誰にでも悪い習慣はある。つらい気分のときに間食したり、友人とくつろいでいるときに飲み過ぎたりするかもしれない。あるいは、ソーシャルメディアに時間をかけすぎたり、同僚や友人、家族と必要以上に口論したりすることもあるだろう。
こうした悪い習慣を変えるには、目標に定めればよく、十分に努力すればいずれ断ち切れると、友人やセラピストは言うかもしれない。しかし、動機づけに関する科学の広範な研究によると、悪い習慣を抑えようという目標を持つことと、実際に抑えることの間には大きな隔たりがある。これは健康、仕事、社会生活を含む、生活のあらゆる領域に関わる悪い習慣に当てはまる。では、この隔たりを縮めるにはどうすればよいのだろうか。
米国とドイツで、目標追求の自己調整について研究する中で、私は人々が目標を実行するための計画をどのように立てる必要があると気づいた。最も効果的なのは、「もし~なら、そのとき~する」という形式を使い、目標に向けていつ、どこで、どのように行動するかを定めた計画だ。友人と一緒にいるときに飲み過ぎる場合を例に考えてみよう。計画の「もし」の部分では、悪い習慣を引き起こすきっかけとなる、重要な状況を特定する。友人から飲み物を勧められることがきっかけかもしれない。「そのとき」の部分では、勧めに応じるのを防ぐ行動を定める。たとえば、「今日は水を一杯いただきたいです」と答えることだ。そして、「もし」と「そのとき」を結び付け、次のような計画を作る。「金曜の夜に友人から飲み物を勧められたら、そのときは『今日は水を一杯いただきたいです』と答える!」
単純すぎると思うだろうか。世界各地の子どもから成人、高齢者までを対象に実施され、査読付き学術誌に掲載された数多くの研究によって、「もし~なら、そのとき~する」という計画が目標達成率を大幅に高めることが示されている。健康、達成、人間関係の領域における目標や、文化的・社会的背景の異なる人々にも当てはまり、自己調整全般に困難を抱える人々(例:ADHDの子ども、依存症に苦しむ人、前頭葉の患者)にも効果がある。
単純な「もし~なら、そのとき~する」という計画が、行動変容にこれほど効果的なのはなぜだろうか。実験室での実験から、重要な状況に直面したとき、計画の「そのとき」の部分で定めた行動を実行しやすくなることが分かった。本人が悪い習慣を断ちたいと言い聞かせて、懸命に努力する必要はもはやない。むしろ、「もし」の部分で指定した状況に直面すると、事前に計画した反応が、すばやく、無理なく、自然に引き起こされる。「もし~なら、そのとき~する」計画では、計画した反応を始める役割を指定された状況に委ねるため、その役割は本人の手を離れる。その結果、本人は自分の行動を意志の力で「制御」する役を担う必要がなくなる。代わりに、あらかじめプログラムされた、ほとんど自動的な反応をするようになる。
適切な「もし~なら、そのとき~する」計画を立てるのは難しくない。悪い習慣を引き起こす自分に特有の重要な状況を見つけ、習慣的な行動に代えて実行でき、実行したい行動を特定すればよい。ニューヨーク大学の同僚であるガブリエレ・エッティンゲン氏は、WOOP(願望・結果・障害・計画)というアプリを開発した。このアプリはいくつかの手順を通じて、必要な「もし」と「そのとき」の部分を具体化するのを助けてくれる。
自由な時間ができるたびにメールを確認する悪い習慣に陥りたくないなら、次の「もし~なら、そのとき~する」計画を立てよう。今夜、静かな時間ができたら、そのときはWOOPアプリをダウンロードする。


