人工知能はラテンアメリカの経済減速を逆転させる一助となる可能性がある

A participant poses next to a robot during a "Campus Party" Internet users gathering in Sao Paulo January 18, 2011.
Image: REUTERS/Paulo Whitaker
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ラテンアメリカでは、生産性の低迷と経済成長の停滞に対する持続可能な解決策が切実に求められている。人工知能(AI)は、持続可能な成長を実現するための協力者として意外に思えるかもしれないが、解決策の重要な一部となる可能性がある。

AIは新たな生産要素と捉えることができ、ラテンアメリカにおける将来の労働力不足と慢性的な生産性の低迷への対応に役立つ。地域全体の経済モデルとビジネス事例の分析から、その可能性が明らかになった。

AIがもたらし得る影響の真の可能性を推定するため、価値が生み出される主な経路を3つ盛り込んだ経済モデルを構築した。

1. インテリジェント・オートメーションを通じて。AI機械は学習できるため、時間とともに実際に性能を高めることができ、劣化していく従来のあらゆる自動化とは重要な点で異なる。
2. 既存の労働力と資本を拡張することを通じて。機械の支援によって人々の生産性は大幅に高まり、機械自体も人間の監督なしに学習し、自らの性能を向上させることができる。
3. イノベーションの波及を通じて。これは、イノベーションがさらなるイノベーションを生み出すことを指す。たとえば、波及効果によって隣接する企業や業界の新たなアイデアやビジネスモデルを促す。

この3つの経路に基づき、ラテンアメリカの5つの経済圏と世界各地の複数の国を分析した結果、AIによって2035年までに同地域の年間経済成長率が最大で1パーセントポイント上昇する可能性があることが分かった。

ラテンアメリカはAI分野の主要プレーヤーになれるか

ラテンアメリカはすでにAIを非常に重視している。企業のリーダーも消費者も、AIのツールや機能を活用することに強い関心を示している。ペルーの鉱山では鉱業会社が自律型機械を導入し、チリの採用担当者は感情分析アルゴリズムを活用している。また、地域各地で銀行、航空会社、小売業者の顧客がチャットボットとやり取りしている。アク​​センチュアの最近の調査によると、ブラジルの金融サービス利用者の83%が、コンピューターだけで生成された銀行関連の助言を信頼すると回答した。

ラテンアメリカのAIの取り組みには最先端のイノベーションも含まれ、一部の企業はシリコンバレーを上回るほどだ。チリに拠点を置くThe Not Companyは、機械学習アルゴリズムで動物性タンパク質の分子構成を分析し、味覚や嗅覚に関わる人間の感覚と結び付けたうえで、通常は動物由来の食品を植物由来で再現している。

一部のグローバル企業は、この地域のAIへの関心に着目している。たとえばユニリーバは、ブラジルで自律走行フォークリフトを開発・発売し、その後、世界各地の製造拠点に展開した。当社を含む多国籍企業は、ラテンアメリカにイノベーションセンターを次々と設置している。そこでは、機械学習、ハイブリッド・インテリジェンス、拡張現実などのAIソリューションが、現実の顧客課題の解決においてますます重要な役割を担っている。

ラテンアメリカが、ラテンアメリカのために開発するAI

ラテンアメリカのAI先駆者たちは、世界共通の解決策を模索するだけでなく、地域固有の課題にもAIを活用している。ペルーの物流スタートアップChazkiは、ペルー各地で住所が明確でないことが電子商取引企業にとって大きな問題だと気づいた。そこでアレキパのサン・パブロ大学と協力し、配達先の座標を学習して新たな郵便地図を作成するロボットを開発した。その地図には、以前は正式な住所がなかった配達先も含まれる。同社はアルゼンチンのブエノスアイレスにも事業を拡大し、この問題はラテンアメリカ各地の大都市周辺部で広く見られると指摘している。

ラテンアメリカで伝統的に重要な役割を果たしてきた多くの分野は、AIの支援を必要としている。特に農業・コモディティ、公共部門、製造業がそうだ。

鉱業では、AIがもたらす安全衛生の向上は、効率性の改善と同じくらい重要だ。たとえばペルー国立工科大学は、危険なガス漏れを検知する自律型ロボットを開発した。世界最大の銅生産企業であるチリのCodelcoは、自律走行トラックの導入で世界を先導した。地域の大規模農業事業者はすでに、播種や作物管理の手法の速度と精度を大幅に高めるためにAIを活用している。ブラジル最大の砂糖・エタノール生産企業Raízenは最近、ブラジルのスタートアップSpace Time Analyticsと提携し、サトウキビの収穫量を最大1年前にAIで予測すると発表した。

