最高探査責任者(CXO)とは?世界にCXOが必要な理由を語るテンセントのデービッド・ウォーラースタイン

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  • Meet the Leaderは、世界経済フォーラムのポッドキャストです。世界を変える第一人者を取り上げ、効果的なリーダーが欠かせないと考える習慣や資質を紹介します。

  • テンセントの「最高探査責任者」であるデービッド・ウォーラースタインが、イノベーションへの投資で地球最大の課題にどう取り組めるかを語ります。

大企業には必ず最高経営責任者(CEO)がいます。最高財務責任者(CFO)や最高執行責任者(COO)を置く企業も多くあります。しかし、CXO、つまり最高探査責任者を置く企業はどれほどあるでしょうか。

デービッド・ウォーラースタインは、テンセントのCXOです。この独自の役割を担い、渋滞や都市の無秩序な拡大への対策に役立つ電動垂直離着陸機や、水管理の改善と気候変動への対処に役立つ人工知能など、世界を変える可能性のあるイノベーションを世界中で探しています。

Meet the Leaderは昨年5月、ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会でデービッド・ウォーラースタインに話を聞きました。ウォーラースタインは、テンセントでの独自の役割への取り組み方、変革の機会、そして欠かせないと考える習慣について語りました。以下にインタビューの記録を掲載します。

インタビュー記録

ロビン・ポメロイ(Meet the Leader):デービッド・ウォーラースタインさん、テンセントの最高探査責任者を務めていらっしゃいます。まず、テンセントについて一言で簡単に説明し、その後「最高探査責任者」とは一体何なのか教えてください。

デービッド・ウォーラースタイン:今日はお招きいただき、ありがとうございます。テンセントはグローバルなテクノロジー企業です。1998年に創業しました。中国を中心に、世界各地で大規模に事業を展開しています。中国でインターネットが普及し始めた頃に事業を始め、そこからあらゆる種類のテクノロジーを取り入れて成長してきました。

私は2000年にテンセントで働き始め、それ以来この会社に在籍しています。2014年に新しい肩書きを得ました。入社当初から経営陣の一員でしたが、当時まったく新しい肩書きだった「最高探査責任者(Chief eXploration Officer)」を名乗ることにしました。8年が経った今、多くの企業がこの肩書きを検討する価値は十分にあると考えています。

最高探査責任者という肩書きは、人類が直面する存亡に関わる地球規模の課題について考え、[そして]新たなアプローチを開発することを意味します。多くの場合、それは新しいテクノロジーや画期的なテクノロジーであり、人類がこうした大きな課題に取り組むための手段を増やすものです。

デービッド・ウォーラースタイン、テンセント最高探査責任者

最高探査責任者の仕事を説明するとすれば、私たちがこの役職を設けたのは、ESGやカーボンニュートラル、そして今年の世界経済フォーラムで議論されている多くのテーマについて、幅広い対話が始まる前のことでした。

そのため、私たちの取り組み方は、企業がESGに関わる一般的な方法とは少し異なります。要するに、最高探査責任者の役割とは、一方で人類が直面する地球規模の課題、そして存亡に関わる課題について考え、他方で、こうした大きな課題に人類が取り組むための手段を増やす新たなアプローチを開発することです。それは多くの場合、新しいテクノロジーや画期的なテクノロジーです。

たとえば、水不足のような大きな課題が迫っていると気づいたとします。そこで、「この課題に取り組むための選択肢を増やしてくれる新しいテクノロジーは何か。支援し、さらに開発して課題への対処に活用できるものは何か」と自問します。それが仕事です。

ロビン・ポメロイ:つまり、これまでできなかったことを可能にするイノベーションを探しているのですね。そして、ここで絶えず話題になっている環境・社会・ガバナンスを意味するESGの領域で、それを行っている。ESGに懐疑的な人は、企業の目的は利益を上げることだと言うでしょう。通常、あなたの立場にいる幹部なら、次の大きな存在となり、大きな利益をもたらす新興企業を探すのではないでしょうか。そうなれば、あなたも歓迎するでしょう。ですが、先ほどのお話からすると、企業は利益を上げて成長しながら、環境・社会・ガバナンスの課題に役立つ成果も実現できると考えているのですね。

