多くの人は見落としがちですが、血液に次いで、骨は世界で2番目に広く移植されているヒトの組織です。その結果、世界では年間200万件以上の手術が行われ、費用は50億ドル以上に上ります。
事故や病気によって健康な骨を失った場合、あるいは生まれつき骨の形が適切でない場合、どうすればよいのでしょうか。これまでの解決策としては、動物の骨やヒトの提供者から採取した骨片を用いることがありましたが、身体は非常に選り好みが激しいものです。身体が異物とみなしたものを拒絶すると、感染症や移植の不具合などの合併症が多発します。
そのため、現在でも、がんで顎の骨を失った、故人となったアメリカの映画評論家ロジャー・エバートのような患者にとっての標準治療は、自家骨移植です。これは基本的に、身体の一部から骨片を切り取り、別の部位に移植することを婉曲に言い表したものです。
自家骨移植は、婉曲な言い換えを 必要とする ような手技です。現在の最善の選択肢ではあるものの、それでも十分に良いとはいえません。手術は侵襲的で、組織を破壊します。患者には、複数回の手術を含む、さまざまな新たな問題が残る可能性があります。ロジャー・エバートの場合、医師は彼の股関節と肩から骨を切り取ったため、生涯にわたって足を引きずる状態を強いられました。また小児の症例では、自家骨移植はさらに劣った選択肢となります。単純に、分け合えるだけの骨が足りないことが多いのです。
そのため、何百万人もの患者が骨の置換のためのより良い解決策を必要としており、人口の高齢化と世界のグローバル化が進むにつれ、こうした筋骨格系の解決策は生涯にわたって持続しなければなりません。発明者たちはこの需要に応えるべく取り組んでいます。骨格再建のための新たな技術の一つは、患者の欠損部の解剖学的形状に合わせて作られた3Dプリント製の合成インプラントであり、その例としては、 Mobelife、 Oxford Performance Materials および ConforMISのものが挙げられます。他方、幹細胞療法を開発している企業もあり、その例としては、 Stempeutics、 Novadip あるいはBonus Biogroupのものがあり、これらは保存された細胞または採取された成体幹細胞のいずれかを用いて、骨再生を支援します。
当社のスタートアップ、 EpiBoneでは、上記の二つの潮流を組み合わせた、より抜本的で、あえて言えば自然なアプローチを提案しています。それは、自分自身の骨を育てることです。なぜ、 私たちの体内で毎日骨を作り出している 幹細胞を、実験室で骨を作製するために利用しないのでしょうか。これを実現するため、患者から二つのものを採取します。一つはCTスキャンで、これは本質的には高解像度の3Dエックス線画像であり、作製したい骨の正確な三次元形状に合わせた個別化された足場を計算し、製作できるようにするためのものです。もう一つは脂肪サンプルで、そこから幹細胞を抽出し、その後、それらを3D足場に注入します。
足場と幹細胞は、まとめて「バイオリアクター」と呼ばれる特殊な培養チャンバーに入れられ、これは体内で見られる状態を再現するものです。幹細胞が骨を形成する骨芽細胞へと変化し、足場に定着して、生体組織によって足場を再構築するためには、温度、湿度、酸性度、栄養組成がすべて適切でなければなりません。3週間後、患者にぴったり合ったサイズと形状の、生きたヒトの骨が取り出されます。これは自分自身の細胞から作られているため、身体が拒絶しないことが期待されるインプラントです。
患者に最初の個別化された実験室培養骨を移植する前に、なすべき研究はまだ多く残されています。実験室で培養された骨は、すでにブタやその他の動物に移植して成功しているものの、この方法がヒトにおいても有効であることを、まだ実証する必要があります。
EpiBoneの取り組みは、幹細胞が身体のあらゆる部位へと変化しうるという発生生物学からの発見を基盤としています。ひいては、当社の革新が、まだ想像されていない多くのものを含むさらに新たな発明の土台となるでしょう。生きた細胞と協働して骨を育てることができれば、医療の他の分野、あるいは建築、芸術、ファッションといった全く異なる分野においても、細胞を画期的な新たな用途に適応させられるかもしれません。
再生医療という進化する科学について私にとって最も感動的なのは、それが私たち自身の細胞の役割と可能性をどのように捉え直すかという点です。細胞はもはや治療の単なる受動的な対象とはみなされず、能動的な主体となっています。細胞は私たちの協力者です。そして、チームに加えたいと本当に思えるような、自然に力強く働く存在でもあります。
今後も長い道のりが待っていますが、いつの日か振り返って、痛みを伴い問題の起こりやすい骨移植が過去の話となっていると言えたらと強く願っています。現在および将来の無数の患者も、同じことを願っています。
テクノロジー・パイオニア2015の全件に関する詳細は、 こちらでご覧いただけます
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著者:Nina Tandon、Epibone共同創業者兼CEO、世界経済フォーラム 「テクノロジー・パイオニア」
画像:ベルギーのDenis Dufrane教授(ブリュッセルのSaint Luc病院の組織・細胞療法センターのコーディネーター)が、ベルギーにて2014年1月14日に、疾患を抱える患者の脛骨の穴がどのように治療されたかをエックス線画像上で示しています。REUTERS/Yves Herman


