ICTの革新は、インフォーマル経済における新たなビジネスモデルを可能にし、より多くのインフォーマルな取引をフォーマル経済に取り込むことで、アフリカの人々を貧困から救い出す可能性がある。企業、市民社会団体、政府は、これを実現するためにどのように協力できるだろうか。
多くの発展途上国では、80%を超える人々がインフォーマル経済で働いている。 インフォーマル経済は、経済のインフォーマル部門とも呼ばれ、公式統計に含まれず、課税の対象にもならず、その他の形でも当局による監視や規制を受けていない経済活動を指す。
どの国にも、物々交換や現金払いの仕事など、何らかのインフォーマルな経済活動がある。しかし、インフォーマル部門が経済の大部分を占めると、貧困削減の取り組みが妨げられる。課税や社会保障負担金を徴収できる対象が狭くなり、インフラやその他の公共財・サービスへの投資に使える公的資金が限られる。インフォーマルな活動の広がりは、良好な統治と法の尊重を損ない、末端レベルの汚職の機会を増やす。また、インフォーマルな労働者は、不規則な収入の時期を乗り切るための金融サービスを利用できないため、ショックに対して脆弱になりやすい。
アフリカは2000年以降、驚異的な成長を遂げてきたが、貧困削減への効果は期待外れだった。その一因は、この成長によってフォーマル部門に生まれた雇用がごくわずかだったことにある。 成長の多くは資源採掘を中心としたもので、労働集約型ではなく資本集約型だった。アフリカで富を広く行き渡らせるには、インフォーマル経済に目を向けなければならない。
近年の西側諸国でさえ、経済成長の回復が雇用の安定や生活水準の向上につながっているようには見えない。格差の拡大と賃金の停滞により、人々は、いわゆる「シェアリングエコノミー」で副業をしたり、自宅の部屋やその他の資産を貸し出したりして、何とか生計を立てざるを得なくなっている。シェアリングエコノミーは、ICTによって可能になったインフォーマル経済と捉えることができる。ソーシャルメディアを巧みに活用することが新たなモデルの実現を支えてきた。評価システムなどの仕組みによって、個人間の信頼が育まれ、既存企業ではなく人々同士で安心して取引できるようになった。
しかし、インフォーマル経済とは異なり、シェアリングエコノミーの取引を可能にするICTプラットフォームは、当局による監督の基盤となる。どのように監督すべきかは、多くの西側諸国政府が今まさに取り組んでいる課題だ。フォーマルなタクシー業者やホテル事業者は、UberやAirbnbのようなサービスとの間で、規制上の公平な競争条件を求めている。
ICTプラットフォームは、新たなビジネスモデルを可能にし、従来インフォーマルだった活動をよりフォーマルな基盤に載せることで、アフリカのインフォーマル経済にも変革をもたらし得る。 これまでインフォーマルで小規模だった分野に、十分な資金を持つ新しいタイプの起業家が参入し始めている。たとえば、スラムのインフォーマルな学校の大半は、起業家精神を持つスラムの家族によって運営されてきた。ケニアのBridge Academiesは、テクノロジーによる経費削減と、台本に沿った厳密な教授法を通じて、こうした学校の規模を拡大している。これにより、1日2ドルで暮らす家庭にも手の届く教育の質を高めている。
ケニアのMPESAやBharti Airtelのマイクロ保険商品などのモバイルマネーアプリは、人々が事業を拡大し、経済的ショックから身を守るために必要な金融サービスを利用できるようにすることで、インフォーマル経済で生計を立てる人々を支援している。
モバイルマネーは、インフォーマル経済によって可能になっている日常的な汚職にも対処している。ナイロビでは、マタツ(ミニバス)に非接触型決済システムが現在導入されつつある。マタツの運転手が乗客の運賃として多額の現金を持ち歩かなくなれば、交通警察が裁量的な支払いを要求する余地は小さくなる。
従来、政府はインフォーマル経済を顧みてこなかった。インフォーマル経済の成長が公共部門の歳入増加につながる可能性は低かったからだ。現金ではなく電子送金で支払えば、取引を追跡し、公式統計や税制に組み込む、すなわちフォーマル化できる可能性もある。課税基盤を広げるには、適切かつ賢明な課税という課題が生じる一方、フォーマル経済の税負担を軽減し、より多くの人々が良好な統治に利害関係を持つようになる。 インフォーマル部門から税を徴収できるようになれば、政府もその成長に利害関係を持つようになり、しばしば敵対的だった姿勢が変わり、成長を促す規制の導入につながる。
ICTの利用拡大は、政府がより賢明な補助金支給を行う新たな機会も開く。たとえばナイジェリアは、零細農家に肥料補助金を届けるため、スマートカードを導入した。 ニジェールでの調査によると、ICTを活用してより良い情報にアクセスすることで、農家は収入を29%増やせる。こうした結果は、携帯電話基地局への補助金が公的資金のより良い使い道ではないかという問いさえ提起している。
インフォーマル経済をフォーマル経済に統合する新たなモデルを、貧困層の利益にかなう形で定着させ、透明性と民主的な説明責任を高めるにはどうすればよいだろうか。政府、企業、市民社会は、従来の不信感を乗り越え、ICTがもたらす機会を生かしてインフォーマル経済を成長させ、段階的にフォーマル化するために、どのように協力できるだろうか。
本稿は、2015年年次総会に向けて世界経済フォーラムのグローバル戦略的先見コミュニティが寄せた、複数の個人の見解の一つである。さらに読むには、 コレクション全文にアクセス。
著者:Julius Gatuneは、African Centre for Economic Transformation(ACET)の研究者兼政策アドバイザー。

