人工知能(AI)は、COVID-19の治療法を探すうえで強力なツールとなってきた。
1月、BenevolentAIは関節リウマチの治療薬を新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として特定した。この薬は現在、世界各地で大規模な臨床試験が行われている。
AIのモデルとアルゴリズムは、新興疾患の治療薬候補を探す時間と費用を削減できる。
COVID-19の突然の出現と急速な拡大は、各国政府と社会を不意打ちにした。パンデミック対応計画を再確認し、ウイルスとの闘いに備えるなかで、研究開発の取り組みを大幅に加速し、新興疾患に有望な治療法を見つけるための、より効果的な方法が必要だと明らかになった。
人工知能(AI)は、この闘いで強力なツールとなることが実証されている。
パンデミックでは、スピードが何より重要だ。科学者たちは新型コロナウイルスの遺伝情報の解読や診断検査の開発を記録的な速さで成し遂げたが、ウイルスに対する治療薬やワクチンの開発には、なお長い時間がかかる。
AIは、利用可能なあらゆる生物医学データや情報を横断的に推論し、既存の承認薬を体系的に探すことで、この過程を加速できる。これは、世界がワクチンを待つ間に患者を支援するための重要な一歩だ。
機械は状況が急速に変化するなかでのデータ処理に優れている。そのため、機械学習システムを、疲れを知らず偏りのない超研究者として活用できる。
これは単なる理論ではない。1月下旬、ロンドンのBenevolentAIの研究者たちは、科学文献を検索する独自のAIモデル・アルゴリズム基盤を使い、以前から使われている1日1回服用の関節炎治療薬をCOVID-19の治療薬候補として特定した。その知見は、2本の論文として『ランセット』および『ランセット感染症』に掲載された。これは、コロナウイルス関連の研究を迅速かつオープンに共有するという、ウェルカム・トラストの誓約のもとでの私たちの取り組みに沿うものだ。
この発見は、抗ウイルス作用と抗炎症作用の両方を持つ治療薬候補をコンピューターで探索した結果だった。COVID-19の重症例では、体の免疫反応が過剰になり、重大な、時には致命的な損傷を引き起こすことがあるためだ。
バリシチニブは現在、関節リウマチの治療薬としてイーライリリーが販売している。AIのおかげで、この薬は現在、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と連携し、ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビルと併用して、COVID-19を対象とする大規模なランダム化比較試験で評価されている。レムデシビルは最近、COVID-19に対する緊急使用が承認された。イーライリリーはさらに、南米、欧州、アジアで、COVID-19の治療薬としてバリシチニブを評価する独自の臨床試験を開始した。

バリシチニブの特定に使われたシステムは、既存薬の新たな用途を見つけるために設計されたものではなく、新薬の発見・開発を目的としていた。これは、AIが無数の生物学的要素にまたがる新たな知見や関係性を明らかにする可能性を示している。COVID-19のような危機において、ワクチンが承認され、世界のサプライチェーンで広く入手可能になるまで、大規模な臨床試験にすぐ移行できる承認済み薬を探すことには明らかに意義がある。
AIが長期的にもたらす可能性は、COVID-19をはるかに超える。
BenevolentAIは、医薬品研究開発の生産性をあらゆる分野で大幅に高め、生物学の新たな領域で予測を行うことで、創薬の可能性を広げることを目指している。現在、後期臨床試験の約半数は、薬剤標的が有効でないために失敗し、中期の第2相試験から承認に進む薬はわずか15%にとどまる。
化学、生物学、医学の研究と情報で構成される「ナレッジグラフ」を用いて、同社のAI機械学習モデルとアルゴリズムは、医学ではまだ知られていない治療薬候補を、人間よりはるかに速く特定できる。こうしたシステムが科学者や臨床医に取って代わることはないが、時間と費用の両方を節約できる。また、機械学習が採用する先入観にとらわれないアプローチにより、従来の研究では見過ごされていた候補をこうした基盤が見つけることもある。
この取り組みはすでに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎を対象とする社内プロジェクトや、進行性の腎疾患・肺疾患、膠芽腫など治療が難しいがんを対象とするパートナーとのプログラムにつながっている。
機械が人間の専門家よりも速く複雑な生物学的謎を解明できることから、AI創薬への投資を増やす大手製薬企業が増えている。
AIは医療画像の分析など、医療のほかの分野でも活用されている。これには、がん画像の解析に関する長年の取り組みや、胸部X線画像からCOVID-19を特定するために計算能力を活用する最近の試みが含まれ、オープンアクセスのCOVID-Netニューラルネットワークもその一つだ。
COVID-19が世界に警鐘を鳴らしたことは明らかだ。この流行は、相互接続が進んだ現代社会によって拍車がかかり、ますます頻繁に起きるようになった感染症流行の一部かもしれない。ウイルスが動物から人間へと移り、世界中を移動するなか、医療専門家は今後数年、これまで知られていなかった「疾病X」の脅威がさらに現れると見込んでいる。
テクノロジーは、COVID-19、SARS、ジカウイルスのような病原体が広がる世界を作り出す一因となった。しかし、AIという形のテクノロジーは、反撃するための武器も私たちに与えてくれる。