長い目で見たとき、地球上で最も価値あるものは何であるべきかを考えると、それは最大の課題を解決するもののはずです。

デービッド・ウォーラースタイン、テンセント最高探査責任者

デービッド・ウォーラースタイン:そのとおりです。この戦略の核心には、イノベーションと画期的なテクノロジーを取り入れることがあります。地球規模の広い視点から考えてみてください。長い目で見て地球上で最も価値あるものは何であるべきか。それは最大の課題を解決するもののはずです。

世界で最も価値の高い企業を見ると、人類にとって非常に重要なニーズを解決している企業が多くあります。大切なのは、先を見据えることです。遠すぎず、しかし十分に先、たとえば5年、10年、15年後を考える。人類が今直面している、あるいは人々がまだ気づいていなくても確実に深刻化する課題のうち、市場が手つかずのままで、重大なリスクをもたらし、画期的なテクノロジーで対処できるものは何でしょうか。画期的なテクノロジーがあれば、そうした課題への取り組み方を根本から変える機会が得られます。そして、テクノロジーや投資を通じてその価値を取り込めば、こうした戦略が成功した場合、たとえば株主として関連企業の株式を保有する私たちも、その評価額を高める機会を得られます。非常に有望な事業になり得ますし、実際にそれが有望な事業となった例もあります。

世界経済フォーラムは、持続可能で誰もが利用できるモビリティシステムをどのように推進しているのでしょうか。

世界経済フォーラムのモビリティの未来を形作るプラットフォームは、航空宇宙・ドローン、自動車・新たなモビリティ、航空・旅行・観光、サプライチェーン・輸送の4業界にまたがって活動しています。モビリティの未来を安全でクリーン、かつ誰もが利用できるものにすることを目指しています。

お問い合わせください。参加方法など、詳しくご案内します。

ロビン・ポメロイ:次にお聞きしようと思っていた質問です。ありがとうございます。実際に取り組んだ例や、今後取り組みたい例をいくつか教えていただけますか。

デービッド・ウォーラースタイン:もちろんです。企業として、私たちは創業初期の企業に投資しています。シード段階で、数人の社員しかおらず、少額の資金を調達している会社もよくあります。この投資の世界では、数十万ドルは少額と見なされることがよくあります。私たちはそうした投資案件を検討し、かなり頻繁に投資しています。

ロビン・ポメロイ:どのような分野ですか。

デービッド・ウォーラースタイン:基本的には、あらゆる新しいテクノロジー分野です。私のチームではディープテックに注力しています。私が現在テンセントで運用しているポートフォリオには約70社あり、そのほぼすべてが何らかのディープテックに取り組んでいます。半数ほどは健康関連のテクノロジー、つまり人々の健康に関わる課題に取り組んでいるでしょう。

ロビン・ポメロイ:ディープテックとは何ですか。

デービッド・ウォーラースタイン:ディープテックとは、ソフトウェアだけにとどまらないアプローチを開発することです。人工知能のように、非常に新しい形態のソフトウェアもディープテックに含まれると考えています。ただし、手法や方法論、知識が社会に広く普及していくと、やがて一般的なテクノロジーになります。今なら、スマートフォン向けのモバイルアプリを作ること、たとえばホテルを予約するアプリなどは、ディープテックとは言えないでしょう。広く理解されているテクノロジーです。しかし、20年前ならディープテックに分類されていたかもしれません。

現在のディープテックは、コンピューターサイエンスの分野なら、AIの新たな突破口となる領域や、通常は非常に大規模なスーパーコンピューターを必要とする新しい気候予測などが考えられます。ほかにも非常に多くの例があります。

