人工知能(AI)は、経済や世界中の人々の生活を変革し、インテリジェント時代の幕開けをもたらそうとしています。
特に、すでにデジタル経済から取り残されている人々に及ぼしかねない、AIがもたらす混乱に注意を払うことが重要です。
AIを十分に活用するためには、誰もがその技術にアクセスできるとともに、それを支えるツール、教育、インフラも必要です。
人工知能(AI)と生成AI(GenAI)の台頭は、その速さと影響力において目覚ましいものがあります。AIは2.6兆ドルから4.4兆ドルを世界経済に年間で付加しうるとマッキンゼーは試算しています。AIの可能性についてはよく耳にしますが、AIが混乱をもたらす職業、生活、コミュニティにも目を向ける必要があります。すでにグローバルなデジタル経済から取り残されている人々も含みます。
例えば米国では、黒人米国人は10%高い確率で、AI自動化の対象となる職に就いています。AIは黒人の450万件の雇用に影響を及ぼし、多くの女性が働く分野、例えば事務、小売、顧客サービスの雇用にも影響すると予想されています。これにより両グループは数十億ドルの経済的損害を被ることになります。
さらに、AIモデルの学習に使われるデータのバイアスは、差別的な住宅、融資、採用、報酬の慣行を強化するなど、既存の偏見を拡大させかねません。また、AIの結果として国家間の経済格差も拡大すると予測されています。富裕国はより十分な準備が整っており、AIをより迅速に導入して、その恩恵を享受できるためです。
したがって、私たちの喫緊の課題は、新たな社会的・経済的格差がインテリジェント時代に生じるのを防ぐことです。これは、すべての人がAIに参加し、主導できるようにすることで実現できます。そこには、誰もがAIを活用できるようにするインフラの構築も含まれ、AIツールに関する教育やインターネットと計算能力へのアクセスも含まれます。
デジタル・デバイドの解消
少なくとも、既存のデジタル・デバイドは解消しなければなりません。世界中でインターネットが急速に普及しているにもかかわらず、25億人以上の人々が依然としてインターネットにアクセスできずにいます。世界人口のほぼ3分の1は、金融・銀行、教育、医療など、今日のデジタル社会に不可欠なオンラインサービスを利用できずにいます。
先進国内にも格差は存在します。米国では、約2,400万人が依然として高速インターネットにアクセスできずにいます。このため、数百万人の米国人がブロードバンドでのみ提供されるサービスを利用できず、経済に十分に参加することもできません。
これらの格差を解消することは、次世代のリーダーに、進化し続ける技術を習得するために必要な資源、教育、技術的なアクセスをもたらすことになります。また、これらのツールに関する教育への取り組みも倍増させなければなりません。批判的思考と技術的スキルを組み合わせることは、生成AIと効果的に関わるうえで不可欠です。
米国の黒人コミュニティにおけるブロードバンド・デバイドを解消するための一つのモデルは、例えば、Student Freedom Initiative(SFI)が、歴史的黒人大学(HBCUs)で進めている取り組み――その82%はブロードバンド砂漠に所在しています。
スポーツ業界向けAIソリューションを提供するStats Perform(Vista Equity Partnersの傘下企業)との提携により、SFIはモアハウス大学で「AI in Basketball」コースを2023年に開始しました。その後、同コースは他のHBCUにも拡大しています。これらのコースでは、AIの活用事例に関する実践的な指導を提供し、多様な学生がこの分野のリーダーとなれるよう備えさせています。
もう一つの注目すべき事例は、internXLが進める取り組みです。この取り組みでは、AI、データサイエンス、機械学習に関する無料のトレーニングや認定資格、500以上のAIコースへのアクセスなどの機会を提供しています。また、優秀なHBCUの学生をAIの専門家や雇用主とつなぎ、インターンシップを通じて実務経験を積めるよう支援しています。この取り組みは、アクセス格差を埋め、急成長し需要の高いAI分野で、過小評価されてきた人材が活躍できるよう後押ししています。
誰もがAIの恩恵を享受できるよう、米国内外でこれらのアクセス格差をさらに解消することが極めて重要です。しかし、これらの新しいツールやそのアプリケーションを実行するためには、コンピュート、すなわち処理能力への広範なアクセスも確保しなければなりません。
スマートフォンを例にとると、コンピュートが可能になったのは、通信事業者が4G、5G、LTEに対応するためにインフラを更新したおかげです。しかし、多くのコミュニティはこうした投資を受けられず、現在もこれらのリソースへの公平なアクセスを欠いています。
AIを十分に活用するためには、コミュニティがその技術を支えるツールやインフラ(計算能力、必要なエネルギー源、大規模言語モデル、その他の機械学習・推論ツール)にアクセスできる必要があります。また、これにより、生成AIシステムの学習に用いられるデータに、より多様なインプットを含めることが可能となり、モデルが豊かになります。
生成AIの公平な発展
人種による富の格差は米国経済に2019年から2028年の間に1~1.5兆ドルの損失をもたらすとみられ、また、ジェンダー差別が世界経済に最大12兆ドルの損失を与えていると推定されています。
AIが新たな経済的な亀裂となる代わりに、世代を超えた富の豊かな源泉となり得ます。これらのツールが人種やジェンダーの偏見を模倣し強化しないよう適切な措置を講じる限り、AIがもたらす革新と経済成長は、すべての人に繁栄をもたらす可能性を秘めています。
AIの現在の軌道を踏まえると、価値が獲得される機会は3つの明確な波として訪れるでしょう。すでに第1の波として、ハードウェアベンダーが価値創出の恩恵を受けています。第2の波は、Microsoft、Google、Oracleなど、広く計算資源への接続性を提供できる能力を持つスーパースケーラーや大企業に向かいます。第3の波は、既存製品の上にAIや生成AIのソリューション群を提供するエンタープライズ・ソフトウェアベンダーが恩恵を受けます。
これらが、生成AIの公平な発展と展開を可能にするために私たちが注力すべき3つの明確な領域です。
朗報は、デジタル革命とは異なり、私たちには先見の明を持つという恵まれた機会があることです。AIが進化し、既存企業と新興企業が製品を拡大し、機能を開発し、各段階で価値を獲得する中、私たちは、すべての国のすべての人がインターネット、AI教育とツール、そして処理能力にアクセスできるよう、全力を尽くさなければなりません。
今まさに分岐点に立つ私たちは、生成AIの持つ可能性を完全に引き出すため、視野を広く持って考え、断固として行動しなければなりません。


