「メタバーシティ」:メタバースの大学で学ぶ際の5つの課題

Studying in the metaverse allows for 3D visual learning, more realistic interactivity and easier access for faraway students.
Studying in the metaverse allows for 3D visual learning, more realistic interactivity and easier access for faraway students.Image: Unsplash/Billetto Editorial
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  • 実際のキャンパスを仮想オンライン空間に移す「メタバーシティ」になる大学が増えています。

  • メタバースで学ぶことで、3Dの視覚的な学習、より現実的な双方向性、遠隔地にいる学生のアクセス向上が可能になります。

  • しかし、プライバシー侵害やセキュリティ侵害に加え、インフラや研修への投資が大学に課題をもたらしています。

実際のキャンパスを仮想オンライン空間に移す「メタバーシティ」になる大学が増えています。この空間は「メタバース」と呼ばれることが多く、ある取り組みでは、米国の大学10校が、Facebookの親会社Metaおよび仮想現実企業VictoryXRと協力し、キャンパスの3Dオンライン複製を作成しています。これは「デジタルツイン」と呼ばれることもあり、現実の空間で人や物が移動すると、リアルタイムで更新されます。

一部の授業はすでにメタバースで行われています。VictoryXRによると、2023年までにデジタルツインのキャンパスを100か所構築・運営する計画です。そこでは、教員がリアルタイムで指導し、授業中に即時のやり取りができるグループ学習が可能になります。

メタバーシティの構築を進めるニューメキシコ州立大学は、学生がすべての授業を仮想現実で受講できる学位課程を2027年から提供したいとしています。

メタバースで大学の授業を受けることには、多くの利点があります。たとえば、3Dの視覚的な学習、より現実的な双方向性、遠隔地にいる学生のアクセス向上などです。一方で、潜在的な問題もあります。私の最近の研究では、メタバースの倫理的、社会的、実践的な側面と、プライバシー侵害やセキュリティ侵害などのリスクに焦点を当ててきました。課題は5つあります。

1. 多大な費用と時間

メタバースは、状況によっては低コストの学習手段となります。たとえば、遺体解剖実習室の建設には数百万ドルかかり、広いスペースと維持管理も必要です。仮想の解剖実習室により、フィスク大学では科学の学習が手頃な費用で可能になりました。

しかし、仮想現実コンテンツのライセンス、デジタルツイン・キャンパスの構築、仮想現実ヘッドセットなどへの投資は、大学の費用を増加させます。

メタバースの授業用ライセンスは大学にとって、少なくとも20,000ドルかかり、デジタルツイン・キャンパスの場合は100,000ドルに達することもあります。VictoryXRはさらに、メタバースへのアクセスに対し、学生1人当たり年間200ドルの利用料を請求しています。

仮想現実ヘッドセットにも追加費用がかかります。Metaは、MetaとVictoryXRが立ち上げたメタバーシティ向けに、仮想現実ヘッドセット「Meta Quest 2」を限定数、無料で提供していますが、必要になる台数のごく一部にすぎません。Meta Quest 2の最も安価な128GBモデルのヘッドセットは399.99ドルです。多数のヘッドセットの管理と保守には、常に充電しておくことも含めて、運用にかかる費用と時間がさらに必要です。

大学は、メタバースの授業を実施するための教員研修にも、多くの時間と資源を費やす必要があります。メタバースの授業を行うにはさらに多くの時間がかかり、その多くでまったく新しいデジタル教材が必要になります。

ほとんどの教育者には、独自のメタバース教材を作成する能力がありません。教材の作成には、動画、静止画像、音声をテキストや双方向性の要素と組み合わせ、没入型のオンライン体験にする作業が伴うことがあります。

2. データのプライバシー、セキュリティ、安全性への懸念

メタバース技術を開発する企業のビジネスモデルは、ユーザーの詳細な個人データの収集に依存しています。たとえば、Metaの仮想現実ヘッドセットOculus Quest 2を使いたい人は、Facebookアカウントを持っていなければなりません。