ロビン・ポメロイ:気候変動は、注力している主な分野の一つですか。それとも、最も重要な分野でしょうか。

デービッド・ウォーラースタイン:非常に重要な分野です。ただ、この探査の枠組みでは、複雑さに向き合うことをいといません。根本原因に目を向け、それを解決しようとしているからです。気候変動のような問題について考えるときは、なぜ気候変動をめぐる課題が生じているのかを自問しなければなりません。それは、人間が生存に欠かせない基本的なニーズを満たそうとしているからです。その核心は食料、エネルギー、水で、私たちはこれを「FEW」と呼んでいます。こうした生存に必要なものを得るために、実際にはあまり持続可能でないプロセスやエネルギーを使っています。

たとえば、家を暖めるために化石燃料を使う必要があるのは、よく理解できます。暖かく過ごしたいですし、寒さはとてもつらいものです。快適でないときにはエアコンを動かしたい。これらは解決すべき人間の基本的なニーズです。しかし、その満たし方が間違っており、使っているシステムの設計にも欠陥があるため、大量の廃棄物が生まれています。では、どうすれば、たとえば空間を暖かく、あるいは涼しく保ち、必要な食料を供給しながら、強い汚染を引き起こさない、強靱な方法で基本的なニーズを満たせるでしょうか。私たちは今日のニーズを満たすのに、100年前のテクノロジーを使っているのです。100年前、地球の人口はわずか20億人でした。当時は新しい発想だった石炭火力発電所が、地球にとってそれほど危険になるとは思われていませんでした。

最初の石炭火力発電所や最初の内燃機関自動車を作ったとき、それが次々と生産されるのか、人々が内燃機関車を買うのかは分かりませんでした。100年前には、馬を買うか、T型フォードのような内燃機関車を買うかを決める時代がありました。値段はほぼ同じでした。やがて人々は内燃機関車を選びました。その結果、地球上では毎年1億台の内燃機関車が販売され、大量の汚染を生み出しています。100年前に20億人だった人口は、今では80億人近くになりました。人口が大幅に増えただけでなく、エネルギーや交通など、ニーズを満たす手段も大きく増えました。その結果、深刻な汚染が起きています。その大きな要因の一つがCO2などの温室効果ガスです。CO2だけでなく、メタンなども含まれます。

私たちが解決しようとしているニーズ自体は正当なものだと認識しなければなりません。自動車のような用途は素晴らしい発想です。問題は、こうした燃料を使い、世界の一地域から別の地域へ燃料を運ぶサプライチェーンを構築し、車に供給するといったシステムの設計にあります。電気自動車に見られるように、もっと効率的な方法はたくさんあります。つまり、現在の規模に合わせて、より賢い仕組みに再設計しながら、人間のニーズも認めていくことが大切なのです。

気候変動をめぐる議論が重要なのは明らかです。排出量を削減するために、もっと多くのことをしなければなりません。しかし、人間の基本的なニーズを満たそうとしていること、しかもそれを世界規模で行おうとしていることも無視できません。人々を貧困や飢餓から救い出そうとしていますし、食料安全保障の課題も迫っています。問題の一面だけを解決しようと視野を狭め、誰もが1日1,500カロリーを必要とし、肥料が必要で、こうしたニーズに対処しなければならないという全体像を忘れるわけにはいきません。より賢い仕組みに再設計する必要があるのです。

ロビン・ポメロイ:こうした問題に対処するため、どのような有望な方法を探っていますか。電気自動車についてはよく知られています。「馬を買うか、T型フォードを買うか」という例えは興味深いですね。今、新車を買える幸運な人たちは、プラグイン車を選ぶべきか、そこで使う電気が再生可能エネルギーから作られているかを考えるのでしょう。こうしたものの多くはすでに技術として実現しています。ですが、あなたが世界各地で探っているもののうち、私が知っているようなありふれた例を超えるものはありますか。燃料、エネルギー、水など、どの問題でも構いません。特に期待を感じるテクノロジーはありますか。

