今月初め、テクノロジー業界の大物であるイーロン・マスクとマーク・ザッカーバーグが、インターネット上のそれぞれ別の場所から、人工知能の長所と短所について議論した。SpaceXのCEOは、AIには慎重に臨むべきであり、「人類の存続を根本から脅かすリスク」があると主張する警戒派だ。一方、Facebookの創業者は、より楽観的な未来に傾き、「破滅的なシナリオ」を退け、AIがより明るい未来の構築に役立つと考えている。
今ではザッカーバーグの明るい見通しに賛成しているが、以前はそうではなかった。
エンジニアとしてキャリアを始めた私はAIに関心を持っていたが、進歩があまりに速く、行き過ぎてしまうのではないかと迷っていた。10代に差しかかる3人の子どもの母親として、AIが子どもたちの教育や仕事、日常生活の未来を大きく変えてしまうのではないかという不安もあった。だが、ある出来事をきっかけに、私はAIを肯定するようになった。
型破りな治療法
少し想像してみてほしい。あなたは病理医で、30分ごとに1,000枚の画像をスクロールし、そのうち1枚にあるごく小さな異常を探す仕事をしている。膨大なデータの山から顕微鏡サイズの針を見つけようと、時間に追われている。
そして、その結果に女性の命がかかっていると想像してほしい。私の命だ。
これは病理医が毎日担う、ほとんど不可能ともいえる作業だ。今年、米国で乳がんと診断される25万人を治療するため、医療従事者は患者のがんが転移しているかどうかを特定するために、膨大な量の細胞組織を分析しなければならない。時間と資源が限られるなか、誤診も少なくない。最近の研究によると、病理医が腫瘍を正確に検出できるのは73.2%にとどまる。
2011年、私は乳房にしこりを見つけた。かかりつけ医も私も、よくある良性の乳房のしこりである線維腺腫だと確信していたが、念のためマンモグラフィーを受けるよう勧められた。最初のしこりは確かに線維腺腫だったが、マンモグラフィーで正体不明の「影」が2つ見つかった。ここから、未知のものに向き合う日々が始まった。
当時はAI画像診断が利用できなかったため、私は人による分析だけに頼らざるを得なかった。その後の4年間は、超音波検査、生検、手術に追われ、あっという間に過ぎた。善意で診療にあたってくれた医師や専門医たちも、最終的にまれながんと判明した私の病気を診断・治療できず、再発する腫瘍を手術で取り除こうと何度も試みた。
さらに4つの腫瘍、5回の生検、2度の手術を経て、私は両乳房切除に向かいつつあり、がんが肺や脳に転移するのではないかとおびえていた。
何かを変えなければならないと感じていた。2015年、私はある医学物理士を紹介された。その人は異なるアプローチを採り、ビッグデータと機械学習アルゴリズムを用いて腫瘍を検出し、放射線治療でがんを治療することにした。この新しい技術に治療を委ねることには不安があったが、適切な医学的知識と組み合わせることで、腫瘍の増殖を止めることができた。今ではがんがなくなって2年になる。
命を救ってくれたAIに感謝した。だが、まさにその同じアルゴリズムが、息子の将来の進路を変えることになった。
短期的な変化
機械学習がもたらす好影響は、自動化をめぐる悲観論にかき消されがちだ。自分の仕事や子どもたちの将来を心配する人々は、AIが社会にもたらし得る前向きな変化よりも、潜在的な悪影響に目を向けることが多い。
この放射線治療が私に何をもたらしたかを目の当たりにした息子は、医療放射線分野でのキャリアを探るため、大学の放射線技術プログラムに出願した。私の治療期間を通じて数多くの放射線技師と出会い、専門プログラムで学び始めることを楽しみにしていた。しかし、出願手続き中にプログラムが中止された。放射線業界では、プログラムを継続するだけの仕事がもうないためだと説明された。私のがんとの闘いを助けた技術や機械学習と同じく、自動化によって多くの職が失われていた。
息子にとっても私にとっても、つらい時期だった。私の命を救ったまさにそのものが、息子が予定していた道に進むのを妨げたのだ。ほかの進路に出願するには遅すぎる時期に、彼は出願の途中で進学計画を考え直さなければならず、代替案もうまくいかないのではないかと不安に感じていた。
今、息子は医療放射線ではなく生物物理学の道を目指し、まず総合科学の学士課程に進んでいる。振り返ると、あの経験を通じて彼はキャリアを考え直し、将来、人々の暮らしに最も大きな影響を与える研究分野は何かという視野を思いがけず広げたのだと、今では私たち二人とも気づいている。
一部の医療従事者はAIによって職を失うかもしれないが、患者の命を救う恩恵は計り知れない。がんの検出や治療にとどまらず、医療従事者はさまざまな形で診療の向上に機械学習を活用している。たとえば、AtomwiseはAIを創薬に活用し、Deep Genomicsは製薬会社による遺伝子医薬品の開発を機械学習で支援し、Analytics 4 LifeはAIを活用して冠動脈疾患をより的確に検出している。
自動化された職からの転換がすべて、息子が別の科学分野へ進路を変えたように簡単にいくわけではない。それでも私は、AIには将来のキャリアを前向きに形作る可能性があり、より幸せで生産的になれる仕事を見つける手助けさえしてくれると信じている。
未来への道を切り開く
この技術が急速に発展するなか、未来は明らかだ。AIは私たちの生活に欠かせないものとなり、社会に大きな変化をもたらす。議論を続けるのはやめて(マスク氏とザッカーバーグ氏に言っている)、AIのありのままの姿、つまり良い面も悪い面も受け入れる時だ。
これまで私は、AIの進歩に賛成する側にも反対する側にも立ち、両方の立場から議論してきた。しかし、都合のいいときだけ生活に取り入れるような、AIに対する選択的な見方はやめるべきだ。AIの悪影響を抑え、前向きな可能性を最大限に引き出す解決策を生み出さなければならない。政府、企業、技術者などの主要な関係者は、政策を策定し、協力し、この取り組みに力を注ぐ必要がある。
そして、大きな進展も見られる。AT&Tは最近、何千人もの従業員の再訓練を開始し、技術の進歩に対応できるようにしている。またGoogleは最近、数百万ドルを投じ、AIが主導する労働市場に備えるための取り組みを始めた。こうした取り組みによって、AIが世界にもたらす数々の恩恵に目を向け、AIが救えるかもしれない命に気づけるようになることを期待している。
いつか、あなたの命もAIにかかっているかもしれない。


