AIはジャーナリズムをどう変えるのか

Pepper, an emotional Robot, greets conference attendees during the Wall Street Journal Digital Live (WSJDLive) conference at the Montage hotel in Laguna Beach, California October 20, 2015. REUTERS/Mike Blake - GF20000025613
Research has found journalists are afraid that they will be replaced by robots.Image: REUTERS/Mike Blake
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この1年で、あなたはおそらくボットが書いた記事を読んだことがあるだろう。スポーツ記事、企業の決算報告、あるいは選挙区の直近の連邦議会選挙で誰が勝ったかを伝える記事など、知らないうちに感情を持たない人工知能に歓声やブーイング、涙を誘われていたかもしれない。2025年までに、ボットがニュース全体の90%を執筆する可能性があると、データを記事に変換するソフトウェア「Quill」を手がけるNarrative Scienceは述べている。

世界有数の大手で評価の高い報道機関の多くがAIを導入したり試験的に活用したりしている。たとえば、ワシントン・ポスト、AP通信、BBC、ロイター、ブルームバーグ、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、タイムズとサンデー・タイムズ(英国)、日本の公共放送NHK、フィンランドのSTTなどだ。昨年、中国の新華社通信はコンピューターグラフィックスを使って、男性の世界初のAIニュースキャスターを制作した。今年は、初のAI女性ニュースキャスターを登場させた。

Image: 新華社

記事を作成するサービスを契約すれば、小規模な報道機関もAIが執筆した記事を配信できる。AP通信やRADARなどがその例だ。RADARはReporters And Data And Robotsの略称で、英国通信社協会とテクノロジー企業Urbs Mediaの合弁事業として運営されている。AIを活用した通信社であり、契約する英国メディア向けに週何千本もの地域記事を生成する。ロイター・ジャーナリズム研究所が2018年に発表した報告書によると、世界の編集幹部、CEO、デジタル分野のリーダー約200人を対象とした調査では、ほぼ4分の3がすでにAIを活用している。

Image: ロイター・ジャーナリズム研究所

ボットは人間よりはるかに多くの記事を生成できるため、AIを使えば報道機関はより費用対効果の高い運営ができる。AP通信はAIを活用し、企業決算報道の対象を300社から4,000社に拡大した。ワシントン・ポストは「Heliograf」ボットのおかげで、今ではワシントンD.C.地域の高校フットボールの試合をすべて報道できる。アトランタ・ジャーナル=コンスティテューションは、医師による性的虐待を調査した記事でピューリツァー賞の最終候補となった。同紙は機械学習を使って、懲戒処分に関する10万件を超える文書を精査した。ロイターのAIは政府や企業のデータを使い、複数の言語で毎日何千本もの記事を生成する。

ジェレミー・ギルバートは、ポストの戦略的取り組み担当ディレクターとして、ボットの活用によって同紙の選挙報道が飛躍的に拡大したと、最近のウォートン校マック・イノベーション・マネジメント研究所とのインタビューで語った。「選挙の翌朝に記事を1本出す代わりに……予備選の夜には票を集計し、Heliografが30秒から90秒ごとに、何が起きているか、誰がリードし、誰が遅れているかなどを報じられます」と述べた。州全体の選挙では、「2018年と2016年の投票率を30秒から90秒ごとに比較できます。新しいデータが入るたびに、新しい記事を公開できます」。

「AIが判断や解釈で人間を大きく上回る日が来るまでは、事実や出来事、ニュース記事を人間が解釈する必要があります」―ピナル・ユルディリム

ブルームバーグ・ニュースのボット「Cyborg」は、決算報告書を読み取り、見出しと箇条書きの記事をすばやく作成できる。「最初のバージョンは、もちろんアナリストのコメントを除けば、[人間の記者が]30分で作るものに非常に近い」と、編集長のジョン・ミックルスウェイトは1月のDLD(デジタル・ライフ・デザイン)会議での講演で語った。AIは世界中のソーシャルメディアをすばやく大規模に調べ、災害、銃撃事件、辞任など、ニュース価値のある出来事に関する投稿を見つけることもできる。形はさまざまだが、現在、ブルームバーグのコンテンツ全体の30%に自動化が関わっている。

BBCのAIツールはJuicerで、ニュースの集約とコンテンツ抽出を行う。世界中の850のRSSフィードを監視し、大量の記事を取得してタグ付けする。ロイターのNews Tracerはソーシャルメディアの投稿を調べて速報を探し、ニュース価値を評価する。投稿者の身元、リンクや画像の有無などを確認し、ジャーナリストと同じようにニュースを検証する。

メディア企業以外も、AIを使ってニュース記事を生成している。2017年、Quartzの幹部ザック・シーワードは上海の会議で講演した。壇上を降りる前に、中国のテクノロジー企業テンセントは「Dreamwriter」というAIを使い、講演内容を中国語に翻訳した記事をすでに投稿していた。彼はツイートし、「悪くない」ニュース記事だと評した。

ロボットは記者に取って代わるのか?