より良い方法で、より強靱に、より賢く取り組める新たな機会が数多く生まれています。環境への負荷をゼロに、あるいは想像し得る限り最小限に抑えることも可能です。

デービッド・ウォーラースタイン、テンセント最高探査責任者

デービッド・ウォーラースタイン:今の歴史的な局面で、私たちは現在のシステムを置き換え、人類が過去100~200年にわたって実現してきた種類のイノベーションを続けることに重点を置いています。ただし、より強靱な方法で行うのです。とはいえ、時には少し退屈に感じることもあります。電力源は人々をあまりわくわくさせません。石炭火力発電所から太陽光発電所や風力発電所に移行しても、実現できたのは良いことです。しかし、結局は以前と同じ場所にたどり着いたようなものです。それでも、これらは重要なイノベーションであり、私たちの取り組みの大部分はこの分野にあります。

しかし、より良い方法で、より強靱に、より賢く取り組める新たな機会が数多く生まれていると思います。環境負荷をゼロに、あるいは想像できる限り最小限に抑えられ、現在の方法よりも純粋に優れたアプローチです。

E-VTOL

一例として、過去5年間、私が多くの時間を費やしてきたのが電動航空機、なかでも電動垂直離着陸機(E-VTOL)です。この言葉を聞いたことがなければ、ぜひ調べてみてください。

ドローンと空飛ぶタクシー専用の空港が英国に開設予定
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01:26

E-VTOLでは、電気自動車と同じようなバッテリーで航空機を充電できます。機体は騒音を非常に抑えて垂直に離陸でき、汚染もありません。電気自動車を考えてみてください。走行中に汚染物質を排出しません。もちろん、再生可能エネルギーで充電する必要があります。そして、地上の交通渋滞などを避けながら、数百キロ先まで素早く飛び、目的地に着陸できます。目的地は道路の終点でなくても構いません。山頂や丘の上でもよいのです。

これにより、許可を得て着陸できる場所なら、地図上で指定したほぼあらゆる目的地へ人類が非常に速く移動できるようになります。過去100年で私たちがすっかり慣れ親しんだ地上の乗り物、自動車を超える、次世代の交通手段だと感じます。効率の面で言えば、機体を造り、着陸場所を整備するだけでよいのです。広い場所は必要ありません。機体を充電できますし、電気はどこにでもあります。接続インターフェースで機体に電力を供給すれば、飛行できます。インフラとなるのは空です。

私は、特に途上国におけるこのテクノロジーに大きな関心があります。地球上では道路インフラに年間1兆ドルが投資されています。これは世界最大の投資分野です。医療でも発電でもありません。もちろん、発電については多くの報道がありますし、各国の医療予算が莫大だと感じている人も多いでしょう。しかし、人類にとって最大の投資分野は道路インフラで、年間1兆ドル以上にのぼります。汚染を引き起こし、そこに多くの資源が投入されているのは明らかです。そこで、地球上をより速く移動して目的地に早く着き、渋滞を避けるだけでなく、資源の使用も減らせる、根本的に優れた新しいインフラをどう実現できるかと考えています。航空機に使うのは再生可能エネルギーだけです。インフラは空で、あとは着陸すればよい。人類がより魅力的で、可能性を広げ、資源効率の高い方法で前進していく、こうした例が私は大好きです。

ロビン・ポメロイ:途上国についてのご指摘はとても興味深いですね。空飛ぶ車や空飛ぶタクシーの動画をよく制作しますが、皆さん大好きです。一方で、「これは富裕層のおもちゃだ」という見方もあります。おっしゃるように、富裕層のおもちゃにもなり得ますが、道路がまったくない地域で、人や物資を必要な場所へ運ぶ用途もありますね。

ゼバ・エアロ・ゼロ:垂直飛行車
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01:20

デービッド・ウォーラースタイン:まったくそのとおりで、その観点からも非常に期待できます。交通インフラの実現に必要な総投資額を考え、システム全体のコストを合算すれば、実際にどれほど資本効率が高いかが分かります。そこで次の問いは、これを世界規模で実現できるか、なぜもっと世界的なものだと見なされていないのか、ということです。事例を示し、世界のさまざまな地域と連携して説明すれば、認識は変わると思います。

