最先端のAIが科学者による新型コロナウイルス感染症への取り組みをどう支援しているか

Kylene Karnuth, a clinical lab scientist, works with coronavirus samples as researchers begin a trial to see whether malaria treatment hydroxychloroquine can prevent or reduce the severity of the coronavirus disease (COVID-19), at the University of Minnesota in Minneapolis, Minnesota, U.S. March 19, 2020. REUTERS/Craig Lassig - RC2ANF9Z4NVV
Scientists are racing to find a COVID-19 treatment or vaccine. Artificial Intelligence could help them.Image: REUTERS/Craig Lassig
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  • 自然言語処理(NLP)などの人工知能(AI)技術は、人間には処理不可能な膨大なデータを分析することで、研究者による新型コロナウイルス感染症への取り組みを支援できます。

  • 機械は、新型コロナウイルスに関する数万本の研究論文を検索、評価、要約できます。科学者たちがワクチンや治療法の開発を急ぐなか、毎週数千本の論文が追加されています。

  • AIは、新たな場所での症状の集積など、早期警戒の兆候を検知することで、新型コロナウイルス感染症やその他の疾病の拡大を追跡する助けにもなります。

2015年の夏、私は乳がんと診断されました。治療期間中、自分の選択肢を見極めるために、数十本の研究論文を読みました。私は人工知能(AI)の専門家であり、統計的有意性などの概念に関する知識を生かして、こうした医学研究を理解することができました。論文を読み進めるうちに、がんの世界的なデータベースを検索する高度なツールなど、私の専門分野のAI技術が医師や科学者、患者に大きな変化をもたらし得ることに気づきました。

AIには、がん研究に限らず、医学研究を変革する力があります。今まさに、別の非常に緊急性の高い医療課題、新型コロナウイルス感染症との闘いへの対応を支援できます。

機械は、新型コロナウイルスに関して発表された膨大な研究を分析し、最も関連性の高い情報を抽出する助けになります。人間よりはるかに速くデータを処理し、人間が見つけるのに時間がかかるパターンも検出できます。そのため、新型コロナウイルス感染症やその他の疾病の拡大に関するデータを迅速に理解し、早期に対応することも支援できます。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受け、コロナウイルス研究が急増しています。現在、論文は6万本を超えています。Image: CORD-19:新型コロナウイルス感染症オープン研究データセット

ここでは、私のチームと私自身を含め、世界各地の研究者や機関が、新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越えるために機械の力を活用している2つの方法を紹介します。

緊急の問いに迅速に答える

新型コロナウイルスに関連する学術論文は約6万7,000本あり、その数は日々増えています。ここ1週間ほどだけでも、数千本の論文が追加されました。治療法やワクチンの開発に取り組む科学者は、できるだけ迅速に研究を進め、誤りや重複を避けるために、先行研究を理解しなければなりません。しかし、読むことだけに専念したとしても、これらすべての論文に目を通すには何年もかかります。機械がこの状況を変え、瞬時に全体像を把握する助けになるでしょう。

3月、ホワイトハウスを含む複数の機関の連携により、新型コロナウイルス感染症オープン研究データセット(CORD-19)が、世界のAIコミュニティ向けの無料リソースとして作成されました。これには、これまでに発表されたコロナウイルス関連の数万本の論文が収録され、新たな論文が継続的に追加されています。私のチームと私自身を含む世界各地のAI専門家は、機械学習を用いてこのデータセットを検索し、最も重要な情報を抽出するツールの開発に着手しました。これにより、医学研究者は急速に進展するこの分野の動向を追えるようになる可能性があります。

人工知能の重要な一分野である機械学習では、機械を膨大なサンプルデータで学習させた後、自律的にデータセットを分析し、パターンや傾向、関係性などを検出できるようにします。機械学習はすでに、新型コロナウイルス感染症の拡大速度やパターンの予測、ワクチン研究の促進に使われていますが、医学研究論文の大規模な処理に使われた例はこれまでほとんどありません。新型コロナウイルス感染症の研究に大きな変革をもたらす可能性があります。

