AIは医療の未来に何をもたらすのか

Times City complex is seen reflected on a printer next to a health worker inside a stem cell laboratory at Vinmec hospital in Hanoi September 12, 2014. With Vietnam's public hospitals stretched beyond their limits and private healthcare a fledgling sector, there's billions to be made courting deep-pocketed Vietnamese for medical treatment overseas. Picture taken September 12, 2014. To match VIETNAM-HEALTHCARE/ REUTERS/Kham (VIETNAM - Tags: HEALTH BUSINESS) - RTR4A74Y
Despite intelligent machines’ limitations, they will continue to play a bigger role in health care.Image: REUTERS/Kham
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知能を備えた機械は、複雑な製造システムを稼働させ、工場の現場で人間に取って代わるようになっているが、医療分野への浸透はまだ限定的だ。高解像度画像診断装置から手術ロボットまで、この分野で最も高度な機械も、依然として人間が全面的に操作している。

しかし、ロボットや人工知能(AI)システムがさらに高度化すれば、いずれ医師や看護師は不要になり、患者はコンピューターに相談するようになるのだろうか。端的に言えば、近い将来にそうなることはない。医療従事者が機械への依存をますます強めるのは確かだが、技術は医療従事者の能力を補完するのであって、置き換えるものではない。医療現場の主導権は今後も医師が握る。

Image: CB Insights

2009年に出版された著書『イノベーターの処方箋』の中で、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセンは、「直感的」から「精密」までの幅を持つ医療実践のスペクトラムを示した。直感的医療とは、医師が患者の症状を解釈して診断を下し、治療法を処方するもので、その有効性は不確かなことが多い。一方、精密医療とは、個別化医療と混同すべきではないが、既知の健康状態に対し、予測可能な結果をもたらす標準化された治療を適用する、ルールに基づくプロセスを指す。

クリステンセンによると、今日行われている医療の大半はスペクトラムの直感的医療に近く、精密医療で治療できる疾患は、主に感染症などごく一部に限られる。実際、現時点では精密医療という概念は、疾患の原因となるメカニズムを特定するのではなく、直感的医療の成果を改善するためだけに誤って適用されている。この状況が続く限り、人間の知識と関与は医療に不可欠であり続ける。

定められた手順なしに不特定の症状を治療するには、的確な判断と信頼が必要であり、これは機械にとって大きな課題となる。何百万年にも及ぶ進化を経て、人間は状況に応じた直感を働かせる能力を身につけた。その能力によって、訓練を受けた医師は、不確実でデータの乏しい環境でも、妥当かつ迅速な判断を下せる。現在の最も高度なAIシステムでさえ、この能力を再現するには大幅な改良が必要だ。

患者とのコミュニケーションは、機械にとってさらに大きな課題となる。がんのように正体が分かりにくい病気の多くの微妙な側面を説明するには、感情的知性と、情報を効果的に伝えて患者との信頼関係を築く能力が求められる。医師には文化的謙虚さも必要だ。患者を診療する際、その社会的背景を考慮できるようにするためである。今後しばらくの間、予後が不確かな慢性疾患の患者を支援する力で、機械が人間に匹敵することはおそらくないだろう。

それでも、知能を備えた機械には限界があるものの、直感的医療の領域を含め、医療における役割は今後さらに大きくなる。優れた分析能力を活かし、機械はすでに、医師が診断や治療の判断を下す際の基となるデータをより多く提供している。また、機械による患者のモニタリングも広がっており、病院や薬局での人的ミスの防止に役立っている。近いうちに、入院手続き、予約管理、退院手続きなど、さらに多くの補助業務が自動化されるだろう。

しかし、改めて言えば、精密医療の適用範囲が直感的医療を上回るまでは、医療従事者が医療上の判断を下し、データを解釈し続ける。では、そうした転換の見通しはどうだろうか。

19世紀半ばまで、細菌やウイルスによる病気は直感的医療によって治療されていた。患者の症状の原因を特定できた人はいなかったからだ。その後、ルイ・パスツールら科学者が病原菌説を提唱し、顕微鏡が改良され、微生物の大きさや形が特定されるようになった。

過去1世紀の間に、病原菌に関する科学的理解は大きく進み、今ではあらゆるウイルスや細菌を迅速に診断し、特定できるようになった。これにより医療従事者は、直感的医療から精密医療へ移行し、病気を予測どおりに治す標準化されたプロセスを適用できるようになった。簡単で安価な方法によって、ポリオや天然痘などの致死的な病気を根絶してきた。さらに最近、研究者たちは発見したエボラウイルスに対して100%の予防効果をもたらすワクチンを。

いつの日か、人体の生化学や生理学について同じ水準の理解に達すれば、あらゆる疾患分類に精密医療が適用されるだろう。すべての病気の原因と進行を正確に特定できるようになり、機械は標準化された環境の中で、より自律的に稼働して、患者一人ひとりに必要な治療を的確に提供するようになる。

ルールに基づくプロセスが自動運転車の基盤を築いたように、ルールに基づく精密医療によって、医療における自動化された超高性能機械の重要性は着実に高まるだろう。感染症に抗生物質を処方されることは、すでに日常的なことに感じられる。いずれ患者は、機械が自分のケアを行うことにも同じような信頼を寄せるようになる。そして、病気への理解が進むにつれて、対面でのやり取りは必要性が低くなるだろう。

機械が医療従事者に取って代わるまでには、まだ時間がかかると考えるべきだが、進化を続ける医療分野には今後も新しい技術が導入されていく。その導入を歓迎すべきだ。直感的医療よりも精密医療を多く実践すれば、医療はより簡潔で、利用しやすく、低コストになる。患者の病気を正確に理解することで、医療を究極の目標である、最高品質の患者中心のケアへと一歩近づけることができる。

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