米国の白人男性の広範な層が意気消沈しており、その深刻な気分は死亡統計から国政に至るまで、あらゆるところに表れている。
米国の労働力から離れた働き盛りの男性は、貧困国、富裕国のいずれの同世代男性よりも、ストレスが強く、悲しみも深いことが、新たな研究で分かった。ブルッキングス研究所が発表した研究によると、仕事のない男性と働いている男性の幸福度の差も、米国でははるかに大きい。
彼らの見通しを改善するための重要な第一歩は、どう感じているかを尋ねることだ。米国政府がウェルビーイング指標を測定していれば、ブルーカラーで働く年齢にある白人男性の楽観度が低下していることに、何年も前に気づいていただろうと、ブルッキングス研究所の論文の共著者の一人、キャロル・グラハムは語る。
「危機を回避できたかもしれません」と彼女は言う。
ウェルビーイング指標とは何か?
経済や雇用を測るのではなく、ウェルビーイングの測定では、心身の健康や、人々が人生に意義を見いだしているかに焦点を当てる。英国やブータンなど、一部の国ではウェルビーイング統計の収集が始まっている。
メリーランド大学の公共政策学教授であるグラハムによると、米国政府は一部の調査にウェルビーイングに関する質問をいくつか加えているが、毎年実施されているわけでも、全国で尋ねられているわけでもない。彼女は研究にあたり、ウェルビーイングを測る質問を含むギャラップ調査の回答を利用してきた。
米国の白人男性について、調査は何を示しているのか?
調査によると、大学教育を受けていない白人男性の楽観度は、1970年代に急落し始めた。黒人やヒスパニック系の人々の楽観度は上昇したため、この落ち込みはひときわ際立っているとグラハムは言う。
彼女と同僚らは、白人男性の不満がどこに集中しているかを地図に示した。不振にあえぐ石炭産業や伝統的な製造業などがある地域や、2016年の大統領選でドナルド・トランプに投票した地域に、不満が集中していることが分かった。また、薬物の過剰摂取や自殺による死亡率が高い地域とも重なっている。これらは米国全体の平均寿命を低下させている。
米国人男性の気分は、他国の男性と比べてどうなのか?
研究者らはまた、世界各地で実施されたギャラップ調査を使い、米国では白人が不均衡に多くを占める、働き盛りの失業中の男性がどのように感じているかを調べた。欧州連合、中東・北アフリカ、ラテンアメリカ、米国の各地域間で比較したほか、各国の就業中、失業中、労働力人口に含まれない男性を比べた。(失業中の人は積極的に仕事を探している一方、仕事をしていない人は労働力人口に数えられない。)
その結果、働き盛りで失業中の米国人男性は、一般に、同じ状況にある他国の男性よりウェルビーイングの評価が低いことが分かった。さまざまな感情について、前日と比べてどう感じたかを尋ねた質問に基づき、米国人の回答を各国の同世代と比べると、次のようになる。

米国の一部の男性は、なぜこれほど不幸なのか?
経済が壊滅的な打撃を受けた米国の地域で、失業中の白人男性が不幸なのは驚くことではない。だが、なぜ彼らは、貧困国の男性や、米国内でより貧しい黒人やヒスパニック系の男性より、楽観度が低く、満足度も低いのだろうか。
人生の筋書きが悪い方向へ転じたことも一因だ。何十年もの間、白人労働者階級の男性は、大学教育や政府の支援がなくても、十分な収入を得られると考えることができたとグラハムは言う。今ではそうではなくなり、彼らは脅威を感じている。
一方、マイノリティの人々は、多くの白人が経験していない差別やその他の逆境に慣れており、それがより強い立ち直る力につながることがある。黒人やヒスパニック系の人々がここ数十年で達成した教育、平均寿命などの指標の改善は、白人と対等でない立場にとどまるとしても、勝利のように感じられる。
同じ現象は、ラテンアメリカや中東のように、多くの人々が苦難に慣れている地域にも当てはまる。
トランプの政策は、怒れる白人男性を助けているのか?
多くの点で、トランプの言葉や政策は、不満を抱える白人男性というこの層に特に向けられている。彼は彼らの状況を改善しているのだろうか。
製造業を国内に呼び戻す取り組みは、せいぜい成果がまちまちだ。失業率は政権発足後に低下したものの、米国企業は引き続き雇用を海外に移しており、その中にはトランプが雇用を守ると約束した数千件も含まれる。また、関税引き上げなど、米国人労働者の競争力を高めるために設計された政策の一部は、製造業者や農家に打撃を与えている。
トランプはまた、米国のオピオイド危機を国家非常事態と宣言し、対策に乗り出した。昨年、対策のために10億ドルの連邦資金を承認した。それでも、これまでの取り組みは課題の大きさに 到底及ばないと専門家は言う。
意気消沈した地域社会を立て直すのは、きわめて難しい。地域の気分を改善するため、地域のリーダーが実施できる実証済みの対策があるとグラハムは言う。社会的なつながりや運動を促す活動などだ。「費用はあまりかからず、地域の活気を取り戻すことができます」と彼女は話す。

