45州の学校が、思春期の若者の体内時計に関する研究に沿う形で、始業時刻を遅らせている。
学校管理者は短期的な障害に直面したものの、生徒、保護者、教員に長期的な恩恵があることを見いだした。
学校を遅く始めることのデメリットではなくメリットへの理解が深まれば、より多くの学校が生徒を支援できるだろう。
リック・トニーはペンシルベニア州ニュー・ホープにあるソールベリー・スクールで数学を教えているが、睡眠科学にも精通している。
2016~2017年度、寄宿制・通学制の両課程を持つ同校の教務主任も務めるトニーは、ソールベリーの午前8時の始業を30分遅らせ、週4日を午前8時30分にする取り組みを主導した。
水曜日は午前9時まで始業のベルが鳴らない。
この方針が始まって1年が経ち、トニーによると、生徒のストレスは減り、授業での成績も以前と同等か、それ以上だという。全校を対象に実施したアンケートでは、生徒と教員の多くがこの方針を支持していた。保護者からも、午前8時30分始業で朝の慌ただしさが和らいだとの同様の声が寄せられている。
「考えるまでもありません」とトニーはBusiness Insiderに、来年度もこの方針を継続することについて語った。「ぜひまたすぐにでも実施します」
遅く起きて、成績も向上
現在までに、45州の学校がソールベリーと同様の方針を採用している。いずれも、米国医師会や米国小児科学会などの団体が提唱する、現在のベストプラクティスに沿ったものだ。
この傾向は、管理者の意識の変化も反映している。部活動や交通手段の再編といった障害も、乗り越えられないものではないと受け入れられるようになった。
トニーはそうした懸念に理解を示しつつも、短期的に時間を投じることは、生徒にもたらされる長期的な成果に見合うと述べた。「何を失うかを考えるのではありません」と彼は言う。「こうした変更で何を得られるかに目を向けてください」
最近の研究で、ランド研究所とランド・ヨーロッパが発表したものでは、午前8時30分始業により、今後10年間で米国経済に830億ドルが上積みされる可能性があると分かった。研究の筆頭著者マルコ・ハフナーは、高校卒業率の上昇や、肥満率、睡眠不足による交通事故など健康上の懸念の減少は、この方針を導入する手間を十分に補って余りあると述べた。
「朝のストレスが本当に減りました」
リサ・ブレイディはここ数年、その恩恵を身をもって感じてきた。ニューヨーク州ドブス・フェリーにあるドブス・フェリー学区の教育長として、ブレイディは生徒も保護者も、朝の時間が増えたことによる多くの利点を口にするのを見てきた。
2015~2016年度末に実施したアンケートを受けて、ブレイディはBusiness Insiderに「保護者も子どもたちも、圧倒的多数が、朝のストレスが本当に減ったとはっきり感じていました」と語った。
多くの子どもが、朝食を食べて登校の準備をする時間が増えたと答えた。一方、保護者は、子どもをベッドから引きずり出したり、急ぐよう怒鳴ったりする必要がなくなったという。登校後は、生徒の目が以前より覚めていた。夜は、新しい時間割で45分の余裕ができたにもかかわらず、就寝時刻は変わらないと答える傾向があった。
シアトルでは2016~2017年度、中学校と高校の85%が小学校と始業時刻を入れ替えた。現在、年長の生徒は午前8時45分、年少の生徒は午前7時55分に始業する。2016年当時、ジェーン・アダムズ中学校の8年生だったキラ・ホフマンは、KUOWに語り、「ものすごく急いだり、どれくらい眠れたか、何時に学校に着くか、遅刻するかどうかを心配したりしなくなった」と述べた。
始業時刻を遅らせても、すべてがうまくいくわけではない
始業のベルを遅らせる方針を実行した学校は、課題にも直面している。
トニーは、バスの運行時刻の調整は今も難しいことがあると認めた。(ただし、彼によると、寮に住んでいる生徒や保護者が車で送る生徒も多い。)ブレイディによると、一部の保護者は朝の慌ただしさが実際にはいっそう増したと感じている。以前は子どもの後に始まっていた通勤準備が、今では子どもの支度と重なるためだ。
2人はこの問題に対処するため、学校を早めに開けておき、子どもが朝食を食べたり、宿題を終わらせたり、ただ過ごしたりできるようにしている。
ブレイディは部活動や放課後のクラブにも課題があると気づいた。以前は、チームが遠征先の試合に間に合うよう移動するのに苦労はなかった。今は移動に使える時間が短く、交通渋滞もひどい。「子どもたちは本当に急かされていると感じます」と彼女はBusiness Insiderに語った。
ようやく帰宅しても、出された宿題をすべてこなす時間が減ったと言う生徒は多い。ソールベリーは、始業時刻を遅らせるとともに、1日の授業数を減らしてこの課題を解決した。50分授業を6コマ受ける代わりに、80分授業を4コマ受ける。終了時刻は同じだが、より多くの学習ができ、宿題も減る。
「こうしたことを妨げる障害はすぐ目に入ります」と彼は言う。「得られるものは、ときに見えにくい。気づかないうちに、その恩恵を受けているのかもしれません」
子どもへの共感の欠如
始業時刻を遅らせる学校は増えているが、まだ少数だ。ブレイディは、思春期前後の子どもへの共感が欠けていることが理由だと述べた。「昔は誰もが、雪の中を何百マイルも歩いて学校に通ったという話は分かります」と彼女は言う。「でも今は、思春期の脳についてよりよく分かっていますし、自然な睡眠リズムが大人とは異なることも知っています」
ランド研究所の研究に携わったマルコ・ハフナーは、経済的な損失につながり得ると分かれば、学校が方針を採用する動機は強まるだろうと期待している。
ソールベリーは多くの成果を上げているものの、午前8時30分の始業時刻には満足していないとトニーは語った。管理者たちは、水曜日に実施している午前9時始業を、週の残り4日にも導入できるか検討している。トニーは、訪問した心理学者に、さらに30分遅らせても本当に違いがあるのか尋ねたことを思い出した。
「できることは何であれ、大きな成果につながると言われました」と彼は語った。

