新興国から生まれる4つのテクノロジーの潮流

Young femal e engineer concept. GUI (Graphical User Interface).
New technologies are transforming emerging economies.Image: Getty Images/metamorworks
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  • 新興国は新しいテクノロジーを試し、規制のあり方を形作っていますが、デジタルへのアクセスには依然として大きな格差があります。

  • 包摂的なデジタルの未来を築くには、インフラとイノベーションへの大規模な投資が不可欠です。

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、第四次産業革命の力を活用し、国際協力と世界的な課題への共同アプローチを進める必要性を浮き彫りにしました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって以来、私たちの暮らしはさらにデジタルの領域へと移っています。多くの人にとって、オンラインで学び、働き、交流する手段がなかったら、今年の生活がどのようなものになっていたか想像するのは難しいでしょう。パンデミック下で新しいテクノロジーは命を救う役割を果たしてきましたが、リスクももたらします。テクノロジーへのアクセス格差は、貧富の差をさらに広げるおそれがあります。デジタルツールが広く普及するのと並行して、安全性やプライバシーへの懸念も高まっています。

新興国では、こうしたテクノロジーの可能性がとりわけ明るく輝いています。従来の開発段階を丸ごと飛び越え、これまで以上の速さで知識と繁栄を広げられるという期待をもたらします。新興国は新しいテクノロジーを試し、その規制についても別の方法を見いだしており、世界のほかの地域にも影響を与える刺激的な視点を提示しています。ここでは、新興国で進む、今後何世代にもわたって世界中の人々の暮らしを形作る可能性のある4つの主要なデジタルの潮流を紹介します。

デジタルインフラの強化

世界的なパンデミックの間に、インターネットの利用は急増しました。感染拡大が始まってから数カ月の間に、インターネットの利用は70%増加し、コミュニケーションアプリの利用は300%増え、動画ストリーミングサービスは約20倍に拡大しました。しかし、物理的な場所が閉鎖された際、誰もがデジタルの世界に移行できたわけではありません。実際、世界人口のうちインターネットにアクセスできるのは、わずか53%です。

インフラへの大規模な投資がなければ、このデジタル格差は広がり続けるでしょう。開発が遅れている地域は取り残される危険があります。世界で最もインターネット接続が進んでいない25カ国のうち、21カ国はアフリカにあります。デジタルへのアクセス不足は、ひいては成長を妨げます。新興国のGDPの40~90%を占める多くの中小企業は、サービスのデジタル化が間に合わなかった、あるいはまったくできなかったために、存続の危機に直面しています。

この格差を縮めるため、国際電気通信連合(ITU)、世界銀行をはじめとする多国間機関や地域機関は、開発途上国全体でデジタル能力への投資を促しています。世界銀行のデジタル・ムーンショット・イニシアチブは、アフリカ連合の「デジタル変革アジェンダ2030」を支援する250億米ドルの基金であり、こうした重要な投資の代表例です。その目的は、2030年までにアフリカのすべての個人、企業、政府をデジタルでつなぐことです。これにより、アフリカの人々はインターネットが提供するサービスや機会を利用できるだけでなく、自らのイノベーションによってデジタル空間を変革できるようになります。

Image: 世界経済フォーラム

教育とリスキリングのためのデジタルツール

今年、世界中の学校や大学は、学生にオンラインで授業を行うことを余儀なくされました。中国だけでも、パンデミックの最盛期に約2億人の学齢期の子どもたちがオンラインで学習しました。世界の学齢期の子どもは約13億人に上ります。驚くことではありませんが、デジタルにつながった子どもたちの大半は先進国に暮らしています。そうした国々でも、貧しい地域の多くの子どもたちは、自宅にコンピューターやインターネット接続がないため、教育に深刻な支障をきたしました。

オンライン学習という課題を受け、新興国では創造的な解決策が生まれています。ナイジェリアのスタートアップ企業uLessonは、録画済みの中等教育コンテンツをストリーミングなしで利用できる選択肢を提供し、ネットワーク接続の格差を埋めるとともに、高額なデータ通信費の問題に取り組んでいます。ラテンアメリカでは、ペルーのスタートアップ企業Crehanaが、クリエイティブ分野やデジタル分野の専門職向けにオンデマンド学習プラットフォームを運営しています。ロックダウン中、新しいスキルを学べる無料のオンライン講座を毎日提供したことで、パンデミック開始以降、利用者数が40%増加したと報告しています。

教育格差を縮めるには、現職の労働者のリスキリングも必要です。テクノロジーや自動化の利用拡大によって人間が職場から締め出され、失業が増えるのではないかという懸念もあります。2025年までに、すべての業務の半分以上が機械によって行われると予想されています。しかし、このリスクは、新しいテクノロジーが生み出す機会と併せて考える必要があります。特に、開発を大きく飛躍させ、労働者全体のスキル水準を引き上げ、地域のイノベーションを促進する分野では、その機会は大きなものです。

段階を飛び越えた発展とイノベーション

デジタルと物理の世界を融合する第四次産業革命は、新興国が創造的かつ型破りな方法で新しいテクノロジーを試す力となっています。これにより新興国は、従来の開発段階を飛び越え、イノベーションの優先課題を自ら定められるようになりました。こうした国内発のイノベーションは、しばしば地域内外で採用されています。

