分散型製造は、 2015年の10の新興技術 の一つとして、 世界経済フォーラムの新興技術メタ評議会が注目する技術です。
分散型製造は、製品の製造と流通のあり方を根本から覆します。従来の製造では、原材料を集め、大規模な集中型工場で組み立て、加工して同一の完成品を作り、それを顧客に配送します。分散型製造では、原材料と加工方法が分散化され、最終製品は最終顧客のすぐ近くで製造されます。
分散型製造の基本的な考え方は、可能な限り、材料のサプライチェーンをデジタル情報に置き換えることです。たとえば椅子を製造する場合、木材を調達して中央工場で椅子に加工する代わりに、椅子の部品を切り出すデジタル設計図を、CNCルーターと呼ばれるコンピューター制御の切削工具を備えた地域の製造拠点に配布できます。部品はその後、消費者自身、または部品を完成品に仕上げる地域の製作工房が組み立てます。このモデルをすでに採用している企業の一つが、米国の家具会社AtFABです。
現在の分散型製造は、DIYの「メーカームーブメント」に大きく依存しています。この運動では、愛好家が地域にある自分たちの3Dプリンターを使い、地元の材料から製品を作ります。ここにはオープンソースの考え方もあり、消費者は自らのニーズや好みに合わせて製品をカスタマイズできます。創造的なデザインは中央主導ではなく、より多くの人々の参加を通じて生み出されるようになり得ます。製品は、構想や制作に関わる人が増えるにつれて、進化する性格を帯びる可能性があります。
分散型製造によって、集中型工場の余剰生産能力を減らし、資源をより効率的に利用できると期待されています。また、最初の試作品や製品を作るのに必要な資本が少なくなるため、市場参入の障壁も下がります。重要なのは、製造業全体の環境負荷を軽減できるはずだという点です。道路や鉄道、船舶で物理的な製品を運ぶ代わりに、デジタル情報をウェブ経由で送信し、原材料も地元で調達することで、輸送に必要なエネルギーをさらに減らせます。
分散型製造が広く普及すれば、従来の労働市場や製造業の経済構造を一変させるでしょう。リスクもあります。たとえば、遠隔地で製造された医療機器の規制や管理は、より難しくなる可能性があります。また、武器などの製品は違法または危険となり得ます。分散型製造ですべてを作れるわけではなく、最も重要で複雑な消費財の多くについては、従来の製造とサプライチェーンを維持する必要があります。
分散型製造は、スマートフォンや自動車のように、今日標準化されている製品の多様性を広げる可能性があります。規模は制約になりません。英国企業Facit Homesは、消費者の要望に合わせた住宅を、個別設計と3Dプリンティングによって建設しています。製品の機能は、さまざまな市場や地域に応じて進化し、従来の製造業が十分にサービスを提供できていない世界各地の地域で、商品やサービスが急速に増えていくでしょう。
2015年のリストに掲載されたその他の新興技術をご覧ください:
センス・アンド・アボイド機能を備えたドローン
デジタルゲノム
積層造形
人間の脳を模倣するコンピューターチップ
ゼロエミッション車
仕事を通じて学習するコンピューター
精密な遺伝子工学
埋め立て廃棄物を減らす新しい種類のプラスチック
次世代ロボット
このリストは、 新興技術メタ評議会が作成しました。同評議会は、以下の方々に謝意を表します。ジャスティン・カッセル(カーネギーメロン大学、人間とコンピューターの相互作用教授)、パオロ・ダリオ(ピサのサンターナ高等研究院、バイオロボティクス研究所所長)、ジュリア・グリア(カリフォルニア工科大学〔Caltech〕、材料科学・力学教授)、ジェニファー・ルイス(ハーバード大学工学・応用科学大学院、ハンスヨルグ・ウィス教授)。各氏は、グローバル・アジェンダ評議会ネットワークから参加しました。また、マイケル・ペリーニ( Foundation Medicine Inc.の社長兼最高経営責任者)は、 テクノロジー・パイオニアから参加しました。さらに、このリストの作成に多大な貢献をした、カーネギーメロン大学教授のウィリアム“レッド”ウィッテカーにも感謝します。
画像:フィリピン最大の電力会社メラルコの作業員が、2015年3月2日、マニラ首都圏トンドの住宅地に新しい送電線を敷設している。ロイター/ロメオ・ラノコ

