人工知能には多くの利点がありますが、急速に進歩するあらゆる技術と同様に、社会を守るための倫理的枠組みが必要です。
子どもや若者を潜在的な危害から守るには、特別な予防策が必要です。
世界経済フォーラムのAIユース・カウンシルは、次世代を守り、その力を引き出すための倫理指針の策定を支援することを目指しています。
子どもや若者は、生活のあらゆる側面にテクノロジーが浸透する、ますますデジタル化する時代に育っています。ロボット玩具やソーシャルメディアから、教室や家庭に至るまで、人工知能(AI)は日常生活に欠かせない存在です。だからこそ、倫理指針によって子どもや若者を守り、この新興技術から最大限の恩恵を得られるようにすることが重要です。
AIとともに育ってきたZ世代は、子どもを対象とするAIがもたらす潜在的な課題について独自の視点を示し、ガバナンス指針の策定を支援できる立場にあります。こうした背景から、世界経済フォーラムは、AIに関心を持つ若者で構成される多様な国際グループ、AIユース・カウンシルを設立しました。
メンバーは、Generation AIプロジェクトのコミュニティの一員として活動し、子どものための人工知能ツールキットの作成にも中心的な役割を果たしました。同ツールキットは2022年3月29日に公開されました。AIユース・カウンシルは、AIの倫理とガバナンスについて話し合うため、世界中の14歳から21歳までの若者を集めることを目的としています。
インターネットが形づくる時代に育って
アンジェリカ・シロティン

1996年から2012年の間に生まれたZ世代は、デジタルネイティブ世代として知られています。私たちはインターネットが形づくる時代に育ち、大規模なデジタル化を経験しました。ソーシャルネットワークが登場し、新しい技術が生み出され、AIがさまざまな業界に進出し始めた時代です。
その結果、Z世代はテクノロジーとともに成長し、それは私たちの子ども時代に多方面から影響を与えました。ソーシャルメディアによって、交流の方法が変わりました。即時につながれるようになり、友人と24時間いつでも過ごせるようになりました。新しい技術のトレンドをすぐに取り入れ、ソフトウェアの導入によって教育も拡充されました。
同じように、2013年から2024年の間に生まれたアルファ世代は、真の意味で初めてのAIネイティブ世代として、今まさにAIの影響を受けています。子どもたちはAIチャットボットやスマート玩具を自然に使いこなし、IoT機器の利用は当たり前で、リアルタイムの情報アクセスにも慣れています。AIが子ども時代に与える影響は明らかです。家庭でも学校でも友人といるときでも、子どもたちは最適化された体験や常時接続を求めるようになります。
私の世代の経験から学ぶ
ジャニュ・ガオ、コロンビア大学、コンピューターサイエンス学士、米国

私は規制のないインターネット環境で育ち、プライバシーや安全についての知識もほとんどありませんでした。周囲の大人たちも、自分と同じように無知だったため、身を守る方法を教えてくれませんでした。自分が何をしているか分かっていたので危険を避けることはできました。運がよかったのです。しかし、そうではなかった子どもがあまりにも多くいました。インターネットのおかげで、そうでなければ接点を持てなかった世界中の人々とつながれるようになりました。その一方で、子どもたちは不快なコンテンツ、有害な思想、洗脳を行うコミュニティや交友関係、ネットいじめやオンライン上のストーカー、性的加害者など、現実世界では子どもに接触できなかったかもしれない危険な存在にもさらされています。
インターネットと共存するだけでなく、インターネット上で暮らすパンデミック後の世界へ移行するなかで、私はノートパソコンを使っていた少女時代を振り返ります。未来への不安はありますが、AIとともに育つ若者たちのために、よりよい対応をしたいという決意もあります。AIに私たちと同じような人間性を期待するのであれば、インターネットのような技術とともに育った私の世代の経験から学び、AIが常に人間の最善の面を学ぶとは限らないという可能性に備えなければなりません。
パーソナライズが成長の鍵
グイド・プティニャーノ、工学・生物医学工学学士、ミラノ工科大学

私が初めてテクノロジーに触れたのは、12歳のころでした。店に行くと、別の次元に連れて行ってくれるような奇妙な機器が並んでいました。当時、それらは夕食後の宿題を終えた後、1時間だけ気を紛らわせるものでした。私は初めから、テクノロジーに害を受けていたと記憶しています。何を学ぶか意識することなく動画を見て、多くの日々を無駄にしました。16歳になると、こうした機器を積極的に使い始めました。機器に振り回されるのではなく、自分のために機能させるようになったのです。
未来を予測する最善の方法は、自分で未来をつくることだと思います。私は楽観的で、パーソナライズと高速接続によって、あらゆるものが今よりはるかによくなると考えています。この場合、AIシステムは単なるモノから主体へと変わります。教育や医療がその一例です。生活の多くの側面を自分に合わせて調整し、成長の中心となるAIシステムがあれば、どれほど素晴らしいでしょう。そのシステムは何千ものパラメーターを追跡し、将来の自分について驚くほど正確な予測を行えるかもしれません。こうした機会は将来、現実のものとなるでしょう。
デジタルアクセスの拡大を可能にする
ジョイ・ファクデ、ヨハネスブルグ大学、南アフリカ

