広告の核心は、人々に即座の判断を促すことです。私たちは15秒間、ひとつの映像を見せます。その映像に心を揺さぶられ、強く訴えかけられ、行動を促されて、ブランドを好きになり、行動を起こし、新たなことに挑戦してほしいのです。
そう考えると、即断をなくし、偏見に立ち向かう手段として広告に期待するのは、腑に落ちないように思えるかもしれません。それでも広告は、私たちが持つ最も強力な手段のひとつです。
熟練した広告主には、固定観念を形作ることも打ち破ることもできます。また、コミュニケーション業界は、人々が周囲の人々を見る目に大きな影響を与えます。だからこそ、私たちアド・カウンシルは、世界的な大手ブランドの連合や個々の非営利団体と連携し、Love Has No Labels キャンペーンを立ち上げました。広告とコミュニケーションを活用して、無意識の偏見を取り除く取り組みです。
そこで、国際ゼロ差別デーを迎えるにあたり、偏見の解消に広告がどう役立つのか、詳しく見てみましょう。
無意識の偏見とは?
友人、近所の人、同僚から無作為に何人かを選んでみても、人種差別主義者、性差別主義者、あるいはあからさまな差別をする人だと自認する人は、まずいないでしょう。パーセプション・インスティテュートによると、米国人の大多数は、自分に偏見はないと考えています。
しかし、目を背けられない事実があります。米国のヒスパニック系住民の52%は、人種や民族を理由に差別を受けたり、不公平な扱いを受けたりしたと報告しています。アフリカ系米国人は、米国人口のわずか13%、月ごとの薬物使用者として報告された人の14%を占めるにすぎませんが、薬物関連犯罪で逮捕された人のうち37%を占めます。LGBTの若者の約86%が、学校でいじめや嫌がらせを受けたと報告しており、一般人口の27%と比べて高い割合です。
考え方と行動のこうした隔たりは、何によって生じるのでしょうか。その多くは、私たちの潜在意識に起因します。実際、思考の98%は潜在意識のうちに行われており、無意識の偏見はそこに蓄積されます。
脳は、素早く行動し反応できるよう、思考の近道を作ります。私たちは常に、そうした近道を脳に作らせるメディアの映像にさらされています。また、多くの人は、自分と似た人が大半を占める地域に暮らし、学校や施設に通っています。見直すきっかけがなければ、脳に刻まれた固定観念は無意識の偏見となり、やがて差別につながりかねません。
夢からスクリーンへ
コミュニケーションの力を知るために、この10年間でLGBTの受容をめぐる世界の議論がどう変化したかを見てみましょう。
多くの人は、テレビ番組「ウィル&グレイス」が、同性婚の平等を求める動きが高まるまでの数年間に、人々の心や考え方を根本から変えたと評価しています。この番組の人気のおかげで、米国民の多くが、愛らしく立体的に描かれたウィルという人物に触れました。多くの視聴者にとって、固定観念に頼らずに描かれたゲイ男性を目にするのは初めてでした。
「ウィル&グレイス」は始まりにすぎませんでしたが、米国初のLGBTのための、そしてLGBTを題材とするテレビネットワーク「Logo」や、ほかの人気シリーズが登場する道を開きました。たとえば、「モダン・ファミリー」、「ル・ポールのドラァグ・レース」、「トランスペアレント」、そして、そう、「ウォーキング・デッド」です。「スター・トレック」では、スールーがカミングアウトする展開もありました。
GLAADによると、現在、脚本のあるテレビ番組に登場する895人の登場人物のうち、4.8%がLGBTQであることを公にしています。これは同団体の調査で過去最高の割合です。無意識の偏見をなくすには、身近な人々だけでなく、テレビやその他のメディアに映る私たちの姿も重要です。「ウィル&グレイス」の終了からわずか10年後、米国最高裁判所は、レズビアンやゲイのカップルを支持し、同性婚の平等を認める判決を下しました。「ウィル&グレイス」の終了からわずか10年後、米国最高裁判所は、レズビアンやゲイのカップルを支持し、同性婚の平等を認める判決を下しました。

無意識を意識する
こうしたコミュニケーション手法の力を認識した私たちアド・カウンシルは、人種、宗教、ジェンダー、性的指向、年齢、能力にかかわらず、無意識の偏見をなくすキャンペーンが必要だと考えました。非営利団体、企業、メディアの各パートナーと連携して始めた「Love Has No Labels」は、公共広告としてスタートしました。この映像は、実際の観客の反応を捉えました。多様なカップルや友人、家族がX線スクリーンの背後から姿を現す場面です。この動画は世界で1億6,400万回以上再生され、2015年にYouTubeで2番目に多く視聴された動画となりました。
なぜ観客はこの映像に引きつけられたのでしょうか。予想を裏切りながら、説教じみたところがなかったからかもしれません。カップルの骨格を見ると、実際にはどんな姿なのかを、頭の中で自動的に補ってしまいます。その思い込みが覆されると、はっとさせられます。日々使っている無意識の思考の近道を、自覚できるようになるのです。
この手法を発展させ、わずか2週間前のバレンタインデーに、新たな作品「Love Has No Labels:愛のファンたち」を公開しました。スポーツアリーナでおなじみのキスカメラを題材に、登場する人々の多様さで驚かせる一方、表現される無条件の愛に共通するものがあると伝えています。以下からご覧ください。さらに、自分自身の偏見を確かめるクイズに参加できます。
広告主にできることは?
プロのコミュニケーション担当者は、イメージを使って連想を引き起こす仕事をしています。もちろん問題は、どのイメージにも、多様な潜在的連想が無数に結びついていることです。イメージに対する反応は人によって大きく異なるため、一部の広告は意図せず、否定的な固定観念を広めてしまうことがあります。
ユニリーバの最高マーケティング責任者キース・ウィード氏は最近、社内調査を公表しました。それによると、ユニリーバの広告で権力ある立場に女性が登場するものはわずか3%、女性を知的に描くものは2%、ユーモアのセンスがある女性を描くものは1%でした。世界最大級の広告主のひとつがこの事実を率直に認めたことは、勇気ある行動でした。さらにウィード氏は、比率を変え、広告で力強い女性を積極的に取り上げる新たな取り組みを始めました。全米広告主協会と連携し、ユニリーバは先進的な「#SeeHer」キャンペーンを立ち上げ、広告における女性の描写をより正確にすることを約束しました。
コミュニケーション業界は、社会の寛容さを高めるうえで重要な役割を担っています。固定観念に基づくイメージを流せば、偏見や差別を広めてしまいます。より豊かな発想に基づく、真実味のあるイメージを生み出せば、議論の流れを変え、最終的に偏見や差別を減らす助けになります。