例えば、ルワンダは民間運用のドローンネットワークとして世界最大のものを構築しました。2016年以来、商用ドローンを活用し、インフラがほとんど整っていない地域の農村部を含め、国内全域に重要な医薬品や輸血用血液を届けています。また、近隣諸国への医療物資の輸送にもドローンを利用しています。この戦略が大きな成果を上げたため、ほかのアフリカ諸国もCOVID-19対策にドローンを使い始めました。同様に、こうした成功例は先進国でも拡大しており、中国の小売企業JD.comは、中国農村部でのCOVID-19接触者追跡と配送を支援するためにドローンを活用しています。2020年4月、米国郵政公社はドローン開発企業Matternetと協力し、米国で初めて承認されたドローンによる処方薬配送サービスを実現しました。

アフリカ発のイノベーションが広がるこの潮流は、世界に通用する可能性を秘めた地域発のアイデアの拠点として、大陸の存在感を高めています。その基盤には、ケニアのモバイル送金サービスM-PESAなどの成功例があります。M-PESAは、アフリカでモバイルマネーが急速に普及するきっかけを作ったとされています。このようなサービスは、世界各地で支払いから医療相談まで、携帯電話を活用するサービスの利用拡大を後押ししました。

違いや個性、独自の視点で考える力を受け入れることで、イノベーションは花開きます。しかし、新興市場における研究開発の可能性を十分に実現するには、さらなる投資が必要です。この点では、地域間に依然として大きな格差があります。

2019年の年間総額で、テクノロジー系スタートアップへの投資は中国で2,580億ドル、米国で1,300億ドル、欧州で1,220億ドルに達しました。インドはその年、テクノロジー分野への投資総額が145億ドルと大きく後れを取りました。アフリカは大陸全体で13億ドルの投資にとどまり、さらに遅れています。こうした資金調達規模の大きな差は、デジタル格差を縮めるどころか、広げることになります。

プライバシー保護の推進

データ保護とプライバシーに関して、一部の新興国は先進国よりも慎重で保護を重視するアプローチを取っています。こうした国々は、国際的な規制のあり方を形作る中で、自らの声をますます強く発信しています。

人工知能(AI)などの分野では、中国、欧州、米国が世界の主要な技術革新の担い手と見なされ、世界のほかの地域は主にその革新の受け手や消費者として位置づけられる傾向があります。これにより、力の不均衡が深刻化しました。一握りの世界的企業は、自社のユーザープラットフォームを使ってデータを収集し、AIや機械学習プログラムの精度向上に役立てています。

これに対し、複数の新興国はテクノロジーのガバナンスについて、より保守的なアプローチを採用しました。例えば、インドネシア、インド、南アフリカは、2019年に日本で開始されたG20のデータ・フリー・フロー大阪トラックへの署名を拒みました。同トラックは、データの越境移転を促進する規制の策定を目指すものでした。

こうした新興国は当初、データプライバシーをより重視し、データプライバシーの要素を強化するとともに、データの不正利用を防ぐ保護措置を求め、さらにデータの国内保存も提唱しました。これは、多国籍企業のデータも含め、すべてのデータを収集した国のサーバーに保管するという考え方です。例えば、インドの個人データ保護法案の草案は、インド市民の機微な個人データおよび重要な個人データをインド国外で処理することを禁じています。しかし、その後、データの国内保存や大阪トラックに関する当初の立場から後退した国もあります。

一部の新興国の政府は、規制に画一的な「ワンサイズ・フィッツ・オール」モデルを適用すべきではないと明確に示しています。そうした政府は、少数の先進国や、その管轄区域に本社を置く企業が世界のデータを独占することに強く反対しています。各国の主張や提案をきっかけに、デジタル植民地主義の危険性について、以前から必要とされていた議論が始まりました。この保守的なアプローチが支持を広げるにつれ、各国は、自国と国民に関する情報について、データの収集や管理の方法も含め、より大きな管理権限を求めるようになっています。

包摂的なデジタルの未来

総じて、こうした潮流は、世界の現状を改善するうえで新興テクノロジーが秘める大きな可能性を示しています。新興国は、先進国に追いついたり、既存の製品やサービスを利用したりするためだけにテクノロジーを使っているのではありません。デジタルの世界をアイデアや創造性の源として、また世界の発展に独自の貢献をするための素材として活用しているのです。配送用ドローンのような実用的で手頃なソリューションの開発であれ、プライバシーやデータ保護を強化する革新的な規制モデルであれ、新興国はそれぞれのニーズや目標に合う新しいテクノロジーを採用しています。こうしたアイデアは国境を越え、他国の起業家や消費者に刺激を与えることも少なくありません。

この豊かな人材とアイデアは、世界規模で協力することがなぜ重要なのかを示しています。テクノロジーの進歩はしばしば競争として描かれ、最も力のある国や企業が完全な支配を目指して争っています。しかし、第四次産業革命の力を真に活用するには、すべての国が協力する必要があります。世界社会がいかに相互につながっているかを示したCOVID-19のパンデミックを通じて、その必要性は一層明らかになりました。

すべての国には提供できるものがあり、すべての国が議論の場に参加する機会を得るべきです。それだけではありません。豊かな国々も、自国より開発が遅れていると見なす国々から貴重な教訓を学べます。知恵、創造性、資源、そして意欲を持ち寄ることができれば、誰もが真に繁栄する世界を築けるでしょう。

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