南アフリカで育った私自身は、テクノロジーを利用できなかったため、生活への影響はそれほど大きくありませんでした。ノートパソコンに最も近かったのは、おもちゃのパソコンでした。それで算数の問題や英文の組み立てを練習し、ゲームもしました。その後、初めての携帯電話としてBlackBerryを手にしました。地球上で一番かっこいいものだと思っていました。やがてインターネットやソーシャルメディアにもアクセスできるようになりましたが、Wi-Fiへのアクセスは深刻な問題となり、残念ながらそれは今日、多くの南アフリカの若者が直面している現実です。
データ通信へのアクセスがなく、スマートフォンやノートパソコンは言うまでもないという状況では、デジタル時代へ急速に向かう世界で、多くの南アフリカの10代の若者が取り残されています。AIとは何か、デジタルフットプリントとは何かを知らず、「自分のデータを守る」方法も分からないままです。南アフリカの次世代について私が最も懸念しているのは、AI技術の急速な発展によって、彼らが泥沼にはまり込むことです。教育を受けられず、学ぶ機会がないために適応できず、ダーウィンの進化論に照らせば、生き残れなくなることです。
オンラインで真のつながりを築く
グレース・ニックレーム、米国

2003年生まれの私は、フロッピーディスクやBlackBerry携帯電話から、ソーシャルメディアの大手サービスやストリーミングサービスへと移り変わる時代に子ども時代を過ごしました。幼いころにテクノロジーと関わった経験は、主にソニーのカメラとNintendo S4に限られていました。11歳になるころ、周囲からの圧力に折れてInstagramのアカウントを作りました。新しいプラットフォームをどう使うか考えたとき、当時の関心に合った自分を見せるのが自然に思えました。「Gracie Dancer」というプロフィールでは、自分で振り付けたダンスを披露したり、新しいタップシューズについて熱く語ったりしました。「Gracie Singer」には、最新のポップソングを音程を外しながら歌ったカバー動画をすべて投稿しました。
しかし、表面上は一見無害な、仲間意識を求める行為が、予想もしなかった形で私に影響し始めました。関心が変化するにつれ、違うことに挑戦したいと思う自分が間違っているように感じました。画面の向こうに誰がいるのか分からないため、常に見られ、評価されているような気持ちになりました。人生のなかで、最も失敗を歓迎すべき時期に、失敗を恐れるようになったのです。
テクノロジーには疑いようのない可能性がありますが、これからの子どもたちは、インターネット上の人格だけで他者に理解される社会で育つのではないかと心配です。本物の人間関係や関心、活動は後回しになり、完璧さの幻想を保つことが優先されます。そして多くの場合、それは周囲に合わせることを意味します。
リスクを最小限に抑えるための行動を
トルコ出身、スタンフォード大学在学中のエジェム・ユルマズハリログル

学校のコンピューター授業でかさばる旧式のシステム装置の使い方を学んだ最後の世代であり、Facebookのプロフィールを持って育った最初の世代として、私は自ら「移行世代」と呼びたい世代に属しています。ソーシャルメディア、タッチスクリーン、クラウドストレージシステム、AIといった新しい技術が急速に私たちの世界や家庭に入り込むなか、手ほどきをしてくれる先行世代がいなかったため、私たちは試行錯誤を通じて適応し、実験することを学びました。
8歳のとき、初めてのコンピューターを手にし、学校の友達とオンラインゲームをするために初めてのソーシャルメディアプロフィールを開設しました。私たちは誰も、自分たちの行動がもたらす結果を考えていませんでした。人と交流し、つながりたいという基本的な欲求を満たそうと、純粋な気持ちでこうした技術を使い始めた結果、技術の陰に潜む危険に対して無防備になりました。それ以来、世界はこうした危険への備えを怠った過ちに気づきましたが、私たちの多くはすでに、なりすまし、ハッキング、さらにはストーキングの被害に遭っていました。
テクノロジーは多くの恩恵をもたらしましたが、常にそれと同じほどのリスクも伴いました。過去10年間に大人も子どももこのことを学んだ今、次世代を導き、守り、誰もが恩恵を得られるよう、こうした技術を責任を持って使いこなす手助けをするのは私たちの責任です。リスクを最小限に抑え、恩恵を最大限に生かすために行動し、私たち「移行世代」に欠けていた必要な知恵と支援を提供することが、私たちの役割です。
AIを責任を持って活用する
キャスリーン・エスファハニー、コンピューターサイエンス・神経学、MIT、米国

私は2000年に、コンピューターサイエンティストの両親のもとに生まれました。技術革新は年を追うごとに私の生活を大きく変えましたが、テクノロジーに満ちた世界への移行は、私にとってごく自然に感じられました。成長が技術の発展と歩調を合わせる現象によって、私はデジタルネイティブとしての自分を確立しました。子ども時代の大半において、認知発達の節目ごとに技術も進歩し、教育や社会的なツールとしてのテクノロジーにますます深く浸透していきました。
世界への好奇心が高まるにつれ、オンラインニュースやソーシャルメディアが広まり、世界各地の出来事を追い、他の人々とつながれるようになりました。また、コンピューターに関する専門知識を使って、魔法のように見える身近な機器について理解できるよう助けてくれた両親にも感謝しています。そのおかげで、テクノロジーを自分の目的にどう活用するかを考え、自分自身で技術を生み出す力を得ました。
今日の若者たちは、AIの急速な進歩とともに育っています。AI搭載技術がもたらすかつてない効率性とパーソナライズによって、若者たちの学習能力、人間関係を築く力、喜びを生み出す力が高まる様子を、すでに目にしています。子どもの安全と心の健康を最適に守るには、子どもの発達過程に見られる多様なニーズや能力に合うよう、AI搭載技術を設計することが不可欠だと考えます。若者向けに適切に設計されたAI搭載技術とAIについての教育プログラムを組み合わせることで、今日の若者がAIを責任を持って活用し、未来へのビジョンを実現する力と意欲を得ることを願っています。