報道機関は、何年も前に始めたAI活用の取り組みを加速させている。イスラエルのヘルツリーヤにある学際センター、サミー・オファー・コミュニケーション学部の学部長ノアム・ラタールは、2014年当時、ジャーナリズムにおけるAIの研究を行っていた。コスト削減の可能性からメディアにこの技術が広がると予測していたと、Knowledge@Whartonとのインタビューで語っている。

AIの利用が広がるにつれ、その影響への懸念も高まっている。「人工知能という新たな亡霊が、私たちの業界をさまよっている……」とミックルスウェイトは述べ、マルクスの『共産党宣言』の冒頭を引き合いに出した。ジャーナリストは、ロボットに仕事を奪われること、文章の質が下がること、フェイクニュースが広がることを恐れているという。

しかし、ミックルスウェイトはこの見方に異議を唱えた。「一部のジャーナリストはロボットに取って代わられるでしょうが、多くはありません。ニュースはよりパーソナライズされますが、それが常に悪いわけではありません」と語った。「詐欺師や独裁者にだまされることはこれからもあるでしょうが、正直なところ、それは昔から起きてきました」。ただし、AIによって、担当分野の記者にはより深い洞察や速報を届けることが一層求められる。

実際、意義ある分析や解釈を示す人間のジャーナリストは、AIを圧倒できる。ウォートン校のマーケティング学教授ピナル・ユルディリムはKnowledge@Whartonにこう語った。「AIはいくつかのニュース記事を生成するでしょう。しかし、ジャーナリズムの大きな部分を占めるのは、多元性や個人的な意見、事実をさまざまな角度から解釈する力です。そして、AIが判断や解釈で人間を大きく上回る日が来るまでは、事実や出来事、ニュース記事を人間が解釈する必要があります」。

「人間のように聞こえ、人間の報道のように読めますが、実際は……さまざまな叙述スタイルに対応するテンプレート方式にすぎません」―セス・ルイス

ニューヨーク大学カーター・ジャーナリズム研究所の助教メレディス・ブルサードは、SiriusXMのKnowledge@Whartonのラジオ番組で、AIの役割は定型的な報道を引き受け、ジャーナリストがより興味深い記事に取り組めるようにすることだと語った。「ロボットによる報道が、人間のジャーナリストにすぐ取って代わることはありません。AIは基本的に同じ記事の複数の版を作るのが得意です。だから、決算報告のような金融報道にはとても向いています。記事の内容がそれほど変わらないからです」。

オレゴン大学ジャーナリズム・コミュニケーション学部で新興メディアを専門とするセス・ルイスも、同じラジオ番組で、AIは高度に構造化されたデータを使う記事に最も適していると付け加えた。スポーツ記事はその好例だ。「自動化によって、たとえばAP通信は、ボックススコアを物語形式のニュースに変える記事を作れます」と述べた。「人間のように聞こえ、人間の報道のように読めますが、実際は……さまざまな叙述スタイルに対応するテンプレート方式にすぎません」。

RADARでは、ジャーナリストがAIに地域データを埋め込ませるためのテンプレートを作成する。同社のウェブサイトによると、テンプレートには「テキストの断片と、データを地域に即した文章に変換するための論理的なif-then-elseルール」が含まれる。データジャーナリストはさまざまな切り口や筋書きを考え、さらに取材を行って、「大まかな背景情報や全国的な文脈を加え、それを基本的な記事構成のテンプレートに書き込む」。その結果、基本構成は似ていても、地域ごとの詳細を盛り込んだ記事ができる。RADARによると、AIを使えば、データジャーナリスト1人が各テンプレートから毎週約200本の地域記事を作成できる。

ブルームバーグでも、人間の知性がAIを導いている。「Cyborgに何をさせるか指示するには、ジャーナリストが必要です」とミックルスウェイトは語った。「出力されたものを人間が二重に確認する必要があります。……間違えるわけにはいきません。実際、この作業の多くは半自動化です。……人間と機械が協力して進める傾向があります」。AIは記者の仕事も支援する。たとえば、音声認識技術を使って録音の文字起こしなど手間のかかる作業を引き受けられる。また、ボットは複数の記者会見の電話会議に同時参加し、特定の言葉を聞き取って速報がないかを確認できる。

ミックルスウェイトによると、AIの大きな変革の一つは自動翻訳だ。海外特派員は通常、ある言語で取材し、別の言語で記事を書く。たとえば、北京語でインタビューし、英語で記事を書く。しかし、高速の機械翻訳があれば、「記者は好きな言語で速報を伝え、コンピューターが大部分を翻訳します」と語った。記事を提出する前に、記者が最終稿を確認する。ボットは間違えることもある。たとえば会社の「関係」をネクタイと取り違えることがあるが、同じ誤りを繰り返すことはないという。

手仕事のニュース?

