アルツハイマー病の理解に向けた一歩

アルツハイマー病の理解に向けた一歩
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アルツハイマー病が初めて特定されてから1世紀以上がたちますが、いまだに治療法はありません。研究者たちは、この病気の原因や治療の可能性を理解するため、さまざまな道筋を探ってきました。その中で、血管の役割、とりわけ血液を通じて脳に入るものを調節する細胞の保護層である「血液脳関門」に、ますます注目が集まっています。

脳には血管が密に張り巡らされており、それらを端から端までつなぐと、5,000面を超えるサッカー場を覆う長さになります。しかし、体のほかの部位の血管とは異なり、脳の血管は血流から脳へ入る物質を制限します。これは、周皮細胞や内皮細胞など、血管壁を構成する細胞が物理的に重なり合い、脳への物質の流入と脳からの排出を制御する密着結合を形成することで実現されています。

脳の毛細血管における血液脳関門の構成要素。Hawkes et al. 2014 Brain Pathol. 24:296-403

薬剤を阻む関門

若く健康な人では、血液脳関門は通常、非常に強固です。つまり、脳がどの物質を取り込むかを制御しており、これは脳が適切に機能するうえで重要です。しかし、この高度な制御は脳疾患の治療において問題となることがあります。血流中の薬剤が脳に入れない場合があるためです。

この問題を回避するため、多くの研究が 進められています 。たとえば、脳が通常取り込むグルコースのような物質に薬剤を結合させる方法があります。

ほかの方法としては、血液脳関門の細胞間を通過できるほど小さなナノ粒子に薬剤を結合させることや、超音波を使って関門を直接 緩めることなどがあります。ただし、血液脳関門を開くと、毒素やその他の有害物質も脳に入り、損傷を引き起こす可能性があるため、この方法は非常に慎重に適用する必要があります。

アルツハイマー病

血液脳関門は、脳に入る物質を管理する門番として働くだけでなく、脳から老廃物を取り除くうえでも重要です。こうした老廃物の一つであるβアミロイドは、アルツハイマー病の主要な要因です。

βアミロイドは誰の脳でも作られます。健康な脳では、血液脳関門を越えて血液中に移動することで、速やかに脳から除去されます。高齢の脳では、この移動が遅くなり、 βアミロイドが蓄積するようになります。蓄積が進むと、βアミロイドは脳と血液脳関門の両方に損傷を与えます。その結果、さらに損傷が生じ、脳からのβアミロイドの 除去が減少 し、血液中の毒素が脳に入ることを許してしまいます。

この継続的な損傷の循環は、アルツハイマー病の 発症 に寄与すると考えられています。

生きた関門を画像化する

血液脳関門を構成する細胞は非常に小さいため、生きている人の血液脳関門の健康状態の変化を観察するのは困難です。しかし、近年の脳画像診断の進歩が、この問題の解決に役立っています。

南カリフォルニア大学の研究グループは、新しい磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、若年者と高齢者、さらに軽度認知障害のある人の脳で、 血液脳関門の破綻を測定 しました。これらの人々には明らかな認知症はありませんが、アルツハイマー病を発症するリスクが高い人々です。

研究グループは、血液脳関門の密着性は加齢とともに自然に低下し、認知機能が正常な高齢者と比べ、軽度認知障害のある高齢者では血液脳関門の「漏れやすさ」が増していることを見いだしました。これらの知見は、血液脳関門の機能が加齢とともに低下することを示唆し、血液脳関門の完全性の喪失がアルツハイマー病の発症に関与するという考えを裏付けています。

血管と血液脳関門がアルツハイマー病による認知症の発症開始に関与することを示す研究が増えており、これはアルツハイマー病の予防と治療のための新たな治療法の基盤となる可能性があります。血液脳関門を越えてβアミロイドを輸送するタンパク質の量を増やすことで、その蓄積を 減らすのに役立つ可能性を示す有望な研究もありますが、この関門を標的とするアルツハイマー病治療法の開発には、なお多くの研究が必要です。

本記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Cheryl Hawkesは、The Open Universityの健康科学講師です。

画像:脳のさまざまな部位を示した頭部の石膏骨相学模型。REUTERS/Chris Helgren。

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