世界各地で、意思決定に利害の衝突がある場面では汚職の機会がしばしば利用され、その結果、公共資金が不適切に配分されている。
経済協力開発機構(OECD)の外国公務員贈賄に関する報告書によると、外国公務員贈賄事件の57%は公共調達契約を獲得するために発生した。各国の調達予算の配分について、OECDは推計で20~25%が汚職によって失われていると報告しており、政府レベルで世界的に見られる傾向だ。
数百万ドルに上ることもある大規模な公共契約を考えると、公共調達制度は各国の支出における重要な要素だ。政府の透明性の不足に対処する革新的な新プロジェクトを世界経済フォーラムと主要パートナーが進めているコロンビアでは、公共調達がGDPに占める割合は12.5%で、政府総支出の35.7%に当たる。
コロンビアにおける汚職の年間損失額は170億ドルと推定され、これは同国のGDPの5.3%に相当する。このうち72億ドル、つまり政府の年間予算の10%が、公共調達を含む公共部門の汚職によって失われていると推定される。
歴史的に複雑で不透明な入札手続き、公務員と企業の緊密な関係、そして多数の利害関係者が一因となり、発展途上国では政府調達が公共部門の汚職の主な温床となることが多い。
有名な例として、ブラジルの建設会社オデブレヒト社が挙げられる。同社は2001年から2016年にかけて、違法な選挙運動資金の提供と約8億ドル規模の大規模な贈賄を行い、コロンビアを含む12カ国で100件を超える契約を獲得した。
コロンビアの学校給食調達は、規模は小さいものの、公共調達で生じる問題を端的に示している。公共部門は標準的な物品に法外な価格を歴史的に支払ってきたと報じられている。例えば、コロンビアの地元紙エル・ティエンポは、鶏むね肉が学校に1個12ドルで販売されていた(40,000コロンビア・ペソ)と報じた。これは地元スーパーの約4倍の価格だった。
さらに懸念されるのは、購入した物品が必ずしも納入されていないという報告だ。カルタヘナの前市長は、2,300万コロンビア・ペソ(約7,000ドル)を超える契約を違法に結んだとして起訴されている。この契約ではパン260万個が購入されたが、そのうち100万個は学校に納入されなかった。
コロンビアの貧困層の子どもたちの多くにとって、学校給食は主な食事だ。給食はどこへ行っているのだろうか。エル・ティエンポによると、調達資金は公人や公務員に加え、一部の食品納入業者の懐に入っているという。
世界経済フォーラムは米州開発銀行およびコロンビア監察総監室と提携し、分散型台帳技術によって学校給食調達の透明性と健全性を高められるかを検討している。
今年実施されるこの多面的なプロジェクトには、ブロックチェーン技術を用いた学校給食業者選定ソフトウェアの導入が含まれる。学術界、IT業界、非営利分野の複数のパートナーと共同設計されており、ブロックチェーン経済学・ガバナンスのコンサルティング会社プライスム・グループ、コロンビア国立大学、カリフォルニア大学バークレー校、ブロックチェーンセキュリティ企業クオンツスタンプの経済学者やコンピューター科学者が参加している。
ブロックチェーン技術は、多くのプロセスにおいて、コミットメント、調整、統制という3つの主要な経済的便益をもたらす。改ざん耐性のある記録機能により、第一の便益であるコミットメントは、データ記録の完全性と公開情報の信頼性を高め、政府調達のリスクを低減できる。これは特に、請負業者の選定や業績監視を可能にするうえで有益だ。
フォーラムの初期プロジェクトが焦点を当てる請負業者の選定段階では、ブロックチェーンによって入札プロセスの透明性、公平性、競争性を高められる。入札を募る前に、入札者に契約条件と選定基準を公に確約させることで、提案依頼書や選定基準が公表後に特定の請負業者に有利になるよう調整されるリスクを解消する。
競合する業者にとって、ブロックチェーンを基盤とする仕組みは、恒久的で改ざんできない入札記録を作成し、競合他社の入札に関する新たな情報を得た後に自社の提出済み入札を変更することを防ぐ。さらに、こうした透明性によって公平性への認識が高まり、明確に定められた選定基準のもとで新規参入者にも落札の機会があると示されるため、調達プロセスへの参加業者を増やせる。
入札や業者評価の過程における行動と決定は、恒久的に保存され、誰でも閲覧できる形で自動記録されるため、監査が容易になる。その結果、第三者に依存しない、完全に監査可能で正確な記録管理システムが実現する。重要なのは、この仕組みに市民が行動や決定を監視し、リアルタイムでリスクを指摘できるユーザーインターフェースを含められる点だ。これにより、監察総監室などの監視機関は、入札終了前に汚職の可能性がある行為を調査できる。
選定された請負業者の業績監視に関しては、実際の納入状況に関する情報を、保護者、教員、法執行当局、報道機関などの主要な関係者が利用できるようにするうえで、ブロックチェーンが役立つ可能性がある。教員などの参加者は、このシステムを使って給食の納入状況や品質をリアルタイムで報告できる。納入過程の観察を改善し、関係者による監視と関与を可能にすれば、請負業者の公式・非公式双方の説明責任を高められる。
汚職のような複雑な人間社会の課題に取り組むプロセスには、制度上の不足や必要な組織能力に対処する法的・制度的措置を組み合わせることが重要だ。テクノロジーだけでは、汚職のように根深い課題を解決できない。基盤となるブロックチェーン技術の開発も重要だが、汚職や新たな解決策が悪用される可能性を減らすには、効果的な経済設計とインセンティブ設計も必要となる。ブロックチェーン経済学に関するプライスム・グループの枠組みには、経済設計を左右する要素について、さらに詳しい情報が掲載されている。
世界貿易機関の報告書によると、より効率的で透明性の高い政府プロセスの導入は国の経済に大きな影響を与える可能性があり、最大10%の節約によって、調達プロセスに起因する財政赤字を一部の欧州諸国で財政黒字に転じさせることができる。
学校給食の公共調達を改善するため世界経済フォーラムが新たに共同設計したプロジェクトは、電子政府における意欲的な取り組みだ。第4次産業革命の中で、公共部門が新たなデジタルソリューションを試す取り組みを広げる。このソリューションとプロジェクトで得られた教訓は、ラテンアメリカ各地やそのほかの地域でも活用でき、世界各地で政府の透明性とプロセスの健全性を高めるテクノロジー活用型の解決策について、新たな国際対話を後押しする。



