初めに GE LookAheadに掲載されたものです。掲載は、世界経済フォーラムがその見解を支持することを意味しません。
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著者:グレッグ・リンゼイは、GE LookAheadの寄稿者です。
画像:日付不詳のアーティストによるイラストに描かれたDNA二重らせん。REUTERS/米国国立ヒトゲノム研究所。