ラテンアメリカの公共部門には、規模も範囲も非常に大きな機会がある。たとえば医療分野では、サンパウロ大学の研究者が、患者が医療機関に到着した際、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱にかかっている可能性を迅速に評価する機械学習技術を開発している。これにより、将来の感染拡大時に、対応に追われる医師が誰を優先して治療すべきか判断しやすくなる。

資本効率を高めるAIの能力は、製造機械への多額の埋没費用を抱えるラテンアメリカの多くの産業にとって極めて重要だ。ブラジルのスタートアップUbivisは、大量のデータを生成する産業機械にセンサーと外部ドライバーを取り付ける。このデータを機械学習プロセスに取り込み、問題が起きる前に予測することで、人間の監督なしに、稼働停止や廃棄を減らす。同社は、農業関連産業、冶金、化粧品など幅広い業界の顧客を支援している。

AIの未来への道を切り開く

こうしたラテンアメリカの事例は心強いが、対処すべき課題を軽視してはならない。

私たちの調査は、ラテンアメリカが新技術を経済に取り入れる能力を妨げる、数多くの構造的な欠陥を明らかにしている。地域に共通する弱点には、初等教育から大学までの教育制度の質や、科学研究機関の質のほか、国、地域、世界各レベルにおける研究・イノベーションのエコシステムの脆弱さがある。信頼の低さや協働する姿勢の欠如も、そうした環境の形成を妨げている。

AI導入に伴う最も大きな課題は、ラテンアメリカでも他の地域と変わらない。AIが私たちの生活に深く浸透するにつれて生じる、知的、技術的、政治的、倫理的、社会的な重要課題に、関係者が十分に備えることが求められる。

人間、社会、倫理の現実に向き合う

AIによって、まだ名前のない新たな仕事が数多く生まれ、ロボット工学やパターン認識などの分野で新しい技能が発展することは間違いない。多くの経営幹部は、機械が人間の能力を高め、仕事をより興味深いものにすると期待していることを示す証拠もある。企業は人々が機械と効果的に協働し、実例を通して機械に教え、さらには機械から学べるよう訓練し、AIがもたらす未来に向けて従業員を備えさせる必要がある。

一方で、AIが別の仕事をなくし、格差を悪化させ、一部の人々の所得を減らす可能性があるのも事実だ。今すぐ政策立案者がAIの悪影響に積極的に対処し、先回りして防ぐことが急務である。たとえば、雇用の置き換えによって不均衡な影響を受けるおそれのある集団を特定し、AI主導の経済への再統合に重点を置いた戦略を策定しなければならない。

こうした新たな現実への備えは、雇用だけの問題ではない。規則や規制を慎重に整えることも必要だ。たとえば、自動運転車のアルゴリズムは、ある人の命を別の人の命より重く扱うかどうかをどのように判断すべきだろうか。医療画像を分析するロボットが誤りを犯したらどうなるのか。責任をどう配分するのか。予測不能な自己学習型アルゴリズムを統制する倫理規範は、誰が決めるのか。

これらは些細な問題ではなく、ラテンアメリカのリーダーだけで立ち向かうべきものでもない。適切な指針となる原則と行動規範を策定するには、業界団体、企業、政府、各国が積極的に関与する必要がある。

大げさな宣伝を控え、現実的に考える

ある程度は、楽観論者も悲観論者も正しい。AIが経済や社会全体にもたらし得る価値は非常に大きく、健康や安全の向上から、交通や気候変動への対応にまで及ぶ。しかし、その価値を実現するために乗り越えるべき課題もまた、非常に大きい。

企業、政府、市民社会のリーダーとしての私たちの責任は、国民や従業員に機会と課題の全体像を現実に即して示し、AIとともに歩む未来に備えてもらうことだ。人工知能は、多くの人にとって未来的で縁遠いものに聞こえるかもしれない。しかしAIはすでにラテンアメリカに存在し、日々の暮らしへの影響も間近に迫っている。議論をSFから、現実的な計画へと転換しよう。

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