人工知能(AI)の分野はあまりにも急速に進展しているため、専門家でさえ、動向を把握するのに苦労している。では、これから訪れる劇的な変化を、私たちはどうすれば理解できるのだろうか。
AIの現状をより明確に把握するため、スタンフォード大学が主導するチームが、この分野の活動と進展を追跡する初のインデックスをまとめた。
初のAIインデックスは冒頭で、「AI技術の現状を考察するために必要なデータがなければ、AIに関する議論や意思決定において、私たちは事実上『計器なしで飛んでいる』ようなものだ」と読者に伝えている。
初の年次報告書は、スタンフォード大学のAIに関する100年研究(AI100)の一環であり、AIが人々の暮らしに及ぼす影響を調べる100年にわたるプロジェクトである。
インデックスの主な調査結果をいくつか紹介する。
AIへの関心が高まっている

AIを扱う学術論文の発表数は大幅に増加した。2016年の論文数は20年前の9倍に達し、2万本に迫った。
若者はAIに期待を寄せている
大学でAIを専攻する学生が増えており、若者がAIを自分たちの未来に欠かせないものと考えていることは明らかだ。
AIを学ぶためにスタンフォード大学、バークレー校、ジョージア工科大学など米国の大学に進学する学生の数は、この10年間で急増した。

就職においても、AIの学習は役立つ可能性がある。この分野のスキルを持つ人材を求める雇用主が増えているからだ。世界的な求人サイトMonster.comの分析によると、AIの主要な構成要素である機械学習と深層学習のスキルを求める求人は、過去1年間で2倍以上に増えた。

求人サイトIndeed.comによると、英国、米国、カナダではいずれも、AIスキルを必要とする求人が増加している。

投資家がAIに資金を注ぎ込んでいる
こうした雇用の多くはスタートアップによって生み出されている。投資家から資金を得ることで、企業は事業を拡大できる。そして投資家はAIに強気だ。
ベンチャーキャピタルによるAIスタートアップへの投資額は、2000年以降6倍に増えた。

一方、AIシステムの開発に取り組むスタートアップの数は、2000年以降14倍に増加した。

ロボットに仕事を奪われるのか?
自動化が職場を一変させるという点では多くの人の意見が一致しているが、労働市場がどの程度影響を受けるかについては、まだ結論が出ていない。
自動化がすでに進んでいる兆候がある。世界全体では、ロボットの輸入台数が2000年の約10万台から、2015年には約25万台に増加した。米国での増加は比較的緩やかだが、それでも大幅な伸びだ。

私たちはAIをどう感じているのか?
私たちはAIをどう感じているのか?全体として、メディアの報道は否定的なものより肯定的なものがはるかに多い。しかし2016年後半には、肯定的な記事が減る一方で、否定的な報道がやや増加した。

AIはどれほど賢いのか?
このインデックスによると、AIシステムは特定のタスクで高い性能を発揮する傾向がある。たとえば1997年、IBMのディープ・ブルーはチェスのチャンピオン、ガルリ・カスパロフに勝利した。
しかし、会話を解釈する試みのなかには問題が生じたものもある。AIプログラムが人間から人種差別や性差別などの偏見を学習してしまったのだ。
近年では、医療分野で目覚ましい進展が見られる。2017年の研究では、AIは皮膚がんの症状を認識できることが示された。その精度は皮膚科医と同等だった。
AIインデックスは幅広い領域を扱っているものの、急速に発展しているAI分野の一つであるチャットボットなど、さらに探究すべき領域が数多くあるとしている。
著者らはまた、この報告書が決して包括的なものではないと認め、「今日の中国は驚くべき存在だが、この報告書の対象範囲外である」と述べている。
AIが私たちの暮らしのなかで重要な存在になりつつあることは間違いない。しかし、AIには何ができ、その結果どのような影響が生じるのだろうか。こうした問いへの答えは、まだ出ていない。


