世界の新型コロナウイルス感染症データが、未踏の領域を進むフィンテックの歩みを追う

Image: Paul Hanaoka/Unsplash
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  • パンデミック下でも世界のフィンテック業界は成長しているが、地域や分野によって結果は異なる。

  • フィンテック企業は製品やサービスの提供内容を刷新し、流動的な市場環境に適応してきたが、依然として重大な業務上の課題に直面している。

  • 将来の成功に向け、より手厚い規制措置と規制イノベーションの取り組みが必要だと報告している。

近年、新興技術はビジネスモデルの革新と相まって、新たな金融商品、チャネル、システムの開発をもたらしてきた。テクノロジーを活用した金融イノベーションであるフィンテックは、世界各地で、デジタル決済やデジタル融資からインシュアテックに至るまで、金融サービスの提供のあり方を変え始めている。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって以来、まだ黎明期にあるフィンテック業界が急激な景気後退をどう乗り切るのか、憶測が広がっていた。

一方で、新型コロナウイルス感染症の流行下でフィンテックが重要な役割を果たしていることを示す逸話的な証拠もある。すなわち、零細・小規模・中規模企業(MSME)への融資、モバイル決済の促進、そしてデジタル金融サービスの拡充を通じて、銀行口座を持たない人々や十分な金融サービスを受けられない人々にサービスを届けている。しかし、これを裏付ける実証データはまだ乏しい。

この隔たりを埋めるため、ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールのケンブリッジ代替金融センター、世界銀行グループ、世界経済フォーラムは連携し、「世界の新型コロナウイルス感染症下におけるフィンテック市場の迅速評価調査」を実施した。英国外務・英連邦・開発省(FCDO)とルクセンブルク財務省が支援した。

2020年6月から8月にかけて、共同研究チームは169の法域で事業を展開する1,385社のフィンテック企業を対象に調査を行い、前年と比較した今年の市場実績を把握するため、一連の質問を行った。

新型コロナウイルス感染症下で成長するフィンテック企業、その成長にはばらつき

調査対象となった13のフィンテック分野のうち12分野が、2019年の同じ時期と比べて2020年上半期に成長した。デジタル決済では取引量が前年比21%増加した。新型コロナウイルス感染症の流行下で、消費者や企業が送金や決済の受け取りにデジタルチャネルを利用していることを考えれば、意外ではないかもしれない。

デジタル資金調達、デジタル貯蓄、ウェルステック、インシュアテックも成長した一方、減少したのはデジタル融資だった。銀行融資と同様、デジタル融資は景気循環と同じ方向に動く傾向がある。

Image: ケンブリッジ代替金融センター、世界銀行、世界経済フォーラム

デジタル融資を促進するフィンテック企業では、新規融資の実行総額が減少した一方、既存融資の債務不履行が9%増加したとの報告もあった。

地域差では欧州とアジア太平洋が後れを取る

フィンテック企業の市場実績にも地域差が見られた。調査対象となったすべての地域で取引量が前年比で増加したものの、中東・北アフリカ、北米、サハラ以南アフリカのフィンテック市場では平均成長率が20%を超えた。対照的に、ラテンアメリカの伸びは13%にとどまり、欧州とアジア太平洋地域ではさらに成長が鈍かった。

新型コロナウイルス感染症に伴う、より厳格なロックダウン措置を経験した法域のフィンテック企業は、成長率も高いと報告する傾向があった。

例えば、感染症対策の厳格度が高い法域の企業は、取引量が平均14%増加したと報告したのに対し、厳格度の低い法域では9%だった。

厳格度の高い法域のデジタル決済企業は、低い法域の企業に比べ、取引量の成長率が2倍だった。同じ傾向は、市場提供活動(例:レグテックやエンタープライズテクノロジー)に携わるフィンテック企業にも見られ、厳格度の高い法域の企業は、はるかに速い成長率を報告した。

したがって、一部の分野や市場では、新型コロナウイルス感染症が金融サービスのデジタル化を加速させたと考えられる。

適応を続けるフィンテック企業、なお残る重大な課題

フィンテック企業はなぜ成長を続けられたのか。その理由の一つとして、機動力と迅速に適応する能力が考えられる。

調査対象のフィンテック企業の3分の2は、新型コロナウイルス感染症への対応として、既存の製品、サービス、方針に2つ以上の変更を加えた。変更は、顧客受け入れの基準や手続き、手数料やコミッションの引き下げ・免除、支払い猶予の提供などに及んだ。

Image: 世界の新型コロナウイルス感染症下におけるフィンテック市場の迅速評価調査(ケンブリッジ代替金融センター、世界銀行、世界経済フォーラム、2020年)

ただし、すべてのフィンテック企業にとって順風満帆ではない。業務上の課題、コストの上昇、外部リスクにも直面している。世界全体で、フィンテック企業は2019年上半期と比べ、代理店またはパートナーの稼働停止時間が平均5%増え、取引、問い合わせ、アクセス要求の失敗件数が平均7%増加したと報告している。

ロックダウンの影響はフィンテックにも及ぶ

新型コロナウイルス感染症に伴うロックダウン措置がより厳格な法域で事業を展開するフィンテック企業は、比較的厳格度の低い市場の企業より、業務上の課題が多く、コストも高いと報告している。

厳格度の高い法域のフィンテック企業は、低い法域の企業と比べ、代理店またはパートナーの稼働停止(11%対3%)や取引の失敗(10%対3%)を報告する割合がかなり高い。

こうした課題に伴い、パンデミック中に多くのフィンテック企業の財務状況が悪化した。半数を超える企業が、新型コロナウイルス感染症によって資本準備金に悪影響が及んだと報告し、40%は現在の企業評価額が下落したと述べた。

今後の資金調達見通しについては、回答は分かれた。34%が新型コロナウイルス感染症による悪影響を挙げ、21%は好影響に言及した。

フィンテック企業には、さらなる規制支援とイノベーション施策が必要

一部のフィンテック企業は新型コロナウイルス感染症の流行下で規制当局の支援を受けており、調査結果もこれを裏付けている。

こうした規制措置には、電子本人確認(eKYC)の支援、顧客デューデリジェンスの簡素化、遠隔での顧客受け入れが含まれる。

デジタル決済に携わる企業は、規制当局が取引上限を改定したとも述べた。例えば、ケニア中央銀行はモバイル決済を促進するため、2020年3月に1日あたりの取引上限を倍増し、その後、措置を6カ月延長した。

それでもフィンテック企業は、さらなる規制支援を緊急に必要としている。例えば、新たな事業活動に対する認可の迅速化(36%が指摘)や、製品・サービスの承認手続きの簡素化(31%)が挙げられた。

Image: 世界の新型コロナウイルス感染症下におけるフィンテック市場の迅速評価調査(ケンブリッジ代替金融センター、世界銀行、世界経済フォーラム、2020年)

さらに、新興市場・発展途上経済(EMDE)のフィンテック企業は、先進経済(AE)の企業よりも規制支援の緊急性を訴える傾向が強いようだ。新型コロナウイルス感染症に伴うロックダウン措置がより厳格な法域でも、その必要性は厳格度の低い法域より高かった(それぞれ、回答したフィンテック企業の45%対27%)。

また、規制サンドボックスやイノベーション・オフィスなどの規制イノベーション施策が有益だという強い兆候も見られた。これは、世界の新型コロナウイルス感染症下におけるフィンテック規制の迅速評価調査の結果を想起させる。

デジタル化が進む世界で目覚ましい発展を遂げるフィンテックについて、さらなる実証研究が理解を深める助けとなるだろう。

調査結果の全報告書はこちらから入手できる。

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