私のチームが提案する新型コロナウイルス感染症オープンデータセット向けツールでは、自然言語処理(NLP)というAI技術を用います。これは、機械にユーザーの質問を完全な文として分析するよう学習させ、次にデータベース内の数万本の学術論文を読み、順位付けし、回答の抜粋や要約を生成させるものです。

たとえば科学者は、データベースに連携した検索エンジンに「新型コロナウイルス感染症には季節性がありますか?」といった簡単な質問を入力できます。検索エンジンは関連する論文をすべて見つけ、順位付けします。次に、「ニューラル質問応答エンジン」と呼ばれるプログラムが上位の論文を調べ、質問に答える箇所を特定します。さらに、「ニューラル要約エンジン」と呼ばれる別のプログラムが、これらの箇所をまとめ、新型コロナウイルス感染症の季節性に関する最も重要で最新の情報を含む抄録としてユーザーに提示します。

「ニューラル」とは、これらのアルゴリズムが、脳内のものと同様に、情報が多様な接続経路を伝わるニューラルネットワークに基づいていることを意味します。これにより機械は、多数の事例を考慮して学習し、新たな情報を自律的に評価できます。このプロセスはディープラーニングとも呼ばれます。

こうした技術を用いて、私たちのチームは、増え続ける科学論文のデータベースに基づき、その場で質問に答えられるシステムを構築しました。私たちは、システムのソースコードを公開しています。他の開発者がさらなる研究に活用できるようにするためです。

脅威を検知する

世界のどこかで毎日、次のパンデミックの予防に役立つ可能性のある情報が生まれています。予想外の場所で珍しい症候群が集積するといった、一見小さな事象かもしれません。課題は、無関係な観察情報があふれるなかから、この重要な情報を見つけ出すことです。これは、流行を発見して評価し、理想的には最も早い段階で対応する「感染症インテリジェンス」の中核をなす業務です。この分野でも、機械学習プロジェクトが大きな変化をもたらすと期待されています。

オープンソース感染症インテリジェンス(EIOS)は、世界保健機関(WHO)の健康危機情報・リスク評価部門が運営する取り組みです。健康監視プログラムや各種の健康データベースなどの情報源からデータを収集・分析します。12月に武漢で肺炎の集団発生を報じた最初の記事は、この部門によって把握されました。

私たちは最近、CORD-19データベース向けに開発したものと同様の質問応答・要約技術を提供するため、EIOSチームとの協力を始めました。この場合、私たちのシステムは数万件ではなく、オンライン上の数億件のコンテンツを精査して質問への答えを探す必要があります。国連のすべての加盟国の保健省や疾病対策センターに加え、医療従事者や医療専門家が、感染症研究にこれらのツールを活用する予定です。

これらのプロジェクトは急速に進展しています。しかし、公衆衛生や医学研究にAIの力を真に生かすには、国境を越えた連携や科学者同士の協力を強化するとともに、患者のプライバシーを守りながら医学データベースへのオープンアクセスを実現する必要があります。

人々の健康のためにAIを活用する

新型コロナウイルス感染症との闘いは、世界に計り知れない苦難と破壊をもたらしましたが、同時に、力を合わせれば何を成し遂げられるかも示しました。国境を越えて進む人工知能の研究開発が持つ、開かれた協力的な性質は、こうした共同の進歩が将来どのような姿をとり得るかを示しています。

人工知能の分野での経験は、自身のがん治療の際に大いに役立ちました。その経験が、最終的に私の命を救う助けとなった研究を理解する支えになりました。世界規模のがんデータベースを構築し、機械学習を通じてその可能性を引き出すことは、今も私の主要な目標の一つです。

新型コロナウイルス感染症の危機において、医師や研究者が極限の状況と大きな重圧のなかで成し遂げたことを考えれば、私たちは皆、健康に対する最大の脅威に立ち向かい、テクノロジーを活用して皆の利益につなげるという課題を乗り越えられると確信しています。人工知能と機械学習は、診断を支援し、何百万人もの患者の治療法、ワクチン、医薬品、予防策の開発を加速させ、現在と未来の人々の暮らしを向上させることができます。

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