同時に、新しい航空機のようなハードウェアを買うには高額な費用がかかるのも事実です。では、最初に誰が費用を負担するのでしょうか。テクノロジーはそのようにして発展していきます。テスラはまず、高価格帯の市場向けにモデルSやモデルXを発売し、その後にモデル3を出しました。今後、より手頃な車をどこまで展開するかは分かりません。そして今では、世界各地でより手頃な車種をそろえるEV業界全体が成長しています。市場の仕組み上、最初はしばらく高価格帯から始まるかもしれません。しかし、長い目で見れば、とりわけ途上国にとって、地球にとってはるかに効率的な交通テクノロジーになるはずです。

同時に、途上国では人々がより速く、より効率的に移動できるようになります。なぜ渋滞に巻き込まれるのでしょうか。交通量が少ない地域でも、移動に欠かせない橋を架けなければならないのはなぜでしょうか。こうした技術は、人々にとってより良い体験をもたらします。途上国では、人々は固定電話のダイヤルアップや大型で扱いにくいコンピューターを経ず、いきなり携帯電話を使うようになりました。既存の段階を飛び越えることは可能です。このテクノロジーが私にとって非常に魅力的なのは、途上国にとって根本的に優れた仕組みへ飛躍できるからです。

水不足

ロビン・ポメロイ:私がもう一つ強い関心を持っているのは水不足です。あなたが関わった「Day Zero」という映画について教えてください。どんな映画で、どのように関わったのですか。

デービッド・ウォーラースタイン:「Day Zero」の制作を始めたのは2017年です。世界的な水危機を扱った、非常に深刻なドキュメンタリー映画です。水危機は次のように説明できます。気候変動により、地球上で降水パターンが変化しています。干ばつが起きる地域もあり、世界各地の農業地域が深刻な干ばつに直面しています。一方、別の地域では洪水が発生し、水が多すぎる状況です。そうした洪水が農業地域を襲うと、別の種類の負荷にも直面します。農業生産はあらゆる方面から課題にさらされることになります。

この映画は、非常にグローバルな視点から、この新たな力学を説明しようとしています。米国や世界のどこかの地域だけを描いた物語ではありません。世界全体の物語です。そして、気候変動が起きると、世界各地で気候パターンや降水パターンが劇的に変化することを、観客に理解してもらおうとしています。

この映画は非常に真剣な内容です。気候変動を扱うドキュメンタリー映画が、こうした重要課題に焦点を当てて真剣に取り組んだのは新しいことだったと思います。現在、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドではAmazon Primeで、また世界各地の多くの放送局で視聴できます。テレビ局で放送されることもよくあります。ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。

ロビン・ポメロイ:水不足について、解決策は何だと思いますか。役立つ技術はありますか。ある国が何百年、何千年も続けてきた方法で水を得られなくなったら、できることはあまりないのではないでしょうか。

農業とエネルギーにおける人工知能

デービッド・ウォーラースタイン:実際、できることはたくさんあると思います。これは、私たちが大きな関心を寄せている別のイノベーション分野、人工知能にも関係しています。

説明しましょう。昨年、私たちは『地球の再設計:食料、エネルギー、水のための人工知能』という本を出版しました。実は中国で中国語版を出版したもので、英語版はまだありません。本書の前提は次のとおりです。先進国でも発展途上国でも、世界のほとんどの国では、水の大半が農業に使われています。国の水使用量の最大70%が農業に回る場合もあります。また、国の電力部門の状況にもよりますが、さらに40~70%、おそらく40%ほどが発電に使われています。

たとえば米国では、国内の水の約80%が農業システムを通り、そのうち約40%、さらに別の約40%がエネルギーシステムを通っています。これは火力発電の仕組みによるものです。火力発電では、水が流れる間に熱を加え、その力でタービンを回してエネルギーを生み出します。原子力発電も同じ仕組みです。そこで、人工知能を使って農業システムとエネルギーシステムに必要な量だけをより正確に供給できれば、これらの部門が使う水を大幅に減らせます。特に農業で効果があります。

