森林で行方不明になったハイカーを見つけるのは、困難で時間のかかる作業になり得る。ヘリコプターやドローンは、密生した樹冠の向こうを見通せないからだ。最近では、木々の間を上下左右に縫うように飛べる自律型ドローンが、こうした捜索に役立つ可能性が提案されている。しかし、航空機の誘導に使うGPS信号は、森林環境では不安定だったり、まったく届かなかったりすることがある。
来週開催される国際実験ロボティクス・シンポジウムで発表予定の論文で、MITの研究者らは、密集した森林の樹冠の下をドローンの編隊が協力して捜索する自律システムについて説明している。ドローンは機上での計算処理と無線通信だけを使い、GPSは必要としない。
各自律型クアッドロータードローンには、位置推定、自己位置推定、経路計画のためのレーザー測距器が搭載されている。飛行中、ドローンは地形の個別の3次元地図を作成する。アルゴリズムが未探索の場所と探索済みの場所を識別するため、ある範囲の地図を作り終えたかどうかが分かる。機外の地上局は、複数のドローンが作成した個別の地図を統合し、人間の救助隊員が監視できる全体の3次元地図を作成する。
現行システムには含まれていないものの、実環境で運用する場合、ドローンには行方不明者を特定する物体検出機能が搭載される。発見すると、ドローンはその人の位置を全体地図に記録する。人間はこの情報を使って救助活動を計画できる。
「要するに、人間をドローンの編隊に置き換えることで、捜索・救助プロセスのうち捜索の部分を効率化します」と、筆頭著者で航空宇宙工学科(AeroAstro)の大学院生、Yulun Tianは話す。
研究者らは、ランダムに生成した森林のシミュレーションで複数のドローンを試験し、NASAラングレー研究センター内の森林地帯では2機のドローンを試験した。どちらの実験でも、各ドローンは約20平方メートルの範囲をおよそ2~5分で地図化し、地図をリアルタイムで協力して統合した。また、全体の速度や任務完了までの時間、森林の特徴の検出、地図の正確な統合など、複数の指標で良好な性能を示した。
論文の共著者は、MITコンピューター科学・人工知能研究所(CSAIL)およびAeroAstroの博士課程学生Katherine Liu、CSAILおよび電気工学・コンピューター科学科の博士課程学生Kyel Ok、NASAラングレー研究センターのLoc TranとDanette Allen、AeroAstroの教授でCSAILの研究者でもあるNicholas Roy、そしてリチャード・コックバーン・マクラウリン航空宇宙工学教授のJonathan P. Howである。
探索と地図作成
研究者らは各ドローンにLIDARシステムを搭載した。これはレーザー光を照射して反射パルスを測定し、周囲の障害物を2次元スキャンする装置だ。樹木の検出に使えるが、ドローンから見ると、個々の木は驚くほどよく似ている。特定の木を識別できなければ、ドローンはその場所をすでに探索したかどうか判断できない。
そこで研究者らは、個々の木ではなく、複数の木の向きを識別するようドローンをプログラムした。こちらのほうがはるかに特徴的だからだ。この方法では、LIDAR信号が木々の集まりを捉えると、アルゴリズムが木々の間の角度と距離を計算し、その集まりを識別する。「ドローンはそれを固有の目印として使い、この場所を以前訪れたことがあるのか、新しい場所なのかを判断できます」とTianは話す。
この特徴検出技術により、地上局は地図を正確に統合できる。ドローンは通常、範囲内をループ状に探索しながらスキャンを行う。地上局はスキャンを継続的に監視する。2機のドローンが同じ木々の集まりを回り込むと、地上局は両機の相対的な変換を計算して地図を統合し、続いて個別の地図を融合して向きの一貫性を保つ。
「相対的な変換を計算すれば、森林の実際の様子に正確に対応するよう、2つの地図をどう位置合わせすればよいかが分かります」とTianは話す。
地上局では、「同時自己位置推定・地図作成」(SLAM)と呼ばれるロボットナビゲーションソフトウェアがLIDARの入力を使い、ドローンの位置を推定して記録する。このソフトウェアは、未知の領域の地図を作成すると同時に、その領域内にいるエージェントの位置を追跡する。これにより、地図を正確に融合できる。
最終的に、地形の特徴を立体的に示す地図ができる。木々は高さに応じて、青から緑までの色合いのブロックとして表示される。未探索の場所は暗く表示され、ドローンが地図化すると灰色に変わる。機上の経路計画ソフトウェアは、飛行中、ドローンがこうした暗い未探索の場所を常に探索するよう指示する。単にドローンにカメラを取り付け、映像を監視するよりも、3次元地図を作るほうが信頼性が高いとTianは話す。たとえば映像を中央局に送信するには多くの帯域幅が必要だが、森林地帯ではそれを確保できないことがある。
より効率的な捜索
重要な革新の一つは、ドローンがより効率的に範囲を探索できる新しい捜索戦略だ。従来の方法では、ドローンは常に最も近い未探索の場所を捜す。しかし、その場所はドローンの現在位置から見て、さまざまな方向にあり得る。ドローンは通常、短い距離を飛んでは停止し、次の進行方向を選ぶ。
「それではドローンの[移動]ダイナミクスを考慮できません」とTianは話す。「停止して旋回しなければならないため、時間とエネルギーの面で非常に非効率ですし、速度を上げることもできません」
これに対し、研究者らのドローンは現在の進行方向を考慮しながら、最も近い範囲を探索する。この方法なら、ドローンはより安定した速度を保てると研究者らは考えている。ドローンがらせん状に進む傾向のあるこの戦略では、捜索範囲をはるかに速くカバーできる。「捜索・救助任務では、時間が非常に重要です」とTianは話す。
論文では、研究者らは新しい捜索戦略を従来の方法と比較した。従来の方法を基準にすると、研究者らの戦略は、ドローンが数分早く、平均速度も高い状態で、はるかに広い範囲をカバーするのに役立った。
実用化に向けた制約の一つは、地図を統合するために、ドローンが依然として機外の地上局と通信しなければならないことだ。屋外実験では、研究者らは各ドローンと地上局を接続する無線ルーターを設置する必要があった。将来的には、ドローン同士が近づいたときに無線通信して地図を融合し、離れると通信を切る仕組みを設計したいと考えている。その場合、地上局は更新された全体地図の監視だけに使われる。



