人工知能の進歩により、現在は人の手を必要とする多くの作業が自動化されるでしょう。しかし、技術革新とともに何百万人もの雇用が失われると予測する報告が増えています。
ペンシルベニア大学ウォートン校のマーケティング学教授、ピナール・ユルドゥルム氏による新たな論文は、この移行においてほとんど見過ごされてきた側面、つまり仕事を失わずに済んだ人々が、今後は人間ではなくロボットを同僚とすることになる状況に焦点を当てています。「人間と機械:企業はいつ自動化を導入すべきか」と題された論文で、ユルドゥルム氏と共著者のムスタファ・ドアン氏(カーネギーメロン大学の博士研究員。ペンシルベニア大学で博士号を取得)は、自動化が人間のチームに機能不全をもたらすことで、かえってコスト増や非効率につながる場合があることを示しています。
「機械やロボットの魅力は、効率性が高まり、仕事をこなすコストを削減できる可能性にあります」とユルドゥルム氏は言います。「一方で、人間ではなく機械と一緒に働くことになった人々の行動面での反応も考えなければなりません」
自動化によって職を失わなかった労働者も、無力感や恐怖を抱くことがあると同氏は指摘します。また、機械のように完璧に作業をこなすことはできないため、意欲が低下する可能性もあります。「機械が隣で働いていると、自分が努力する動機は変わります」と同氏は述べています。
この影響をより深く理解するため、研究者らは、管理職の監督下にある従業員2人でチームを構成するモデルを作りました。そして、2人の人間が作業を完了する場合と、人間1人と機械1台が作業を行う場合を比較しました。自動化によって残る人間の労働者のコストが「割高」になるなら、最善の方法とは限らないこと、また、実際に利益を生み出すには、人間の労働者の評価や報酬の仕組みを変える必要があるかもしれないことが分かりました。
機械が隣で働いていると、自分が努力する動機は変わります。
自動化とチームの力学
ユルドゥルム氏によると、どのような組織でも、管理職が常に各従業員の努力を公平かつ正確に把握することは不可能です。その補完策として、多くの企業は個人の報酬を同僚の働きぶりと結び付けます。一方では、チームが目標を達成すれば、怠けていた人も含めて全従業員に報酬を与えることがあります。他方で、従業員同士を競わせ、最も成果を上げた人だけに報酬を与える企業もあります。いずれの場合も、「他の人がどれだけ熱心に働いているかを見ようとする動機が生まれます」とユルドゥルム氏は言います。
では、従業員の「同僚」がロボットだったらどうなるでしょうか。ユルドゥルム氏によると、自動化によるコスト削減をうたう研究の多くは、チームの力学への影響を無視しています。「どの場合でも、企業は人間のチーム全員の意欲を引き出す契約を設定できるという利点を活用します」と同氏は述べています。「しかし、2人のチームのうち、人間の働きぶりは完全には監視されず、機械はどんな状況でもうまく働くよう設定されているとしたら、どうなるでしょうか」
人間が複数いる場合、管理職は働きぶりのパターンを観察し、努力不足で仕事の成果が低いのか、それとも本人にはどうにもできない原因があるのかを判断できる場合があると同氏は指摘します。例えば、不況のために売上目標を達成できない小売店の従業員です。「人間と機械を組み合わせると、成果を妨げる可能性のある外部からの圧力を管理職が把握する力が弱まります」と同氏は言います。「また、管理職の監視能力が低下すると分かっていれば、発覚する可能性が低いと知っている従業員が仕事を怠る動機も強まります」
組織は自動化を前提に再設計する必要があると、人々は認識しなければなりません。
自動化によって人間の労働者の効率が下がり、管理職が効果的に監督することも難しくなるなら、「システム全体のコストが高くなります」とユルドゥルム氏は言います。同氏によると、これは意義ある同僚間の交流が多い組織や職務で起こりやすい一方、チームでの反復作業や交流が比較的少ない組織では自動化が進みやすいとのことです。「チームで繰り返す作業があまりなく、各仕事が一度きりの場面で完結し、個人がお互いの行動を把握するのが非常に難しい組織であれば……人間を雇い続けても、企業にとっての利点はあまりありません」と同氏は指摘します。
チームでの交流に大きく依存する企業については、協調的なものより競争的な報酬制度を設けて人間にかかるコストを抑えられれば、自動化が可能な場合でも人間のチームを維持できることが研究で示されています。「自動化が選択肢となると、協働を前提とした契約の維持コストは高くなる可能性があります。こうした契約がうまく機能するのは、個人が継続的な協力に価値を見いだし、共に働くことを約束する場合に限られるからです。そうでなければ、人々は仕事を怠り、人間のチームから得られる成果は機械の利点に及びません」とユルドゥルム氏は述べています。
自動化の進展による副作用の一つとして、従業員全体に報いる職場よりも、競争の激しい環境で人間が働くようになる可能性があると、ユルドゥルム氏は指摘します。また今後の研究課題として、自動化によって管理職が人間の従業員を監視しにくくなった場合に組織構造をどう変える必要があるか、あるいは、機械に業務を担わせると同時に人間の「同僚」を監視させる設計がどのような影響をもたらすかを挙げています。
「自動化とAIは私たちを変えています。組織も変えています」と同氏は言います。「組織は自動化を前提に再設計する必要があると、人々は認識しなければなりません。仕事を続ける人々に何が起きているのか、その人たちの生活も変わっていることを考える必要があります。この点については、誰も語っていません」

