組織のITはもはや特定部門に閉じた責任ではなく、あらゆる事業機能の所管となっています。
これまでデジタルトランスフォーメーションのプロセスから取り残されがちだった上級ビジネスリーダーも、意思決定の場に加わらなければなりません。
誰が、どのように、いつ協働すべきかは、対象となる取り組みと、想定される成果やリスクによって異なります。
テクノロジーは絶えず進化しています。それでも何十年もの間、ITの運用枠組みはほとんど変わりませんでした。問題を特定し、解決策を設計し、実行する。これは最高情報責任者(CIO)とITチームの領域であり、他部門から切り離されていることも少なくありませんでした。
そうした時代は終わりました。
今日、クライアントと会う場にいるのはCIOやITリーダーだけではありません。最高マーケティング責任者(CMO)、最高財務責任者(CFO)、最高人事責任者(CHRO)など、企業のあらゆる部門の幹部が参加します。
ITはチームで取り組むものになりました。人工知能(AI)の時代には、テクノロジーの課題はもはやインフラだけではなく、事業成果を生み出すことです。
ガートナーのデータもこれを裏付けています。CIO以外の幹部の80%が、デジタルトランスフォーメーションを主導する責任を感じていると答えています。ただし、同じガートナーの報告書によれば、こうした上級ビジネスリーダーのうち、「価値目標を達成する可能性が高い方法でデジタル施策を主導している」のは5人に1人にすぎません。
理想的なパートナーシップ
CMOとして、この統計は変える必要があり、変えられると考えています。私が率いるようなマーケティング組織にとって、変化はバグではなく機能です。それが私たちの生きる世界です。
私たちは、可能性を切り開くことの専門家です。顧客の声を代弁します。テクノロジーに大きな変化が起きると、最初に影響を受けるのは私たちです。だからこそ、マーケティングはITにとって理想的なパートナーとなります。双方に利益のある関係です。
ITがAIで何が可能になるかを示す一方で、私たちはストーリーテリングの力を使い、社内では他の上級幹部に、社外にも会社のAI変革について伝えています。
テクノロジーに関する意思決定が事業成果とより密接に結びつき、さらには成果を左右するようになるなか、新たな共感と協力が必要です。一方で、Cスイートのリーダーは成果を実現するための機能面または事業面の視点を持っていても、技術的な知識が不足している場合があります。対して、CIOやITチームは技術に精通していても、事業や各機能の全体像を十分に把握していないことがあります。
とはいえ、すべてのIT上の意思決定に協働が必要なわけではありません。ここでは、いつ、誰が、どのように協働すべきかを見極める重要性を解説します。
いつ協働するか
まず組織は、意思決定チームを拡大する場面について明確な基準を設ける必要があります。すべてのテクノロジー施策に幅広い意見が必要なわけではありません。インフラの更新やワークフローの改善といった定型的なIT投資は、多くの場合、CIOとITチームで対応できます。
しかし、デジタルトランスフォーメーションは別です。こうした取り組みはイノベーション主導で、部門横断的であり、影響も大きいものです。次のような意思決定では、協働が不可欠になります。
全社にとって大きな戦略転換を示す場合。市場への参入または撤退を伴う場合。未知のリスク(データプライバシー、セキュリティ、規制上の影響など)を伴う新技術を導入する場合。
このような場合、十分な情報に基づき、機敏で、成果を重視した意思決定を行うには、経営幹部のリーダーシップと部門横断のチームワークが欠かせません。マーケティングのパーソナライズを目的に顧客データプラットフォームを導入する場合も、新たなデジタルサービス部門を立ち上げる場合も、営業、サービス、フルフィルメント全体にAIエージェントを統合する場合も同じです。
こうした変化は流動的で、予測が難しいことも多く、変革に必要なテクノロジーと、事業または機能に関する知見を結びつける必要があります。AIの導入が急速に進む今、その必要性はかつてないほど高まっています。
誰が協働するか
各機能のリーダーは、自分たちのニーズを確実に反映するため、テクノロジーに関する意思決定プロセスに参加する必要があると理解しています。ただし、成功しやすいのは、規模を5~7人に絞ったグループです。全員の役割が明確なチームを編成すれば、ビジョンを見失うことなく、事業部門とテクノロジー部門の双方が意見を述べられます。
意思決定に関連する事業成果と、職務が直接結びついている人を加えます。
専門分野の知見と、成果の実現に対する責任の両方を担うメンバーを選びます。
機敏さを保つため、意思決定を主導する人と利害関係者を区別します。
どのように協働するか
テクノロジーに関する議論は長引きがちです。多額の予算を伴う意思決定が多く、リーダーが確信を得たいと考えるのも当然です。しかし、特にテクノロジー分野では、精度とスピードのバランスが必要です。また、テクノロジーそのものがこのプロセスを迅速化できます。
たとえば、生成AI(GenAI)は詳細な調査や競合分析を行い、チームメンバーが必要な情報を得るのに役立ちます。また、チャット型ツールは技術的な質問に答え、グループが議論の時間を最大限に活用できるようにします。
主要グループに意見を伝えるメンバーは、簡潔で明確かつ事実に基づいて話す必要があります。時間が貴重だからというだけでなく、明快さと簡潔さが自分たちに有利に働くためです。十分な情報に基づく、根拠のある立場を示せば、発言者のニーズが最終的な意思決定に反映されやすくなります。
テクノロジープロジェクトをめぐる協働的な議論を成功させるには、チームメンバーが次のことを行う必要があります。
明確で測定可能な目標とマイルストーンを定める。
機敏な意思決定の枠組みを採用し、GenAIツールを活用して意思決定を迅速化する。
明確なコミュニケーション経路を確立する。
チームの役割と責任について認識を合わせる。
最善の意思決定につながる適切な質問
上級リーダーは、テクノロジーに関する意思決定に参加するために技術の専門家である必要はありません。しかし、チームを価値の実現へ導く適切な質問をする必要があります。組織が正しい方向へ進むよう、ITの評価時にビジネス幹部が尋ねることを私がお勧めする質問をいくつか紹介します。
これは戦略的な意思決定ですか、それとも運用上の意思決定ですか。
実現しようとしている事業成果は何ですか。また、この意思決定によって、競争の仕方や価値の提供方法はどう変わりますか。
この投資は、目標や優先事項の達成にどう貢献しますか。この投資をせずに目標を達成する方法はありますか。
まだ把握できていない潜在的なリスクは何ですか。また、見落としの特定に協力できるのは誰ですか。
説明責任を損なわずに迅速に動ける体制になっていますか。
意思決定権を明確に保つには、どうすればよいですか。
ITと事業部門:協働の極意
責任の共有を組織全体の成功につなげるには、Cスイートのリーダーはテクノロジーに関する議論の場に座るだけで終わってはなりません。意思決定プロセスにおいて、十分な情報を持つ貢献者として、テクノロジーに関する対話に積極的に参加するための行動が必要です。
同時に、ITリーダーも、いつ協働するか、誰を巻き込むか、どうすれば効果的に進められるかを明確に判断する必要があります。このようにテクノロジーの課題を共同で担うことで、事業部門とITの協働をデジタル上の優位性につなげられます。