ヘッドセットは、位置情報、学生の身体的特徴や動き、音声録音など、きわめて個人的で機微なデータを収集する可能性があります。Metaは、そのデータのプライバシーを守ることや、広告主によるアクセスを制限することを約束していません。

Metaはまた、より高度な機能を備えたハイエンドの仮想現実ヘッドセットProject Cambriaにも取り組んでいます。このデバイスのセンサーにより、仮想アバターはユーザーと目を合わせ、ユーザーの目の動きや顔の表情を反映した表情を作ることができます。こうしたデータ情報は、広告主がユーザーの関心度を測定するのに役立ち、パーソナライズされた広告の配信に利用される可能性があります。

教員や学生は、自分の動きや発言、さらには顔の表情まで、大学だけでなく大手テクノロジー企業にも監視されていると知れば、授業で自由に議論に参加できないかもしれません。

仮想環境とその機器は、身体の動きや心拍数、瞳孔の大きさや目の開き具合、さらには感情の兆候など、幅広いユーザーデータを収集する可能性もあります。

メタバースでのサイバー攻撃は、身体的な危害を引き起こすことさえあります。メタバースのインターフェースは、ユーザーの感覚に直接働きかけるため、ユーザーが別の環境にいると脳に信じ込ませます。仮想現実システムを攻撃する人々は、没入中のユーザーの行動に影響を与え、階段の最上部など危険な場所へ実際に移動させることさえできます。

メタバースは、学生を不適切なコンテンツにさらす可能性もあります。たとえば、Robloxは、3Dの双方向型仮想環境を実際の教室やオンライン授業に取り入れるため、Roblox Educationを開始しました。Robloxは、すべての人の安全を守るための強固な保護策があるとしていますが、完璧な保護策はありません。また、同社のメタバースにはユーザー生成コンテンツやチャット機能があり、そこに悪意ある人物が入り込んだり、ポルノを投稿したり、その他の違法なコンテンツを投稿したりする可能性があります。

3. 農村部での高度なインフラへのアクセス不足

メタバースの多くのアプリケーション、たとえば3D動画は大きな帯域幅を必要とします。仮想空間と物理空間にまたがって、センサーとユーザーの間を行き交うすべての情報を処理するには、高速データ通信網が必要です。

多くのユーザー、特に農村部のユーザーは、高品質のメタバースコンテンツをストリーミング再生するためのインフラが不足しています。たとえば米国では、都市部に住む人々の97%が高速通信にアクセスできますが、農村部では65%、部族居住地では60%です。

4. 新しい環境への適応という課題

メタバーシティの構築と立ち上げには、学校の教育と学習の進め方を大きく変える必要があります。たとえば、メタバースの学生はコンテンツを受け取るだけではなく、仮想現実のゲームやその他の活動に積極的に参加します。

高度な技術、たとえば没入型のゲーム型学習や、人工知能と仮想現実の組み合わせは、リアルタイムではないものの、メタバースを通じて体験できる個別最適化された学習を実現できます。学生の能力や関心に合わせてコンテンツや学習ペースを調整する自動システムにより、メタバースでの学習はより構造化されていないものになり、定められたルールも少なくなる可能性があります。

こうした違いに対応するには、小テストや試験などの評価・モニタリングのプロセスを大幅に見直す必要があります。多肢選択式問題のような従来の方法では、メタバースが提供する個別化され、構造化されていない学習体験を評価するのに適していません。

5. 偏見の増幅

性別、人種、イデオロギーに関する偏見は、歴史や科学、その他の科目の教科書によく見られ、学生が特定の出来事やテーマを理解する仕方に影響します。場合によっては、こうした偏見が正義や、ジェンダー平等.

バイアスの影響は、リッチメディア環境ではさらに強くなることがあります。映画はより強く学生の考え方を形作り、教科書よりも大きな影響を与えます。メタバースのコンテンツは、さらに大きな影響を及ぼす可能性があります。

教育と学習におけるメタバースの恩恵を最大限に引き出すには、大学とその学生は、ユーザーのプライバシー保護、教員の研修、ブロードバンドネットワークへの国の投資水準という課題に取り組まなければなりません。

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