AIガバナンス・アライアンス(AIGA)は、3つの主要な活動領域を通じて、責任あるAIの開発、応用、ガバナンスに取り組んでいます。
世界経済フォーラムが新たに発表した3つの刊行物は、安全なシステムとテクノロジーの構築に向けた提言を示しています。
AIは世界的な課題への取り組みに不可欠ですが、包摂的な進展も必要です。デジタル格差に対処するため、AIGAはパートナーや連合に行動を呼びかけています。
大きな変革の時代において、技術革新は中心的な役割を担い、私たちを新たなフロンティアへと導いています。20世紀後半から発展してきた人工知能(AI)は、生成AI(genAI)の登場によって画期的な節目を迎えました。創造、分析、革新において卓越した能力を持つこの最先端技術は、医療やエンターテインメントといった従来の分野をはるかに超える影響をもたらす、パラダイムシフトを示しています。
AIの能力が進化し、イノベーションを促すなか、世界の経済と社会に大きな変革の波が広がっています。この革命の急速な進展は新たな経済機会をもたらす一方、社会的責任への確固たる取り組みの必要性も浮き彫りにしています。産業や社会の枠組みを再編するAIの変革力には、細心の検討が求められます。この課題を前に、各国・各分野の国際的なリーダーは、共通の利益のためにAIの責任ある開発、展開、導入を確かなものとするべく、協力して取り組む必要があります。
マルチステークホルダー・アプローチ
こうした課題を受け、世界経済フォーラムはAIガバナンス・アライアンス(AIGA)を2023年6月に発足させました。これは、産業界のリーダー、政府、学術機関、市民社会組織を結びつける先駆的な協働の取り組みです。AIGAは、2023年4月の責任あるAIリーダーシップ・サミット後にまとめられたプレシディオ提言を起点とし、AIガバナンスに関する熟慮された解決策とアプローチの推進に取り組んでいます。このアライアンスは、AIの開発から応用、ガバナンスに至るバリューチェーンのあらゆる段階で倫理的配慮を確保し、責任あるAI開発に向けた共通の決意を示しています。
「安全なシステムとテクノロジー」「責任ある応用と変革」「強靱なガバナンスと規制」という3つの主要な活動領域を軸に、アライアンスはAIガバナンスの重要な課題と機会に取り組む包括的なエンドツーエンドのアプローチを採用しています。AIGAは多様な視点とステークホルダーを結集し、熟慮された議論やアイデア創出、実行戦略を促すことで、包摂的で持続可能な長期的解決策に向けた多様性の促進を目指しています。
AIガバナンス・サミットと初の刊行物
2023年11月、フォーラムはAIガバナンス・サミットをサンフランシスコで開催しました。このサミットでは、参加したステークホルダーが、AIのイノベーション、ガバナンス、変革に関わる共通かつ責任ある道筋を推進するという集団的な決意を確認しました。
サミットの重要な成果の一つは、アライアンス初の刊行物の土台づくりに貢献したことです。AIガバナンス・アライアンス―ブリーフィングペーパー・シリーズは、知見を結集した成果であり、現代のAIガバナンス課題に取り組むマルチステークホルダー・アプローチへのアライアンスの揺るぎない決意を象徴しています。各活動領域に対応する3本のブリーフィングペーパーで構成されるこの刊行物は、責任あるAI開発の理念を体現し、地理的な境界や組織の所属を超えた継続的な対話の礎を築きます。
プレシディオAIフレームワーク:安全な生成AIモデルに向けて:安全なシステムとテクノロジーの活動領域がIBMコンサルティングと協力して作成した本論文は、genAIから生じる課題と機会を分析し、生成AIモデルのライフサイクルに関する標準化された見解がないことなどの懸念を強調しています。プレシディオAIフレームワークの導入を要とし、堅牢なガードレールを通じた早期のリスク特定、責任の共有、予防的なリスク管理を提唱しています。
生成AIの価値を引き出す:責任ある変革に向けた指針:責任ある応用と変革の活動領域がIBMコンサルティングと協力して作成した本論文は、OpenAIによるChatGPTの公開後におけるgenAIの急速な普及と影響を考察しています。ユースケースに基づく評価を推奨し、責任あるgenAI導入に向けたマルチステークホルダー・ガバナンス、透明性の高いコミュニケーション、運用体制、価値に基づく変革管理の重要性を強調しています。また、組織への拡張可能で責任ある統合に向けて、リーダーに指針を示しています。
生成AIガバナンス:共に築く世界の未来:世界のAIガバナンスの状況を考察する本論文は、強靱なガバナンスと規制の活動領域がアクセンチュアと協力して作成し、国際協力と包摂的なアクセスの重要性を強調しています。各国のアプローチを評価し、genAIをめぐる主要な論点を取り上げるとともに、分断を防ぐための国際的な連携と基準を提唱しています。
世界のAIに力を:行動への共通の呼びかけ
発足以来、AIGAは200を超える組織と有識者を結集し、システム設計、産業での応用、ガバナンスにわたる責任あるAIの実践を促進してきました。
先進国がAIイノベーションの恩恵を得ようと競うなか、一部の国々がさらに取り残されることのないよう、デジタル格差を改めて見直す必要があります。高度なgenAIソリューションの登場は、とりわけグローバルサウスにおいて、アクセスや能力強化の格差を広げるリスクを伴う可能性があります。こうした問題に対処する草の根の取り組みはすでに複数進められています。AIガバナンス・アライアンスは、そうした取り組みを後押しし、世界的な連合と解決策を呼びかけています。
世界のマルチステークホルダー・コミュニティを結集する独自の役割を生かし、フォーラムはパートナーに結束と資源の提供を促し、包摂的なAIエコシステムの育成を呼びかけています。これには、データ、モデル、コンピューティングなどの重要な要素へのアクセス向上に加え、アクセスの共有、接続性、相互運用性に関する継続的な取り組みが含まれます。人材育成を目指し、地域のイノベーション・エコシステムを発展させる地域の教育プログラムを、慎重に育み、支援することが不可欠です。
AIGAは、包摂性とイノベーションを高めるために企業と公共部門の足並みをそろえ、AIが世界の人々と社会にとって前向きな変革の力であり続けるよう取り組んでいます。
世界経済フォーラムは、人工知能にどのようなガードレールを設けているのでしょうか?
AIエクセレンス・センターは、各分野のリーダーを結びつけ、人工知能の急速な進化と、経済や社会への影響について理解を深める場を提供しています。AI導入に伴う機会、リスク、トレードオフについて、十分な情報に基づく対話を支援しています。
信頼できる場と協働の取り組みを通じて、同センターはパートナーが共通理解を築き、AIのイノベーションと活用に向けた責任あるアプローチに協力して取り組めるよう支援しています。
各国や産業界がAIの倫理的な開発を導くために足並みをそろえるなか、対話だけでは不十分であり、具体的な行動が欠かせないことは明らかです。マルチステークホルダーの参画と、実行可能な計画や指針の策定を通じて、AIの悪影響を十分に抑え、その恩恵を広く共有できる未来を支えることが、AIガバナンス・アライアンスの目標です。世界各地の意思決定者、産業界のリーダー、政策立案者、有識者に対し、共有される人間の価値観を守り、すべての人にとって包摂的な社会の進歩を促すAI主導の未来を形づくる取り組みへの積極的な参加を呼びかけています。



