生成AIは、プレスリリースやソーシャルメディアへの投稿の作成に利用できます。
しかし、人間の創造性や感情的知性を再現したり、置き換えたりすることはできません。
コミュニケーションの専門家がAIと協働し、活用する方法をご紹介します。
今年初め、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、「Our AI Journey 」という書籍の中で次のように語っています。「今日、マーケターがエージェンシー、ストラテジスト、クリエイティブ専門家に依頼している業務の95%は、AIによって容易に、ほぼ瞬時に、ほぼ無償で処理されるようになるだろう。」
アルトマン氏が言及していたのは汎用人工知能(AGI)です。AGIとは、人間のような知能を持ち、自ら学習できるAIのことです。AGIは現時点では存在しておらず、登場の時期については専門家の間で活発な議論が交わされています。ただし、今後5年以内に実現する可能性があるとの見方も一部にあります。とはいえ、現在の生成AIの水準でも、ソーシャルメディア投稿の作成、ウェブ素材のデザイン、プレスリリースの作成といったマーケティング業務はAIで自動化できます。ただし、多くの場合、依然として人間による監督と改善が必要です。
現在および今後登場する新たな技術動向は、マーケティングおよびコミュニケーションの専門家にとって不安の種になりかねません。しかし、AIの将来に対する懸念を乗り越える最善の方法は、AIがもたらす効率性を受け入れつつ、人間が補える、AIに欠けているニュアンスの重要性を理解することです。
AIによって、プロフェッショナルなコミュニケーションの役割が時代遅れになる必要はありません。むしろ、コミュニケーターはAIツールがもたらす力と機会を活用すべきであり、また活用できるのです。人間の傾向や感情に訴えかける分野において、創造性と感情的知性は代替不可能なものです。
AIを活用してコミュニケーションを強化する
エーデルマンは5月に初の「生成AIサミット」を開催しました。マイクロソフトのコミュニケーション戦略担当副社長であるスティーブ・クレイトン氏が基調講演を行い、AI導入の最先端にある各社のテック、ブランド、コミュニケーションのリーダーが参加しました。参加者は、特にマーケティングおよびコミュニケーション機能に関わる領域において、職場の変革を促進し効率を向上させるためのAI技術の実践的な活用について意見を交わしました。
以下は、マーケティングおよびコミュニケーションの人材を置き換えるのではなく、支援し、協働する形でAIの統合を管理するうえで役立つ、サミットからのヒントです。
1. 小さく始める
組織の業務プロセスを一度にすべて刷新する必要はありません。まずは既存のシステムにAIを統合することから始めましょう。その後、研修や変革管理に投資し、将来的により大きな変更にも従業員が取り組めるよう準備しましょう。
2. 倫理的な影響を考慮する
「2024年エーデルマン・トラストバロメーター」によると、世界の回答者の79%が、テクノロジーの倫理的な利用についてCEOが発言することを重要だと考えています。マーケティングおよびコミュニケーションにAIを活用している企業は、AIを追加する際に検討した倫理的な配慮について、社内外に対して十分に情報発信すべきです。
世界経済フォーラムは、人工知能のためのガードレールをどのように構築しているのでしょうか。
AI卓越性センターは、急速に進化する人工知能と、それが経済や社会にもたらす影響を理解するため、各セクターのリーダーをつなげています。AI導入に関連する機会、リスク、トレードオフについて、十分な情報に基づいた対話を支援しています。
信頼できる場や共同の取り組みを通じて、センターはパートナーが共通理解を築き、AIのイノベーションと利用に対する責任あるアプローチに向けて協力できるよう支援しています。
3. 人間的な関与による恩恵が小さい業務を見極める
AIツールは効率を高め、人々が創造的な活動に充てる時間を増やすことができます。AIに、コンテンツの言語間翻訳、ソーシャルメディア投稿のスケジュール設定、あるいは文書の初稿作成を任せ、その後、担当者が編集して仕上げを加えるといった使い方ができます。
4. 人間の能力を拡張する
拡張知能は、データ分析やパターン認識といったAIの強みを活かし、それを人間の視点や判断と組み合わせるものです。リーダーは、AIの分析力を活用しつつ、現実世界における人間の専門知識を引き続き重視することで、従業員が成果物を向上させるためにAIを積極的に活用できるよう後押しすべきです。
AIに対する信頼の現状
2024年エーデルマン・トラストバロメーターによると、AIの受容は岐路に立っています。回答者の35%がこのイノベーションを受け入れる一方、30%は拒否しています。AIツールの最適な活用方法について人々に教育することで、より多くの受容を得られる可能性があります。
AIの利用拡大による雇用喪失への懸念はあるものの、人々がAIに懸念を抱く主な理由の上位に雇用への影響が挙がるわけではありません。AIが職場に及ぼす影響への懸念はあるものの、人々は自分の仕事にどのように取り入れられるかについて、完全に拒絶しているわけではありません。
AIにあまり前向きではない人々が、より前向きになれる主な方法として挙げるものの一つは、個人的なメリットを実感できることです(51%)。したがって、マーケティングおよびコミュニケーションの専門家がAIの力をどのように活用できるかについて、発想を転換する必要があります。AIを利用する人々にとってのリスクではなく、メリットを強調するのです。
人間のスキルとAIのバランス
特定のテクノロジーが発展するにつれ、人間によるインプットはさらに重要になり得ます。近年のテクノロジーの歴史では、SEOに最適化されたクリックファームが検索結果を埋め尽くすにつれて、人から人へのアドバイスの価値が高まってきました。コミュニケーションがAIの機能に頼り、ユーザーごとのメッセージを生成・パーソナライズするようになるほど、人間が媒介されない人間主導の視点の価値は、ますます高まると考えられます。
コミュニケーターやマーケターが現在の仕事に惹かれ、それに長けているのは、主に人間の経験、ストーリーテリング、創造性への理解によるものです。AIの有効性や普及が進んでも、こうした能力が失われることはありません。AIを遠ざけるのではなく、その利点を強調することで、特に実在する人々の関心を引き、情報を伝えることを目的とした業務において、AIの価値をより高めることができます。


