AIは、世界で最も複雑なオペレーティングシステムである人体の謎を解き明かす助けとなる

We are already seeing AI making profound progress in some areas of healthcare.Image: BenevolentAI
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人類に深い恩恵をもたらす可能性を秘めた静かな革命が起きている。おそらく、これまでのどの技術革命よりも大きな可能性を持つ。それは人工知能(AI)と医療の融合だ。

AIが人間の知能を補完し、変化させ、高める方法については多くの議論がある。だが、知性を高めようとするなら、身体の機能を向上させ、守り、理解することも目指すべきではないだろうか。

私はキャリアの全期間を通じて、病気の治療法を見つける仕事に取り組んできた。AIに期待するのは、人間と機械の新たな相互作用を活用し、世界で最も複雑なオペレーティングシステムである人体の謎を解き明かす可能性だ。AIの高度な知能と推論能力は、これまでにない方法で人体を理解し、人間の創造性を大きく高め、科学者が新薬を生み出す助けとなる。

生活の面では、知的な能力拡張は今日、当たり前になっている。スマートフォンを開き、インターネットを検索し、家庭内の機器を操作するたびに、それは起きている。しかし、AIの活用が単に生活を便利にする以上に根本的な意味を持つ分野が一つある。それは、人類が最も切実に満たせていないニーズ、すなわち病気の治療だ。

50年前には想像もできなかったほど長く生きられる時代に暮らしているのは幸運だ。だが、寿命が延びても、晩年を若い頃と同じように健康に過ごせるとは限らない。がん、アルツハイマー病、糖尿病など、生活を損なう病気はすでに、家族、社会、経済に前例のない負担をもたらしている。

Image: 英国がん研究所

テクノロジーによって多くのことが一新された世界で、私たちはこう問うべきだ。治療法がまったくない病気が、なぜ今なお約9,000もあるのか。現在の経済モデルのもとでは薬が開発されることのない希少疾患に、なぜ3億人もの人々が苦しんでいるのか。この分野でテクノロジーは、もっと大きな変化をもたらすべきではないだろうか。

もちろん、医療の一部の分野では、AIがすでに大きな進歩を遂げている。たとえば診断では、早期発見と正確な診断が急速に進み、5年前には医師が想像もしなかったような形で医師の能力を高めている。しかし、それは問題の一側面にすぎない。病気と診断され、その後、治療法がないと告げられる場面を想像してほしい。

病気の治療を目指す道のりには、数多くの課題がある。AI企業を創業する前にバイオテクノロジー業界で学んだのは、医薬品の研究開発における課題がいかに大きいかということだ。その結果として、コストと時間がかさみ、未治療の病気という深刻な未充足ニーズは、これまで解決があまりに困難だった。新薬を創薬からFDAの承認取得まで進めるには、現在平均26億ドルの費用がかかり、その過程には10~15年かかることもある。それだけでも十分に深刻だ。さらに悪いことに、研究開発プログラム全体の97%は失敗に終わる。

Image: タフツ大学CSDDの2014年調査

簡単に解決できる問題ではない。ひと言で言えば、生物学は非常に複雑だ。病気の根本原因を見つけて理解することはもちろん、治療法を見つけることは極めて難しい。人体は、37兆個を超える細胞からなる、知られている中で最大のデータシステムだ。何百万年もの進化と、無数の要因や組み合わせの結果である。ヒトゲノムの解読など、人体の研究を深めるほど、私たちにはまだ学ぶべきことが多く残されていると分かってくる。

問題は生物学の複雑さだけではない。人間は、吸収し処理できる情報量に限界がある。情報がどれほど膨大かを示す例として、生物医学分野だけでも、毎日1万本の新たな科学論文が発表され、科学特許は1億件を超え、充実した化学・ゲノムデータベースが数百あり、患者の臨床試験データセットも数万件にのぼる。人間はこうした情報を処理するようにはできていない。

科学には、あまりに難しく、人間の思考能力だけでは解決できるほどに進化してこなかった問題が数多くあることは明白だ。しかし、人間は知恵を絞り、こうした大きな問題を解決するために、私たちと協働する新たな思考技術を生み出してきた。

私が自分の会社で実現しようとしていたのは、まさにそれだ。人間の生物学を学習したAIと対話したかった。「コンピューター、ALSの治療法を見つけて」と言いたかった。そうすればコンピューターが、あらゆるデータ、科学論文、化学データベース、ゲノムデータベースなど、すべてを読み込む。AIはその情報やデータが何を意味するかを文脈に沿って捉えられる。そして推論し、理解し、ALSの根本にある分子レベルの原因を仮説として示す……するとAIが、その病気を治療する薬の設計方法を教えてくれる。

そんな対話が実現するまでには少し時間がかかるかもしれないが、多くの人が考えるほど遠い未来の話ではない。AIを活用する医療について、未来の話として語る人は多い。しかし、現実にはすでに起きている。AI技術は、受動的なものから生成的なものへと飛躍しつつある。生成AIツールは、コンピューターとアルゴリズムを使い、自ら推論して説明を導き出す。必要なのは、私たちが設定する目標と制約だけだ。

では、AIを活用する医療は、今どの段階にあるのだろうか。

科学者、数学者、コンピューターエンジニアである私たちは、ある種の作業では人間よりはるかに優れたアルゴリズムを作ってきた。一方で、ほかの作業では人間に遠く及ばないが、それでよい。電卓は計算ではあなたより賢い。NMR AIは空間・分子プロファイリングであなたより優れ、化学結合間の距離もあなたより正確に予測できる。何十億ものデータポイントを持つナレッジグラフは、あなたより多くの生物学的知識を備えている。

AI技術を活用した生物学・生命科学のイノベーションと飛躍的な進歩は、まだ頂点に達していない。しかし今、先進的なアルゴリズム、処理能力の向上、膨大なデータへのアクセスが組み合わさり、科学者と機械が協働して、人間だけでは不可能な水準で生物学や病気への深い洞察を得られる段階に来ている。

生物学と生命科学では、コンピューターサイエンスと工学の進歩を力として、他のデータ豊富な分野で見られたペースで、驚くべきイノベーションの時代を迎えようとしている。今後5年間で、医療は過去50年間を上回る変革を遂げるだろう。その変革の多くはテクノロジーによってもたらされ、テクノロジーの多くはAIを活用したものになる。

AIの助けを借りて、人間の健康をめぐる科学は、前例のないルネサンスの始まりを迎えている。ここ数年だけでも、私たちは……そう、ずっと苦しめられてきた病気を理解し始めている。

社会として、この強力なテクノロジーをどう使うかを選ぶことができる。AIを恐れることもできる。あるいは、AIを活用して私たちを助け、能力を高め、協働し、認知能力の限界を乗り越え、人間が不得手なことを支援し、望むことをより良く、より速く実現することもできる。機械に知能を与える新たな方法を見つけるにつれ、電力がネットワークを通じて供給され仕事を支えたように、世界中のあらゆる科学者にその知能を行き渡らせる世界を思い描くことができる。

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