世界各地で、農地に人工知能を導入すると、必要な水の量を最適化でき、植物の健康状態が改善することがよく分かりました。つまり、農家は通常、植物に水をやりすぎているのです。センサーなどの人工知能技術を使えば、植物に届ける最適な水量を正確に把握できます。たいていは水が多すぎるのです。植物の健康状態を最適化しようとする戦略の多くでは、結果として水の使用量を20~40%削減できます。

国や地域で使われている水の40~70%について、20~40%の削減ができるとしましょう。それは大きな効果です。「農業には食料を育てるためにこれだけの水が必要だ。どうしようもない」と考える必要はありません。そういう話ではないのです。植物の健康状態を最適化しよう、ということです。人工知能のような技術を使って、植物から最大限の力を引き出す方法を正確に理解しよう、ということです。植物は大切ですよね。水をやりすぎたいわけではありません。同時に、水を節約できます。

これは非常に重要な考え方ですが、政府や農業省はまだ十分に受け入れていないと感じています。

こうした技術の導入には費用がかかります。ノウハウも必要です。一定の設備投資や導入コストが生じる場合もありますが、全体から見れば非常に低コストの技術です。効率性、資源効率、節約や保全を、非常に速く効率的に動くソフトウェアを通じて実現するという考え方は、レジリエンスを高め、気候目標に取り組む戦略として、まだ十分に評価されていないと思います。

さらに言えば、食料、エネルギー、水の間には強い関係があります。先ほど述べたように、水はエネルギーに欠かせない要素です。農地で水をくみ上げるにはエネルギーが必要です。このように、これらの分野は互いに深く結びついています。知能を活用して三つすべてを一体的に最適化し始めれば、地域全体に大きな効果をもたらせます。たとえば、畑に水をくみ上げる必要がなくなったとしましょう。エネルギーも節約できます。つまり、電力網の需給バランスにも貢献し、使う電力が減ります。

地域の石炭火力発電所をなくして、太陽光や風力に置き換えられれば、水をまったく使わないエネルギー源になります。水の輸送について計算したり、あれこれ考えたりする必要はありません。エネルギーが水を必要としなくなるからです。その水をすべて別の用途に回せます。この三つを組み合わせて考えると、とても興味深く、地域や社会のレジリエンスを高めることができます。この考え方が世界各地でもっと議論されることを願っています。

ロビン・ポメロイ:では、ご自身について教えてください。手元の記事では、あなたを「カリフォルニア州パロアルトを拠点とする、ギターを弾くヴィーガン」と紹介しています。カリフォルニア州パロアルトを拠点とするギターを弾くヴィーガンが、どうして中国の巨大テクノロジー企業の幹部になったのでしょうか。

デービッド・ウォーラースタイン:ええ、どちらも当たっていると思います。うわさを認めましょう。本当です。ただ、先ほど言ったように、私は2000年からテンセントに勤めています。1994年から中国に断続的に住んでいますし、米国にも住みました。1980年代後半から1990年代初めごろには、しばらく日本にもいました。若いころから人生の長い時間を、アジアで過ごしてきました。高校時代にも日本や中国にいましたし、その後はもちろん米国、さらにほかの西側諸国でも過ごしました。

テンセントで22年間働いてきましたが、入社した当時、社員は45人でした。今では本当に家族のようなものです。創業当初からいた幹部の多くが、今も一緒に働いています。会社全体に深い人間関係があります。

中国は常に世界のさまざまな考え方を積極的に取り入れ、西洋の考え方と中国の考え方をどう組み合わせれば最善の発展につながるかを考えていると、私は感じてきました。チームの中で、難しい課題を提起したり、型にはまらないやり方を試したりすることも、いつも歓迎されていると感じてきました。

