量子材料によって、スター・トレックの世界がまもなく現実になるかもしれない

Star Trek uniforms sit on display for sale at the "Star Trek: Mission New York" convention in New York, U.S., September 2, 2016. REUTERS/Mark Kauzlarich - S1AETZBEYNAA
Force-shields that protect ships in Star Trek could soon be used in the spacecraft of tomorrow.Image: REUTERS/Mark Kauzlarich
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スター・トレックに登場する技術は現実離れしていると思うなら、考え直してほしい。装置高い評価を受けたテレビシリーズに登場する多くの装置が、徐々に現実のものになりつつある。近いうちに宇宙船から惑星の地表へ人々を転送することはできないかもしれないが、将来の宇宙旅行に不可欠なほかの道具の開発には近づいている。

私は生涯にわたるスター・トレックのファンであると同時に、新しい磁性材料の創製を専門とする研究者でもある。物性物理学は、物質の新たな固相や液相をすべて扱う分野であり、その研究は、コンピューターから携帯電話、太陽電池まで、過去1世紀のほぼあらゆる技術的進歩をもたらしてきた。

材料における新たな現象を探す私のアプローチは、化学の視点に立っている。世界を変える新たな性質を持ち、やがて「奇妙な新世界」を探査するために使える材料を、どうすれば作れるだろうか。とりわけ、いわゆる「量子材料」を理解することが、SFを科学的事実にするために不可欠だと考えている。

量子材料

何をもって物質を量子材料と呼ぶのだろうか。量子材料は、膨大な数の粒子が協調して働くことで生じる、特異で驚くべき性質を持つ。

指揮者が交響楽団を率いる場面を考えてみよう。音楽に秩序がもたらされなければ、あるのは雑音だけだ。足並みをそろえずに演奏する音楽家が増えるほど、雑音も大きくなる。

量子材料では、構成する音楽家全員が――この場合は材料中の電子や原子、つまり何十億もの粒子が――量子の規則、いわば「楽譜」に従って一定の仕方で振る舞う。

電子や原子のランダムな動きによる雑音の代わりに、指揮者がいれば音楽が生まれる。新しい材料の場合、それに当たるのが新たに現れる性質だ。こうした新しい性質を装置に利用することが、今日見られる技術革新を推進している。

磁場とシールド

では、こうした新材料を未来の宇宙船にどう活用できるだろうか。一例として、スター・トレックで宇宙船を守る防御シールドが考えられる。強い磁場を使えば、飛来する物体から船体を守れる可能性がある。とりわけ、飛来物が電荷を帯びている場合に有効だ。

どうすれば強い磁場を作れるのだろうか。その方法の一つが超伝導磁石だ。超伝導体では、電子が電気抵抗なく電流を流す。その結果の一つとして、大きな磁場を発生させられる。磁場を作るために超伝導体が支える電流は、超伝導そのものを損なうことなく、非常に大きくできる。

こうした超伝導体は、体内を見るMRI(磁気共鳴画像法)装置のために、病院などで強い磁場を作る用途に日常的に使われている。

高性能な超伝導体には、宇宙船の磁気シールドとして新たな用途があるかもしれない。スイッチを入れて電流を流すだけで強い磁場を発生させ、磁力による防御シールドを作る超伝導体で、宇宙船を覆う様子を想像してみてほしい。

まさにこれを、欧州原子核研究機構の科学者たちがCERNで研究している。新たな宇宙船用磁気シールド、すなわち超伝導性の二ホウ化マグネシウム(MgB₂)だ。

宇宙船に搭載する超伝導体

超伝導磁石で覆われた宇宙船は、船体の周囲に「磁気圏」を生み出し、有害な飛来物をそらすために利用できる。まだクリンゴンの魚雷を心配する必要はないが、将来の宇宙旅行では、宇宙空間の有害な宇宙線に対処しなければならない。

宇宙線は通常、電荷を帯びた粒子であり、宇宙船の電子機器に干渉する可能性がある。さらに重要なのは、長期の宇宙飛行中に宇宙飛行士へ致死量の放射線を浴びせるおそれがあることだ。

こうした宇宙線から未来の宇宙船を守ることは、今後数十年以内の火星探査を含め、あらゆる宇宙計画の将来にとって極めて重要だ。そして、超伝導磁石のシールドがあれば、道中でロミュランの攻撃から逃れられるかもしれない。

技術的な課題

ただし、難点がある。超伝導体は高温では機能せず、室温超伝導体は存在しない。「臨界温度」と呼ばれる一定の温度を超えると、超伝導体は「常伝導」状態になり、電子は再び電気抵抗を受ける。二ホウ化マグネシウムの場合、それは約-248℃という非常に低い温度で起こる。背景温度がさらに低い約-270℃の星間空間では問題ないが、より温暖な惑星を訪れる宇宙船には適さない。

私のような科学者は、こうしたシールドをより高い温度で機能させる「室温」超伝導体を探している。それは社会に新たな進歩をもたらす可能性もある。たとえば、MRI装置の稼働に低温が不要になれば、医療費を削減できる。

しかし、高温超伝導の仕組みは何十年もの間謎に包まれており、進歩は少しずつしか進んでいない。物理学と化学の境界で研究する者として、その答えは新材料の発見にあると考えている。これまでも新材料の発見によって、臨界温度を液体窒素の沸点である-196℃より高くする進歩が実現してきた。

こうした超伝導体は、銀河のさまざまな領域を探査する際の磁気シールド装置として優れているだろう。しかし、磁石を低温に保つために大量の冷媒を使わなければ、火星のような温暖な惑星では機能しない。

量子コンピューターと社会の変革

超伝導技術は、宇宙船でほかにもさまざまな用途に使えるだろう。量子コンピューターは従来のコンピューターより桁違いに高速で演算でき、現代の宇宙船には間違いなく搭載されるだろう。宇宙艦隊に暗号化したメッセージを送りたいだろうか。クリンゴンが量子コンピューターを持っていれば、メッセージを傍受してハッキングできるかもしれない。だから、この技術を理解しておくに越したことはない。

また、宇宙船のエンジンから、惑星探査任務で使うトライコーダーに至るまで、最も高効率な装置には当然、超伝導電気システムが使われるだろう。室温超伝導体の登場は、現代の電子機器を築いたシリコン時代に匹敵する社会の変革を引き起こすはずだ。その発見は、人類が種として次の進化を遂げ、新たな技術時代へ進むために越えるべき重要な関門である。

室温超伝導体の探索を続けるのは、きわめて理にかなっている。実現できさえすれば。量子材料は、発見を待つ奇妙な新世界を切り開く。そしておそらく最も胸躍るのは、まだ発見されていない技術、つまり人間が容易に目で見られる規模で量子効果を利用する技術だ。

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