ユルディリムは、AIが人間の書く質の高いニュースに取って代われない理由がもう一つあると語った。研究によると、人々はメディアを「純粋に合理的な方法で」消費するわけではない。消費者は目を引く工夫や、自分が賛同できる視点を求めている。それをはっきり認めるかどうかにかかわらず、そうした傾向がある。ユルディリムが共著した2013年の研究論文によれば、人々は自分の信念に合う情報を求め、それが利用する報道機関の選択を左右する。「この理論が示すのは、消費者がむき出しの真実だけを聞きたいわけではないということです」とユルディリムは語った。「自分の信念体系、つまり自分なりの世界観に訴えかけるニュースを聞きたいのです」。

「[ニュースを]作ることは、組み立てラインで車を生産するのと同じではありません」―メレディス・ブルサード

たとえば、トランプ大統領の支持率が、ある月に40%で翌月には45%に上がったとしよう。「こうした疑いようのない事実も、ジャーナリストによって解釈は大きく異なり、異なる信念体系を持つ消費者にそれぞれ訴えかけます」とユルディリムは語った。右派寄りの報道機関はトランプ氏の支持率が上昇していると伝え、左派寄りのメディアは支持率が50%未満にとどまっていると報じるだろう。「どちらも正しいのですが、データの解釈が異なります」。AIがジャーナリストに取って代わるには、人々が聞きたいニュースを生成できるアルゴリズムが必要だと付け加えた。

実際、AIが書くニュース記事はテンプレートに基づくため、かなり反復的だとブルサードは語った。「構造化された情報に基づく大学野球の記事は、どれも基本的には同じです。だから同じ記事を何度も読むことになります」と述べた。「そして考えなければなりません。本当にそれを望んでいるのでしょうか。……AI生成ニュースには、成果が頭打ちになる点があります。とても便利ですが、用途は非常に限られています」。

もう一つの問題は、まだ整理されていない新たな法的論点がAIによってジャーナリズムに持ち込まれることだ。「自動生成された記事が個人の名誉を傷つけたら、誰に責任があるのでしょうか。それはどのような形になるのでしょうか」と、AI生成記事の名誉毀損問題を研究してきたルイスは語った。「アルゴリズムを訴える方法を考える準備は、まだ整っていないと思います。結局、何らかの形で責任を負うのは人間です」。

電光石火の報道にも欠点があることは、ロサンゼルス・タイムズが2017年に経験した。同紙のQuakebotは、カリフォルニア州アイル・ビスタを襲ったマグニチュード6.8の大地震についての記事とツイートを公開した。しかし、その地震が実際に起きたのは1925年だった。米国地質調査所が歴史的な地震のデータベースを更新中に誤った警報を送信し、ボットがそれを検知して自動的に報じたのは1分後だった。

AIの問題点から、ブルサードはジャーナリズムが完全自動化へ向かっているという見方に懐疑的だ。「ニュースを作ることは、組み立てラインで車を生産するのと同じではないのですから、その前提には疑問を感じます」と語った。大量のコンテンツを作れることは、当初、報道機関を沸き立たせるかもしれない。しかし実際にはジャンクフードのようなものだ。「ニュースに『スローフード』運動を取り入れるとしたら、どんな形になるか考えてみたいのです」と問いかけた。「少量ずつ、職人の手で作るニュースを考えてみてはどうでしょう。費用はかかり、効率もよくありませんが、実際により良いものです」。

ルイスもこう付け加えた。「自動化によって大量のコンテンツを次々と生み出すのは、ただの底辺への競争なのか、と考えてみる価値はあります。……それとも報道機関は、実際にはもっと少なくすることを考えたほうがよいのでしょうか。ニュースの量を減らし、その分質を高める、あるいは何らかの形で付加価値を高めるのです」。メディアには量より質を重視し、「より調査に基づき、より独創的で、より創造的な記事を作り、消費者のニーズに実際に応えることが求められます。私たちが目にしているような底辺への競争に加わるべきではありません」と促した。

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