
Project NOAHでは、洪水ハザードマップは、利用しやすく読みやすいほど、より「訴求力」があり効果的です。上に示されているのは、2009年の台風オンドイ(国際名:ケッツァーナ)襲来時のマニラ市の洪水マップです。
世界チャンピオンのボクサー、マニー・パッキャオはフィリピンの生けるアイコンであり、その伝説的な戦いは広く知られ、大きな名声をもたらしました。この名声と知名度は、フィリピン政府によって(Project NOAHを通じて)災害による犠牲者と損失を最小限に抑えるために活用されています。インフォグラフィックの色のグラデーションでは、洪水の深さをパッキャオの有名な身長と結び付けています。つまり、早期警戒情報の利用を促し、洪水ハザード予測をより興味深いものにするため、インタラクティブな洪水ハザードマップでは、黄色はパッキャオの膝までの洪水レベルを表し、危険を示す鮮やかな赤色はパッキャオ自身の身長を超える高い洪水レベルに対応します。
この記憶に残る逸話は、災害リスクに取り組むにあたり、革新的なツールや「人目を引く」地域主導のアプローチをますます活用している先駆的な国々の災害実務者や技術機関の熱意、活力、創造性をよく表しています。 仙台で開催された災害リスク軽減に関する世界会議 (WCDRR)では、インドネシアとフィリピンの災害実務者に会いました。彼らは災害発生前に、リスクにさらされている地域社会の暮らしに良い影響をもたらす革新的なアプローチを取り入れています。
では、テクノロジーのツールはどのようにこの新たなアプローチを推進しているのでしょうか。

フィリピンにおける地域主導のリスク
マッピングの典型例。災害への備えを
強化する取り組み
画像:世界銀行/GFDRR
インドネシアの国家災害リスク管理機関であるBNPBは、示唆に富む WCDRRシンポジウムを開催しました。そこで紹介された、使いやすい複数のツールを組み合わせると、包括的な啓発・備え・対応情報システムを実現できます。例えば、次のようなものがあります。
InaTEWS (インドネシア津波早期警戒システム)は、地震や津波の信号を事象発生から5分以内に中継し、幅広い通信経路(GSMネットワーク、機関インターフェース、電子メディアなど)を通じて早期警戒アラートを迅速に配信します。
InaSAFE (インドネシア緊急事態シナリオ評価)は、使いやすい可視化・迅速分析ツールです。影響シナリオを用い、緊急時の助言や地域インフラに関する提言を提供することで、地方当局者や災害実務者を支援します。
InAWARE (インドネシア全ハザード警報・リスク評価)は、外部情報源へのアクセスを改善し、対象地域のリスクにさらされている地域社会に情報を迅速に共有することで、早期警戒能力と意思決定の成果を向上させます。
また、フィリピン科学技術省の Project NOAH も紹介されました。同プロジェクトも災害情報革命の最前線に立ち、リスクデータの収集、可視化、実用的な情報としての配信方法を変えています。Project NOAHのエグゼクティブ・ディレクター、マハール・ラグメイ博士は、災害への備えを支えるオープンソースツールとオープンデータの活用を熱心に提唱しています。「関係者が利己的で、リスクデータを共有しなければ、災害リスク管理が包括的かつ最新の状態であることは決してありません」と、同博士はWCDRRで説明しました。「……一方、オープンソースソフトウェアは災害への備えを加速し、地域社会の脆弱性を最小限に抑え、長期的には、計画の不備によって自然災害が壊滅的な災害に転じるのを防ぐことができます。」
最後に、データ不足への取り組みでは、 OpenStreetMap がもたらす前向きな変革力が、すべての発表者によって強調されました。データが存在しない国々では、群衆の力(リスクにさらされている地域社会を含む)を生かして、必要不可欠なリスクデータを作成したり照合したりすることが大きな機会となります。そして、その機会は世界チャンピオンのボクサーの力を借りてつかみ取られています。
これらをはじめとする多くの洞察に富むツールは、過去数年間に、厳密な科学と創造的なパートナーシップが地域の知識を活用して地域レベルのレジリエンスを強化する方法に変革をもたらしてきました。また、災害リスク特定におけるユーザー中心のイノベーションをさらに推進するため、 チャレンジ基金 ( 英国国際開発省との連携)の最近の立ち上げも歓迎します。
世界銀行と災害リスク削減・復旧グローバル・ファシリティ(GFDRR)が、革新的なオープンソース技術や地域リスクマッピングの取り組みを支援するため、パートナーとどのように協力しているかについて詳しくは、 こちら
この記事は、 世界銀行のブログ「East Asia & Pacific on the rise」に初掲載されました。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:ヤン・ケルブラットは、世界銀行の東アジア・太平洋地域の災害リスク管理チームに所属し、都市のレジリエンス、洪水リスク管理、地域社会の備え、参加型リスクマッピングに焦点を当てたプロジェクトに携わっています。アラナ・シンプソンはGFDRR Labsチームを率いており、同チームは世界銀行の災害リスク管理(DRM)を支援する役割を担っています。
画像:台風で損傷した自宅の屋根の再建作業を休憩中、台風の生存者がコーヒーを飲んでいる。2013年12月18日、フィリピン中部のタクロバン市。REUTERS/エリック・デ・カストロ。

