そう遠くない未来、銀行業務からサプライチェーン、法律、会計、通信サービス、さらには政府まで、あらゆるものが再定義されているだろう。スタートアップが資金を調達する手段は、はるかに平等なものとなるだろう。ブロックチェーンという新技術が実現する真のピア・ツー・ピア経済へと移行するにつれて、弁護士、決済機関、さらには中央銀行といった仲介者の必要性は薄れていく。
少なくとも、これは多くのブロックチェーン愛好家が掲げる約束だ。現実は大きく異なる可能性が高い。ブロックチェーンが経済や社会に与える影響については、違法で厳しく規制すべきだという見方から、世界初の「真の民主主義」の実現を約束するという見方まで、大きく意見が分かれている。
その結果、この技術をめぐる議論は活発で、ほぼ毎日のように新たなニュースが報じられている。たとえば、ビットコインの価格変動や、暗号資産イーサの最近の盗難、あるいはブロックチェーンがさまざまな業界に及ぼしうる無数の影響などだ。
では、ブロックチェーンとは実際のところ何なのだろうか?
こうした状況から、ブロックチェーンとは何か、またその可能性とリスク、意図しない結果の可能性をどう両立させるかという重要な問いが生まれている。「ブロックチェーン」という言葉は、幅広い技術やソリューションを指すようになり、もはや単一の明確な意味を持たない。
最も単純に言えば、ブロックチェーンは中央機関に頼ることなく、関係者が共同で、取引や処理の永続的で改ざん不可能かつ透明性の高い記録を作成できる仕組みだ。これまでの世代のデジタル技術が扱ってきたのは、データと情報、そしてそれらをより速く安全に交換する方法だった。一方、ブロックチェーンが扱うのは、価値の交換と、それを即時かつ分散型で実現する方法だ。
こうした文脈から、多くの人はブロックチェーンを、下の図が示すように1960年代から続くデジタル化の一環と捉えている。しかし、ブロックチェーンがこの流れの一部であることは間違いないものの、同時にそこから大きく踏み出す技術でもある。従来の技術は、同じ業務プロセスをより速く効率的に実行することを目指していた。ブロックチェーンは、業務プロセスの実行方法を根本から再定義し、さらにはその設計方法まで変えるものだ。
世界経済フォーラムはブロックチェーンにどのように取り組んでいるのか?

ブロックチェーンはどのように機能するのか?
ブロックチェーンのあらゆる取引には、4つの基本要素がある。
1. コンセンサスプロトコル。これは、どのようにメンバー間で取引を記録し、合意するかを管理する。取引の正当性を証明するために、たとえばサイロ化されたデータベースを通じて情報を一元化する必要がなくなる。
ブロックチェーンに伴う最大のブレークスルーと言えるのは、互いを信頼していない関係者同士が合意に達することを可能にする点だ。また、ビットコインが登場するまでデジタル通貨の最大の課題だった「二重支払い」も防げる。二重支払いとは、デジタルコインやトークンを、Word文書の切り取り・貼り付けと同じように複製できるため、複数回使用できてしまう問題だ。コンセンサスプロトコルは、不正な取引が誤って承認されるのを防ぐこともできる。
2. 台帳。ブロックチェーンについて語る多くの人が指しているのは、この台帳だ。分散型のピア・ツー・ピアネットワーク上に保存される、すべての取引の公開記録であり、 サーバーから成るネットワークに分散保存される。取引が検証されると、「ブロック」として台帳に追加される。
3. 報酬またはインセンティブ。ブロックチェーンのソリューションには、報酬制度、たとえば「マイナー」がビットコインやイーサを得る仕組みか、インセンティブの仕組みのいずれかが必要で、利害が競合する関係者の足並みをそろえる。
ビットコインとイーサリアムにおいて、マイニングとは、一定期間に行われた取引を台帳に追加するプロセスであり、ネットワーク上のノードが安全で改ざん耐性のある合意に達する手段でもある。マイナーは、複雑な数学的問題を解くことでブロック内の取引を確認し、台帳に書き込めるようにする。その対価はビットコインで支払われる(報酬として受け取る)。マイナーは全員、取引を台帳に書き込めるようにする数学的問題を最初に解こうと競い合う。ビットコインでは、これを「プルーフ・オブ・ワーク」と呼ぶ。
マイナーが受け取るビットコインの数は、ネットワークにどれだけ残っているかに応じて、時間の経過とともに減少していく。ビットコインの総数は、最大でも21,000,000枚だ。したがってマイニングには2つの役割がある。第一に、マイナーへの支払いを通じて新たなビットコインをネットワークに供給すること。第二に、システムの安全性を確保する動機を人々に与えることだ。
マイニングに対して人々に金銭的な報酬を与える必要がない場合でも、経済的なインセンティブは強く求められる。たとえば、ある業界の参加者がブロックチェーン上でデータを共有する十分な理由を見つけることだ。報酬とインセンティブのどちらを用いるかという議論は、ブロックチェーンのソリューションがどのような経済的仕組みで機能するかを見分ける主な方法の一つだ。
4. スマートコントラクト。これは、ブロックチェーン上でアプリケーションを開発できるようにするコードだ。ブロックチェーンには単一障害点がなく、コードがネットワーク内のすべてのノードに存在するため、安全性が高い。つまり、ネットワーク内の他のすべてのノードに気づかれずにコードを改変できる場所は存在しない。

