最も致命的なスーパーバグが最も毒性が強いとは限らない理由

最も致命的なスーパーバグが最も毒性が強いとは限らない理由
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MRSAのような悪名高い細菌が「スーパーバグ」と見なされるのは、広範な病原性メカニズムを用いて 私たちを殺すことができるだけでなく 、抗生物質の効果に抵抗することもできるからです。しかし、一部のスーパーバグは人口の非常に多くの割合の人々の皮膚や鼻腔に常在しており、大多数の人にとってはごくわずかな問題しか引き起こしません。

なぜ特定の細菌が他の細菌よりも重篤な感染症を引き起こすのかは、明らかではありません。しかし数十年にわたり、細菌が産生する毒素が多いほど、より重い感染症を引き起こすと私たちは信じてきました。

しかし、 私たちの最新の研究では、 細菌である Staphylococcus aureus (MRSAのSA。「ゴールデン・スタフ」とも呼ばれる)の場合、むしろその逆が当てはまることが示されています。

毒素の役割

スーパーバグと感染症の関係を詳細に理解することは極めて重要です。鼻腔や皮膚に常在する S. aureus による感染症は軽度で表面的なものにとどまることもありますが、血流に入ると生命を脅かすおそれがあります。血液は通常は無菌の環境ですが、手術中や 肺炎などの感染症による合併症、あるいは糖尿病などのその他の基礎疾患の際に、細菌が時折血液中に侵入することがあります。この重篤な状態は菌血症と呼ばれ、死亡率は 最大で40%に達します。

この重症度の違いを理解するため、私たちはこれらの細菌が毒素を分泌する能力に注目しました。毒素とは、物理的に 人間の細胞の膜を破壊するタンパク質のことです。細菌が産生する毒素が血球に及ぼす影響は、下図で確認できます。左側では毒性の強い細菌が増殖しており、破壊された血球のハロー(輪)が見られる一方、右側では無毒性の細菌が増殖しており、血球は無傷のままです。

細菌毒素の破壊的な性質を踏まえ、私たちは数十年にわたり、細菌の毒性が強いほど、 その細菌が引き起こす感染症の重症度が高くなる と考えてきました。これを検証するため、私たちは分離された S. aureus の細菌の2つの大規模なコレクションを調べました。1つは、ある患者が菌血症を発症する前後に採取された株です。もう1つは、幅広い患者から得られたもので、鼻腔から分離されたものもあれば、菌血症を発症した後に血流から分離されたものもあります。

意外なことに、どちらの場合も、最も重篤な疾患を引き起こす血流由来の細菌が、最も毒性が低いことがわかりました。また、細菌の適応度がこの効果の鍵であることも明らかになりました。毒素の分泌には細菌にとって多大なエネルギーが必要です。そして、人体の免疫系の大部分が存在し、侵入に対して即座に応答できる態勢を整えている血流は、細菌にとって非常にストレスの多い環境です。

そのため私たちは、毒素の産生に必要なエネルギーが高すぎるため、細菌は血流という高ストレス環境にも適応することができないと考えています。これが、毒性の低い細菌が血流に侵入し、最も重篤な感染症を引き起こす理由です。

通説への挑戦

なぜ私たちは数十年にわたり、毒素が細菌による病気の発症にこれほど不可欠だと考えてきたのか、という疑問が残ります。その毒素は世界中の数多くの研究室で研究の焦点となり、ワクチン接種プログラムにおける主要な タンパク質標的 の一つとなっています。残念ながら、この問いに対する単純な答えはありません。

毒素は、 重要な役割を果たしており、 多くの側面で S. aureusの生活様式に寄与しています。競合する細菌を死滅させ、ヒト細胞から栄養素を放出させ、ヒトの免疫系を抑制して、細菌が通常の常在菌として私たちの体に快適に定着できるようにします。軽度の感染を引き起こす場合、毒素は大量の膿の生成を担っていますが、これは一人から別の人へと伝播させるのに適した素材です。結局のところ、ニキビを潰す誘惑に抗える人がいるでしょうか。

しかし、重篤な細菌感染症において体内で起こる複雑な相互作用をすべて再現する方法がないため、私たちはその理解のために 動物モデルに依存しています 。S. aureus の場合、通常はこの病原体に自然に感染しない小型げっ歯類が用いられます。そのため、実験的に再現性のある感染を得るには、1,000万〜1億個の細菌細胞をげっ歯類の血流に直接注入する必要があります。ヒトでこのような感染を引き起こすのに必要な、わずか数個(<100)の細菌と比べると、こうした研究結果の誤解がどこで生じうるかは明らかです。

表面的には、私たちの研究の示唆はやや気が重いものです。数十年にわたる研究にもかかわらず、MRSAのような細菌がどのように生命を脅かす病気を引き起こすのかについて、私たちはまだ多くを学ぶ必要があるからです。しかし、誤解を招く動物実験に基づく仮説を盲目的に追求するのではなく、自らの知識の限界を明らかにすることこそが、感染症研究の将来に向けたより良い出発点であるに違いありません。

本記事は、 The Conversationとの提携により掲載されたものです。掲載は、世界経済フォーラムによる見解の支持を意味するものではありません。

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著者:Ruth Massey氏は、バース大学(University of Bath)生物学・生化学学科の上級講師です。

写真:2011年3月9日、北ロンドンのHealth Protection Agencyで、Christian LaVallee氏がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査用の溶液を準備しています。REUTERS/Suzanne Plunkett

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