企業が存続し、成長するためには、イノベーションが不可欠です。
革新的な企業は、今日の変化の激しいビジネス環境の変化に対応できます。革新的な企業が集まる国や地域は、繁栄する傾向にあります。
企業や経済にとってイノベーションが重要であることに異論はほとんどありませんが、それをどのように促進するかについては見解が分かれています。これまで、税制優遇から特許保護、競業避止契約の制限まで、 さまざまな政策 が試みられてきました。
私の研究では、イノベーションを促進する有効な方法を特定しました。それは、企業取締役の視点に、非財務的ステークホルダーの利益を含めることです。
企業幹部が株主の利益だけでなく、従業員、地域社会、顧客、環境の利益も考慮できる場合、こうした経営者はリスクを取り、長期的な視点で考える可能性が高まります。これらはイノベーションのプロセスにおける必要な第一歩です。
自然実験が明らかにしたこと
同僚であるウェスタンオンタリオ大学のキャロライン・フラマーと私は、約30年前に米国の半数を超える州で始まった自然実験を分析し、この結論に至りました。
1980年代から1990年代にかけて、全米各州の議会は、いわゆる「利害関係者法」を可決しました。
これらの法案により、該当する州に本社を置く企業の取締役や経営者は、非財務的ステークホルダーの利益を考慮する法的権利を得ました。これまでに34州で法令が制定されています。
法制定のきっかけとなったのは、1980年代に始まった 敵対的企業買収の波 でした。こうした友好的でない買収は、しばしば株主に巨額の利益をもたらす一方、従業員や地域社会などの利益を損ないました。しかし、株主至上主義のモデルでは、ステークホルダーと株主の利益が衝突する場合、後者が優先されました。法令の制定前は、取締役が利益の大きい買収提案を拒めば、訴訟を起こされる可能性がありました。
私たちは、利害関係者法を採択した34州と、同様の法律を制定しなかった州の、 上場企業を調査しました。
一方のグループがもう一方より革新的かどうかを判断するため、企業に付与された特許を分析し、特許数と特許の質に関するパターンを調べました。また、法令の制定前後における各州の特許活動も調査しました。
特許の増加とその他の好影響
利害関係者法の存在が、実際に特許数の大幅な増加につながったことが分かりました。また、利害関係者法を採択した州の企業では、特許1件当たりの引用数も顕著に増加しました。引用数は、特許の質と独創性の双方を示す重要な指標です。これらは、企業内部で起きていたことが、漸進的な改良にとどまらない、より抜本的なイノベーションだったことを示しています。
また、利害関係者法が、企業が誰の利益を代表するかという姿勢にどのような影響を与えたのかも詳しく調べたいと考えました。そのため、投資家向け助言会社である Kinder, Lydenberg and Dominiが作成したデータベースを利用しました。同社は、社会的基準に関する企業の行動について情報を集めています。
このデータを分析したところ、利害関係者法は、従業員、自然環境、顧客、社会全体の利益を重視する企業の姿勢に、顕著なプラスの影響を与えていました。こうした企業は、地域社会や環境のために資源を配分したり、従業員の労働条件を改善したりする傾向が高まりました。
収益にもプラス
最後に、利害関係者法と企業業績との関係を検証しました。
利害関係者法の制定後、企業業績は短期的には低下したものの、長期的には、同法を制定した州の企業の業績は改善しました。この結果は、企業のリーダーが短期的な利益を生み出す必要に縛られなければ、より長期的な視点を持てるという考えと一致しています。
取締役が株主以外のステークホルダーの利益も考慮できるようになると、その企業はより革新的になり、最終的には収益性も高まります。
経済成長を促し、企業の福利を高めたい政策立案者にとって、利害関係者法、あるいは企業リーダーの姿勢を変えるその他の施策は、取り組みを始めるうえで有効です。
この記事はもともと The Conversationに掲載されました。 元の記事をお読みください。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:アレクサンドラ・カクペルチクは、マサチューセッツ工科大学の起業学教授です。
画像:ベルリンのコワーキングスペース、Wostelのスタートアップ企業のオフィスで働く、英国出身のEmma Roseとスウェーデン出身のNils Westerlund。REUTERS/Thomas Peter。

