人工知能の台頭は経済に大きな影響を及ぼし、あらゆる産業と労働者一人ひとりに変革をもたらします。新たな雇用(調査会社ガートナーによると2020年までに230万人)と数え切れないほどの機会を生み出す一方、持てる者と持たざる者の格差を広げる可能性もあります。
「人間+機械」の時代に、このテクノロジーを受け入れながら、誰もが包摂的な機会を得られるようにするにはどうすればよいでしょうか。答えは簡単です。誰もが行動を起こす必要があります。

拡大する社会的、経済的、金融的な格差への対処には、知能を持つ機械と共に世界の労働力が繁栄できるよう備えるため、個人、企業、教育機関、政府のすべてが役割を担う必要があります。
各分野に求められる取り組みは次のとおりです。
政府:AIの到来に備え、行動計画を策定する時です。
世界各国の政府は、AIの普及に備えて市民を準備させることを優先すべきです。リーダーは、難しい問いを投げかけながら雇用喪失の見通しに対処する行動計画を策定すべきです。たとえば、労働者のスキルを再習得させる時間を確保するために、テクノロジーの進化を遅らせるべきでしょうか。特定の職業が消滅することは分かっています。しかし、「段階的な移行経路」を描き、現在の仕事が自然な形で終わりを迎える前に新たな仕事に就けるよう労働者を支援すれば、その影響を最小限に抑えられるでしょうか。
AIを車にたとえて考えてみましょう。運転者が時速200マイルに達する方法は2つあります。まず、アクセルを強く踏み込み、ほんの数秒で時速0マイルから200マイルまで加速する方法です。あるいは、徐々に踏み込みながら速度計を確認し、加速を制御する方法もあります。もちろん、2つ目の方がはるかに安全です。
AIの加速を見守る場合も同じです。政府はその進歩を止めようとすべきではありません。最終的には、人々の暮らしをより容易に、健康に、安全にし、生産性を高めます。しかし、上流階級、中流階級、下流階級の格差がさらに拡大するのを防ぐため、政府は備えなければなりません。
たとえば、労働者のスキル再習得や再訓練に取り組む企業にインセンティブを設ければ、人々が新たな役割へ円滑に移行する助けになります。この取り組みだけでも、イノベーションを促進しながら大規模な雇用の喪失を防げる可能性があります。
企業のリーダー:実験し、学び、協働する企業文化を育む。
将来、存続する企業とそうでない企業の間には明確な「分かれ目」が生じるでしょう。成功するには、企業のリーダーは継続的な学習を自社のDNAとビジネスモデルの一部と考える必要があります。CEOは、従業員が仕事の変化に対応し、市場の動向に合わせて継続的に適応できるよう、スキル再習得や能力開発の機会に積極的に投資すべきです。そうしなければ、企業は競争力を失うおそれがあります。
すでにこうした投資を行っている企業もありますが、全体としては取り組みが不足しています。最近、私たちはAI戦略について調査しました。経営幹部および上級幹部300人を対象とした調査では、リーダーの82%が今後3年間にAIを導入する予定である一方、このテクノロジーと共に働くための従業員のスキル再習得を目的としたプログラムを提供しているのはわずか38%でした。個々の労働者のためだけでなく、企業全体の健全性のためにも、この状況を変える必要があります。
労働者:自ら行動を起こす。
市民として、仕事の未来に備えるために政府や雇用主だけを頼りにするわけにはいきません。将来の仕事では、より複雑で付加価値の高い業務が求められますが、賃金も高くなります。上昇志向と雇用の安定を求める人々にとって、戦いの半分は、現在の仕事が危機に瀕していると受け入れることです。それでも、AIや雇用喪失をめぐる悲観的な予測が数多くあるにもかかわらず、市民の10%しか自分の仕事が危険にさらされていると強く考えていないことが、私たちの調査で分かりました。興味深いことに、自分自身の雇用の安定を懸念していない人が多い一方で、市民の約60%は、AIが子どもや次世代の人々の仕事を脅かすと考えています。
今日の仕事に対するこの無関心は、楽観主義ではありません。認識の甘さであり、深刻な悪影響をもたらしかねません。
私たちは皆、継続的な学びに主体的に取り組む方法を考えなければなりません。学校に戻ることや、パートタイムの講座を受講すること、あるいは自社の従業員のスキル再習得の取り組みを主導することも考えられます。進んで試し、素早く学び、協働しましょう。新しい考えを受け入れ、学び、知識を共有する機会を積極的に探してください。好奇心と柔軟性を保つことが極めて重要になります。