多様なブロックチェーン
一般メディアでは、ブロックチェーンを説明する際の典型例としてビットコインのネットワークが使われる。しかし、この分野にあるソリューションの一つにすぎない。ブロックチェーン、すなわち「分散型台帳」には、主に3つの種類があると考えるとよい。下の図に示す。

パーミッションレス型・パブリック型
パーミッションレス型台帳には独自の設計目標がある。主な目標は、中央集権的な信頼の拠点が一切ない完全にオープンな環境で運用すること、そして悪意ある可能性のある者も取引を送信できるだけでなく、取引の検証にも参加できることだ。このため、コンセンサスプロトコル層には追加のハードルが設けられている。「プルーフ・オブ・ワーク」と呼ばれる、時間がかかり、多くの場合コストも高い仕組みだ。
この方式は計算コストが高く、多くの電力を消費し、拡張性にも乏しい。ネットワークが効果的に機能するために必要な信頼を生み出すには、多数のネットワーク参加者が必要となる。こうしたシステムには、報酬モデル、ゲーム理論、行動経済学を含む詳細な分析が求められる。
パーミッション型・プライベート型
パーミッション型台帳は、信頼された取引処理者と検証者の集合を基盤とし、コンセンサスの仕組みに参加できるのも彼らだけだ。厳密に管理された方法で分散され、許可されていない取引や変更を確実に拒否できる。そのため、台帳の改ざんは極めて困難だ。さらに重要なのは、ビットコインのようなパーミッションレス型システムと比べ、稼働に必要な計算能力とエネルギーが大幅に少ないことだ。
プライベート型の分散型台帳では、取引の送信やブロックチェーンデータへのアクセスを、明示的な参加者リストに登録された識別済みの参加者に限定する。規制対象となる環境に適している。
パーミッション型・パブリック型
上の図の中央には、3つ目の分散型台帳がある。これは、パーミッション型、プライベート型、共有型システムの利点の一部と、パーミッションレス型の利点を組み合わせられるハイブリッド型システムだ。
ブロックチェーンは経済と技術が交差する領域にある。効果的に活用するには、その両面を理解する必要がある。システムの経済性は技術設計に影響し、その逆も同様だ。ブロックチェーンの独自の特性は、より広範な経済的・社会的目標に向けた新たな機会をもたらすが、経済全体と社会全体にリスクが及ぶため、慎重に扱う必要がある。

