世界中の企業で、AIガバナンスが急速に議題の最優先事項になりつつあります。
企業内の単一のコンプライアンス部門だけでAIガバナンス全体を監督することはできません。部門横断的な取り組みが必要です。
企業でAIガバナンスを担うすべての人に必要な、4つの重要なスキルをご紹介します。
AIガバナンスの問題は、経営幹部の議題に上っています。経営トップに加え、テクノロジー、データプライバシー、リスク、法務、セキュリティの専門家も、他社がAI統治という難題にどう取り組み、自社に最適なモデルをどう見極めているのかを知ろうとしています。
抜本的な変化が急務であることは明らかです。施行されるAI関連法は、あらゆるリスクに対処するコンプライアンスの一貫した青写真を示すものではなく、既存のコンプライアンス義務に加わるものです。異なるのは、リスク評価とその軽減を従来の縦割り組織の中だけでは実施できないことです。
その中核にあるのはデータです。データなしにAIは成り立たないことは誰もが知っています。個人データの収集、利用、処理、保管、廃棄はすでに厳しく規制されていますが、AIが従来のデータリスクの全体像をどう覆すのかに対処するには、組織はさらに踏み込む必要があります。
AIガバナンスには学際的な取り組みが必要
AIガバナンスを複雑にする要因の一つは、コンプライアンスの専門機能が通常、事業内の複数の部門に分散していることです。その結果、既存のガバナンスの仕組みやプロセスがかなり縦割りになり、狭い担当範囲の外にある全体像を評価せず、個別のリスクの特定と軽減に注力している場合があります。
たとえば、データ保護の専門家はプライバシーレビューの際に、知的財産権侵害の可能性を特定する立場にはありません。同様に、知的財産専門の弁護士も、個人データに関連するリスクについて意見を述べる最適な立場にあるとは限りません。しかし、AI関連のリスクに対処するには、まさにデータプライバシー、リスク、法務、セキュリティの各機能が連携しなければなりません。
連携が不可欠です。この課題に取り組む最善の方法は、シームレスで統合されたアプローチをまとめるスキルを備え、適切な運用モデルを組み合わせて説明責任を確保できる機能に、AIガバナンスの責任を割り当てることです。
今すぐ、スキルに基づいてAIガバナンスの担当を決める
早く始めるに越したことはありません。管轄地域でAI関連法が成立するまで待たず、AIリスクについて必要な社内対話を始めましょう。知的財産、データ保護、製造物責任をめぐる現在の課題は、たびたび報道されており、未解決の領域も数多く残っています。新たなガバナンスモデルの構築には時間がかかります。また、AIに関する戦略的な目標に沿って新たなガバナンスモデルを運用し、拡大するための資金を含め、組織文化や社内政治について慎重に調整する必要もあります。
効果的なAIガバナンス機能に必要な4つのスキル
誰がAIガバナンスの指揮を執るのかをスキルに基づいて評価すれば、組織の判断が明確になります。効果的なAIガバナンス機能には、次の4つのスキルが不可欠です。
AI技術の仕組みを説明できる:多様な関係者が関わるため、AI技術の仕組みに関する要点を理解し、より幅広いガバナンス関係者に伝えられることが重要です。技術用語を理解し、その多くが技術職ではない人々や上級幹部に、相手が理解できる言葉で伝える必要があります。また、必要に応じて詳細に踏み込める力も求められます。そのためには、一定のスキル再習得に加え、AIとその基盤となるデータを理解するために主体的に動き、事業部門と緊密に連携することが必要です。
ガバナンスプログラムを立ち上げ、運営できる:リーダーに働きかけ、適切な予算を確保する力は、AIガバナンスプログラムの実施に不可欠です。組織内にすでにあるさまざまなガバナンスの仕組み、プロセス、運用モデルとの整合を図り、組織内の研修を含む新たなプログラムを効果的に運営する必要があるためです。たとえば、GDPR遵守を促進するデータ保護プログラムなど、既存のコンプライアンスプログラムにAIガバナンスの要件を組み込めるか、あるいは既存の枠組みに沿った新たな枠組みや包括的なガバナンスモデルが最適かを見極める必要があります。
組織構造と、実際の業務の進め方を理解している:必要な学際的チームをまとめるには、現在のコンプライアンス機能がどう運営され、事業のどの部門に属しているかを把握することが重要です。たとえば、個人データの利用をめぐる課題を網羅する堅牢な枠組みがあっても、AIの利用に伴う契約上のリスクや著作権保護を特定できなければ、誰にとっても役に立ちません。既存の枠組みを理解したうえで部門間を調整できる力(たとえば、オープンソースソフトウェアに関する著作権リスクをどのチームが判断するかを特定する力)は、大きな強みになります。AIに関するこうしたニーズをすべて満たす共通の枠組みを作るのは容易ではありません。周囲を動かす人と、実務を担う人の両方が必要です。
解決策と成果を重視する:法律、規制、ウェブサイトの利用規約、商業契約には、いずれも制約や解釈の余地、曖昧さが伴います。そのため、AIガバナンスを推進する機能は、リスクに対処しながら、解決策を重視して主体的に動き、こうした課題を乗り越えられるよう事業を支援することが重要です。そうでなければ、事業が停滞し、AIガバナンスプログラムが定めるガードレールを守ろうとしない企業文化を招くおそれがあります。AIガバナンスはイノベーションを妨げるのではなく、加速させ、可能にする道筋を示すべきです。
新たな方法で取り組み、AIへの信頼を築く
AIは間違いなく既存産業に変革をもたらし、事業全体で役割が変化するため、労働力のスキル再習得が必要になります。AIガバナンスを単なるチェックリストの確認作業と捉えず、人々が成果を信頼できるよう強力な監督を行いながら、AIを活用して新たな方法で取り組む機会と見ることが不可欠です。テクノロジーが急速に進化し、法律や規制もそれより緩やかなペースながら変化し続けるなか、事業を後押しする準備のできた学際的で機動力のあるチームを築けば、競争相手との差別化につながります。
AIガバナンスが組織のどこに位置づけられるかにかかわらず、何よりも大切なのは考え方です。必要なスキルを認識し、チームで取り組むものだと理解するほど、この新たな形のガバナンスが組織に根づき、イノベーションを加速させる適切なガードレールを提供できる可能性が高まります。それこそが、誰もが本当に実現したいことです。
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