人工知能(AI)、すなわち認知技術は、もはや機械にチェスをさせることではありません。AIは街頭で車を運転しています。コールセンターで顧客と会話しています。AIは、非の打ちどころのない精度で法的文書を起草し、審査しています。衛星画像から導き出した指数を使って取引まで行っています何にでもAIの粉を振りかければ、生まれ変わるようです。
AIは、膨大かつ絶え間なく流れ込むデータをデジタル入力として、分析モデルに取り込みます。モデルはデータをすばやく処理し、人間味を感じさせる洞察を次々と生み出します。一部のAIフレームワークは、深層学習や機械学習を使い、自動学習と絶え間ない進化の循環を生み出します。
組織は、AIを活用すれば、強力でリアルタイムに適応する企業を実現できると認識し始めています。つまり、環境の変化に応じて、ほとんど直感的に姿を変える組織を実現できるかもしれません。
不確実性を受け入れる
AIに画期的な可能性があることは明らかですが、その真の意義は、組織がもはや不確実性に悩まされる必要がないという点にあります。安定した組織や経済を築こうと何世紀にもわたって努めてきましたが、ビジネスリーダーは不安定さを恐れる必要はありません。AIを味方につければ、不安定さを受け入れるようになるでしょう。デジタルの耳、目、手、足、そしてあえて言えば頭脳が、環境がどれほど予測不能になろうとも、あらゆる機会を最大限に生かしてくれると、彼らは知ることになるでしょう。
米国の医療分野に集まる注目
最近実施されたAIに関する世界規模の調査は、Wiproの委託を受けてエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が実施したもので、どの業界が、なぜいち早くAIを導入しているのかを明らかにしています。調査によると、AIの活用では米国の医療分野が先行しています。

指数で示すと、調査対象の組織全体におけるAI導入スコアは、1~5の尺度(1=初期段階、2=探索段階、3=実験段階、4=適用段階、5=展開済み)で2.40です。これは、調査に参加した多くの組織が、積極的な実験を始めるまであと数か月の段階にあることを意味します。
指数スコアは北米が最も高く(2.61)、米国の研究所や大学が長年にわたってAIの基礎研究に投資してきたことを反映しています。
「アマゾンの機械学習部門ディレクター、ラルフ・ヘルブリヒトは、米国が先行している理由の一部には、消費者向けテクノロジーへの高い関心があると考えています」と、EIUの報告書は述べています。
「しかし、彼[ヘルブリヒト]によると、多言語環境での自然言語処理など、AIの分野によっては欧州が先行しています。そして少なくとも1人の予測者は2016年から2020年にかけて、アジア太平洋地域で他の地域よりもAI技術が急速に普及すると予測しています。」
現在のAIの取り組みは、おおむね探索段階から実験段階にありますが、やがて機械学習を基盤とする自己改善のサイクルが主流になるでしょう。その後、物事は目まぐるしい速さで進むと考えられます。AIの行く先を示す初期の兆候を探るなら、今は医療・ライフサイエンス、小売、製造、金融サービスに目を向けるべきです。
AIの前提条件となるデータの蓄積
調査によると、医療分野が先行していることは、研究者が取材した専門家にとって驚きではありません。カリフォルニア州のスタンフォード大学で客員講師を務めるジェリー・カプランと、ニューヨーク州トロイにあるレンセラー工科大学データ探索・応用研究所の所長ジェームズ・ヘンドラーは、中期的には、他の分野よりも医療提供のほうがAI活用の見通しが明るいと考えています。カプランは、医療分野におけるAIの可能性は、業界が蓄積してきた膨大な患者データと医学研究に基づいていると述べています。「治療結果、処置、臨床試験、支出などに関するデータが広く利用できるため、機械学習の手法を用いることで、独自性のある有用な洞察が得られます。」
医療・ライフサイエンス、小売、製造、金融サービスは、AI主導の大規模な変革の第一波を目の当たりにする可能性がある業界です。これらの業界には共通点があります。いずれも、AIの不可欠な基盤となる膨大なデータを生成し、蓄積してきた実績があることです。
AIを推進するための強固なデータ中心の企業文化がない企業は、影響を受けるでしょう。経営幹部はこの点を強く認識しています。報告書の調査に回答した経営幹部の44%が、AI導入を遅らせれば、自社は新興の破壊的テクノロジー企業に対して脆弱になると感じていました。これに対抗する唯一の方法は、データの取得と管理を最優先事項にすることです。AIの導入にはデータが欠かせません。包括的で将来を見据えたデータ戦略が整えば、組織はAIのどの要素を開発し、何を購入し、誰と提携し、既存のどのアプリケーションをより自律化するかを検討できます。