中国語を話し、読み書きもできることは、きっと役立っています。中国での社内業務では、中国語を使うことがよくあります。

それから、先ほど触れられた「ギターを弾くヴィーガン」の話になります。中国の企業文化、少なくともテンセントの社風には、とても興味深いところがあると思います。私たち自身の個人的な習慣などにも、以前から強い関心を持っているのです。私がギターを弾くと分かると、イベントを開きたい、何ができるのか見てみたいと言われます。そして人前で演奏する機会を作ってくれます。

ヴィーガンであることについても、聞かれると話が弾み、皆が興味を持ってくれます。中国市場はイノベーションや新しいアプローチに強い関心を持っていると感じました。CXOとしての役割を通じて、テンセントの社内だけでなく中国市場全体に新しい考え方や発想を広げられるよう、できる限り取り組んでいます。それも私たちの責任だと思います。ただ、個人的な趣味などが話題に加わることもあるのでしょう。

ロビン・ポメロイ:では、ダボスにギターは持ってこなかったのですか。

デービッド・ウォーラースタイン:持ってきませんでした。来年ですね。招待されたら、会場を盛り上げます。いつでも声をかけてください。

ロビン・ポメロイ:ベースで参加してもいいですか。

デービッド・ウォーラースタイン:もちろんです。冗談でしょう?ダボスにはヘビーメタルバンドが必要かもしれません。世界では緊張が高まっていますから、ここで発散する場が必要です。ほとんどの人はネクタイを締め、ジャケットを着ています。でも会場を出るとすぐ、Tシャツに着替える人が多い。少し肩の力を抜けるような一面があってもいいかもしれません。

ロビン・ポメロイ:リーダーとして、これだけは欠かせないという習慣は何ですか。どんな前向きなことをしていますか。

デービッド・ウォーラースタイン:自分自身の、リーダーとしての習慣ですか。

ロビン・ポメロイ:あなたに役立っていて、ほかの人にも役立つかもしれないものです。

デービッド・ウォーラースタイン:自分自身の経験から言うと、私は今まで25年間働いてきて、そのうちテンセントでは約22年になります。今は経営陣の一員で、当然ながらリーダーとしての責任も担っています。では、何がその歩みを支えてきたのでしょうか。

良い面でも悪い面でも、その答えはかなり明確です。絶え間なく働くことです。ただ、自分が好きなことに取り組んでいれば、仕事をしている感覚はありません。率直に言うと、私のCXOとしての役割は、実際の仕事として説明しようとしていますし、8年目を迎えた今も本当の仕事であってほしいと思っています。でも実際には、使命のようなものです。常にそのことを考えています。

だから私は、ESGという言葉を使うのが好きではありません。こうした概念が業界に少し押しつけられていると感じることがあるからです。これは良い方向への働きかけではあります。しかし、人々が「カーボンニュートラルに取り組まなければならないと言われている。皆が使っている言葉を調べて、それを繰り返さなければ」と反応することもあります。けれども、世界で実際に起きていることは非常に複雑です。それを本当に掘り下げるには、使命として捉え、常に考え続けることだと思います。

四六時中働くこと、と言おうと思いました。でも、仕事を仕事のように感じるべきではありません。私たちが直面している課題に心から関心を持ち、実際に技術を使ってその課題に取り組んでいる、という感覚であるべきです。そして、そうした企業を育てようとしています。スタートアップ企業は倒産の危機にさらされることも多いですが、世界に役立つ新しい解決策を生み出す機会を得られるよう、支援するのです。

仕事を使命として捉えること。使命を通じて取り組むうえで、人を大切にすることを根本的な価値とすること。

デービッド・ウォーラースタイン、テンセント最高探索責任者

つまり、二つの答えですね。仕事を使命として捉えること、そして使命を通じて取り組むうえで、人を大切にすることを根本的な価値とすることです。どのような表現であれ、毎日何をしているのであれ、常に人々のために働いているのですよね。そして、心から打ち込み、情熱を注いでいるなら、朝から晩まで働き、そのことを常に考えるのも苦ではありません。そこにたどり着くための使命がすべてだからです。

デービッド・ウォーラースタインの論考を読む:私たちの最大の課題:2050年までに人類100億人を受け入れるための地球再設計

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