私は25年以上にわたり、コンピューターサイエンスにおける女性の参加拡大に取り組んできました。生物学や化学など一部のSTEM(科学、技術、工学、数学)分野を専攻する学部生の女性の数は、ここ数十年で着実に 増加して きましたが、コンピューターサイエンス(CS)における女性の参加は実際には 減少しています。
実際、過去20年間で、CSの学位を取得した学部生の女性の割合は約40%も急落しました。 米国国立科学財団によると、1995年にはCSの学士号取得者の29%が女性でしたが、NSFのデータが入手できる直近の年である2012年には、CSを学ぶ学部生のうち女性はわずか 18% でした。
コンピューティング研究協会(CRA) の報告では、さらに低い数字が示されています。CRAが北米の主要なコンピューターサイエンス学科100校以上を対象に毎年実施する タウルビー調査 では、2000年代半ばまでに、CSの学士号を取得して卒業する女性の割合は平均 14%でした。
私にとって、この問題は個人的なものであると同時に、世界全体に関わるものです。
障壁を取り除くために
私は数学者であり、コンピューターサイエンティストです。数学の博士課程に在籍していた頃、私の分野には女性がほとんどいませんでした。性別を理由に意欲をそがれることもありましたが、私は懸命に努力しました。
そして成果を上げました。IBM、ブリティッシュコロンビア大学、プリンストン大学、そして現在のハーベイ・マッド大学など、さまざまな場所で指導的な役職に就きました。これらの役職のほぼすべてで、私は初の女性でした。
女性が 男性優位の分野で働く際に立ちはだかる困難を、私はよく知っています。また、コンピューターサイエンスとテクノロジーが、 高収入、仕事と生活の調和、旅行の機会をもたらす素晴らしいキャリアになることも、身をもって知っています。社会にとって重要な課題に取り組むことで、世界に大きく貢献する機会も得られます。
若い女性たちにも、こうした機会を得てほしいと思います。
私は何十年もこの問題に取り組んできました。2006年にハーベイ・マッド大学に着任したとき、CS学科の専攻生に占める女性の割合は平均わずか約10%でした。教員たちは、より多くの女性を惹きつけるために大きな改革を行うことを決めていました。
教員たちは、導入段階のコンピューターサイエンス科目を再設計し、単純なプログラミングに偏らず、創造的な問題解決に重点を置きました。また、この分野の幅広さや、社会にどのように役立つかを示すテーマも盛り込みました。
女性や、コーディング経験のないほかの学生が感じる気後れを和らげるため、科目を2つのセクション、ブラックとゴールド(ハーベイ・マッド大学の色)に分けました。ブラックはプログラミング経験のある学生、ゴールドは経験のない学生向けです。
この工夫は、支え合える雰囲気をつくるうえで大きな効果を上げました。
女性にとって魅力ある分野にする
孤立しがちな従来型の宿題に代えて、教員たちは学生が一緒にコーディングするチーム課題を出しました。そして何より、授業を楽しいものにしました。CS入門科目は、共通カリキュラムで最も人気のない科目から、最も人気のある科目へと変わりました。
2007年にこの科目を導入すると、CSを専攻する女子学生の割合はすぐに上昇し、その後も着実に増えました。4年以内に、専攻生に占める女性の割合は平均約10%から40%になりました。2011年以降も、平均40%を維持しています。
さらに教員たちは、CS科目を1つか2つだけ履修した学生を対象とする、夏の早期研究機会を設け、1年生の女子学生に参加を促しました。 複数の研究 により、学部生の研究経験はSTEM分野での継続と自信を高めることが示されています。これらは 女性やマイノリティにとって特に重要な要素です。
早期のCS研究プロジェクトに参加したハーベイ・マッド大学の女子学生は、実際にこの分野への関心が大きく高まり、自信も増したと報告しました。彼女たちは、コンピューターサイエンティストの仕事を自分にもできると気づき、それを楽しめることも分かりました。
また毎年、大勢の女子学生を コンピューティング分野の女性のためのグレース・ホッパー・セレブレーション に派遣しています。これはテクノロジー分野で働く女性のための最大の会議です。このイベントで学生たちはロールモデルに出会い、自分が進める素晴らしいテクノロジー分野のキャリアが数多くあることに胸を躍らせます。
ほかの教育機関も、私たちの取り組みを採り入れ始めています。
たとえば、私たちが 多様性のための採用と包摂の推進(BRAID)イニシアチブ を アニタ・ボーグ研究所 と立ち上げ、15の学術機関でコンピューターサイエンスの多様性を高める取り組みを進めています。また、教授や学生が教材を利用できるよう、CS入門科目を edXで無料のMOOCとして提供する予定です。
まだ取り組むべきことがある
しかし、多くの障壁や課題が残っています。
米国国立科学財団の最新の報告書(2012年) によると、STEM分野のなかで、コンピューターサイエンスは学士号取得者に占める女性の割合が最も低い分野です。その割合は2007~2009年にわずか 11% まで下がり、徐々に回復して2013~2014年には 14% となりました。
コンピューターサイエンスは中等教育で必修にすべきですが、多くの学校にはコンピューターサイエンスの教師がいません。今日、大学に進学する若者の大半は、 コンピューターサイエンスにほとんど触れたことがありません。
また、数学や科学、コンピューターの才能を持って生まれる人もいれば、そうでない人もいるという文化的な思い込みにも、私たちは立ち向かわなければなりません。科学や工学のあらゆる分野で成功するうえでは、「生まれ持った能力」よりも粘り強さと努力がはるかに大きな役割を果たすことを示す 研究は数多くあります 。もう一つの深刻な課題は、テクノロジー分野のキャリアをメディアが描くことで、特定のステレオタイプが作られていることです。
テクノロジー分野で有能だと見なす人々のイメージを、どう変えられるか考えてほしいと思います。現時点では、コンピューターサイエンティストのイメージは白人またはアジア系の男性に限られています。
確かなことの一つは、より多様なチームが取り組めば、より良い解決策が得られるということです。差し迫った重要課題に最善の解決策を見つけるには、女性の視点が必要です。
多様性の必要性
また、テクノロジーの創造に携わるアフリカ系アメリカ人、ラテン系の人々、詩人、フットボール選手、アーティストも、もっと必要です。現在、コンピューターサイエンス専攻の卒業生への需要は満たされておらず、それはテクノロジー業界に限りません。
コンピューターサイエンスとテクノロジーを、主流の集団に似ているかどうかにかかわらず、情熱、能力、関心を持つすべての人を受け入れる世界にしたいと思います。
今日、コンピューターサイエンスはあらゆる産業に関わっています。その製品は私たちの日常生活に組み込まれています。気候変動から医療、貧困に至るまで、世界の重大な問題に取り組むにはテクノロジーが必要です。
テクノロジー分野のコミュニティをより多様にすれば、世界は信じられないほど刺激的な場所となり、驚くべき技術の発展を目にすることになるでしょう。
本記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
アジェンダの最新情報を受け取るには、 週刊ニュースレターに登録してください。
著者:マリア・クラウィは、 ハーベイ・マッド大学の学長です。
画像:女性がコンピューターのキーボードを打っている。ロイター。

